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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第29話 1点差

6番の大野先輩は初球を捉えたものの、センターフライに倒れてスリーアウト。打ちたいという気持ちが先走ってしまったのか、ボール球に手を出していた。


試合は0対1で、2回表に移る。西野さんはこの回、ツーアウト1塁2塁のピンチを背負うも、9番の角田さんをこの試合初めての三振で切り抜け、どうにか2回を投げ切った。


「私、零封って初めてだ。毎回、点を取られていたから逆に新鮮だよ」

「え?練習試合で何回登板してい……あれ、もしかして今年初零封?」

「今年初どころか、人生初じゃないかな?」


西野さんはきっちりと打者1巡を0点で抑えたので、大野先輩とピッチャーを交代することになる。流石に2巡目は無理そうだし、良いタイミングで交代することが出来て良かった。


2回裏の湘東学園は2アウトから真凡ちゃんが粘って四球で出塁、私が敬遠でツーアウト1塁2塁のチャンスを作るも、美織先輩が三振で無得点。角田さんは初回の立ち上がりとは打って変わって、落ち着いた投球を続けている。


一方で、大野先輩はランナーを出しながらも要所要所でゴロに打ち取り、3回表から6回表の間に3回の併殺を成立させた。一気に投手戦の様相を呈して、試合はスミ1のまま、スコアボードに0が並ぶ。


試合は0対1のままで、6回裏の攻撃に入る。6回の裏は、真凡ちゃんからの打順だ。




(さっきのショートゴロ、もう少しバットの上で叩ければショートの頭は超えていたわね)


伊藤はバッターボックスに入る前に数回、バスターで素振りをする。先程の打席で、ショートゴロだった打球の球筋を伊藤は覚えていた。集中し、より鮮明に打球の飛ぶ先をイメージする。これは奏音から教えられた、ヒットを打つ術の1つだ。


伊藤は小さく構え、バットを持つ右手と左手は最初から離している。その構えを見るのは今日3度目のはずなのに、新鮮味を覚える角田は初球、ストレートを外角に決めた。


(カノンの前に、ランナーを出したくないし、さっきと同じでスライダーを引っ掛けさせようか)


角田は何球投げても変化量や球速が落ちない。ストレートの球速や大きく変化するスライダーと共に、そのスタミナも評価されている投手だ。6回でも、初回と変わらないような変化球を多投することが出来る。だから中村は前の打席でショートゴロに打ち取ったスライダーを要求し、打ち損なわせようとする。


角田の放ったスライダーは、伊藤のイメージ通りに落ちた。2回裏と4回裏で、それぞれ同じスライダーを2回見た伊藤は、その変化に合わせてバットを振る。


(きた!)


小さく構えていたバスター打法のお陰で、打席に入る前に集中してイメージした通りのスイングになった伊藤の打球は、ショートの頭を超えてヒットになる。


これが伊藤の、公式戦初ヒットとなった。


これで勢いづいたかに見えた湘東学園は、続く奏音が3打席連続の四球で勝負を避けられ、美織が犠打でワンナウトランナー2塁3塁のチャンスを作るも、奈織は浅いライトフライ、小山は三振でこの回の攻撃を終える。


ピンチを抑えたことで嫌な雰囲気を払拭した平塚高校の、最終回の攻撃が始まる。




7回表の平塚高校の攻撃は、1番から始まる。今日は2安打の4番、中村さんには回したくない場面だったけど、大野先輩は先頭バッターにフォアボールを与えてしまった。


……角田さんが速球派のピッチャーだから、私だと相性が悪いんだよね。練習で角田さんの球を打てるから、速球の方が打たれやすい。梅村さんも同意見だったし、だからこそ大野先輩のドロップを中心とした変化球で打ち取るピッチングをさせているのだと思う。


続く2番に送りバントを決められ、ワンナウトランナー2塁の場面で3番4番と勝負することになった。1番の人がもう一度、盗塁にチャレンジするかと思ったけど、この状況でそんな博打には出られないようだ。


勝っているのに、追い詰められている。そんな中、センター方向に打球が飛んで来た。手前に落ちそうだったけど、スライディングでキャッチしてツーアウト。ランナーはタッチアップを自重し、ツーアウトランナー2塁という状況に変わる。


後、アウト1つだ。


4番の中村さんの打席を迎えるけど、中村さんはこの試合、始めて右打席に入った。右投げの投手に対して、両打ちのバッターが右打席に入ることに嫌な予感がした私は、前進守備でのバックホーム体勢を解除し、少しずつ後退する。


……あの4番、バットを短く持っていない。


そう思った直後、快音が鳴り響き打球は高く上がる。瞬時にスタンドへ入ると判断した私は、フェンスまで全力でダッシュをして、よじ登り、飛んだ。


左腕をめいっぱい伸ばして、打球を捕る。直後、右わき腹に衝撃が来たと思えば、前転してフェンスの中に転がり落ちてしまう。幸い、右腕でフェンスの上部を掴めていたため、大きな衝撃を受けずに着地をすることが出来た。


打球は、ガッチリと掴んでいた。球審はそのことを確認すると、アウトを宣告する。これで平塚高校の最後の攻撃も、0点で終わった。


0対1で、湘東学園の勝利だ。

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