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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第268話 関東大会初戦

湘東学園の練習風景動画の人気が出たり、1軍の熊川さんと2軍の井原さんの入れ替えがあったり、練習を重ねながら迎えた秋季関東大会の初戦。甲斐工業戦の先発のマウンドに立つのは久美ちゃん。関東大会は1回戦と2回戦が連日ということも珍しくないから、エースが1人だけだと勝ち上がるのが難しい。


湘東学園は優紀ちゃんと久美ちゃんという2人の先発投手が揃っているから、島谷さんが抜けたと言ってもかなり余裕はあるんだよね。島谷さんが抜けた枠には、2軍の及川さんが入った。


同じ左腕で、島谷さんより球速は遅いしコントロールも悪いけど、1年生の左腕で125キロが出るならそれだけで十分な気もする。というか純粋に、島谷さんが規格外過ぎる。再来年のドラ1候補は伊達じゃないよ。



湘東学園 スターティングメンバー


1番 二塁手 木南聖

2番 遊撃手 井原美琴

3番 左翼手 伊藤真凡

4番 三塁手 実松奏音

5番 一塁手 江渕智賀

6番 中堅手 勝本光月

7番 右翼手 高谷俊江

8番 捕手  梅村詩野

9番 投手  春谷久美



相手の先発は、山梨県大会でずっと投げ続けて来た甲斐工業の2年生エースの藤浦(ふじうら)さん。最速128キロのストレートに大きく曲がるカーブが武器だけど、コントロールはそれほど良くない。準決勝では、東甲斐大甲府相手に6四球7失点という成績だった。


そして藤浦さんは右腕で、唯一出ていた中継ぎ投手の方も右腕なので、湘東学園は遠慮なく左打者を並べている。だから中谷さんと高谷さんの選択で高谷さんを選んでいるし、1軍に上げたばかりの井原さんをスタメン採用した。私と智賀ちゃん以外の全員が左打ちという打線だから、9人中7人が左打ちだ。


井原さんと熊川さんの入れ替え理由は、井原さんの9月以降成績が、2軍でトップの出塁率だったし、熊川さんが打撃面で思うように伸びて無いからだね。1回戦も2回戦も、相手校に左腕がいないというのは理由の一つになっているけど。


左右病と揶揄されることもあるけど、数字として右と左の相性というのは出ているし、これからも右投手に左打者を、左投手に右打者を当てる方針は変わらないかな。今日はジャンケンで負けたので、私達が先攻。1回表、先頭バッターの聖ちゃんが様子見もせず打ったのを見て、点差が開きそうだなと思った。


「様子見しなくて良いとは言ったけど、聖ちゃんが初球から打ったということはかなり打ちやすそうな球だね。真凡ちゃんも、打てそうな球が来たらどんどん打って良いよ」

「わかったわよ。……様子見をしなくて良いと言ったのは、隠し球が無いからよね?」

「うん。隠し球があるなら県大会の準決勝で出しているはずだし、相手の持ち球や癖も把握済みだよね。うちは初球を振らないタイプの人間も多いから、こういう機会を使って改善していきたいよ」


ネクストバッターズサークルへ向かう真凡ちゃんに、早打ちしようよと言うと、ノーアウトランナー1塁2塁から真凡ちゃんは初球をライト前へ運んでタイムリーヒット。3連打で1点を取って、なおもノーアウトランナー1塁3塁でバッターが私か。


流石にこの状況で私と勝負をすることは出来なかったのか、私を敬遠にしてノーアウト満塁にする藤浦さん。だけど直後に智賀ちゃんが走者一掃のタイムリーツーベースヒットを打って、敬遠の意味が無くなる。光月ちゃんの四球と高谷さんのヒットで、ノーアウトのまま湘東学園は5点目を獲得。


ランナーを2人置いて、8番の詩野ちゃんの打席を迎える。わりと併殺が多い詩野ちゃんだけど、今日は調子が良かったのかバットから快音が鳴り響く。思わず打球の行方を目で追ったら、ポールへ直撃。詩野ちゃんの高校初のホームランは、試合を決定付けるスリーランホームランだった。


「ナイスホームラン。ストレート、狙ってたんだ?」

「まあ、ストレート狙いではあったよ。125キロ前後でも、真ん中高めに浮くなら打ちやすいね。

……何、その目は」

「いやぁ、珍しいものを見たなぁって。たぶん、高校初だよね?」

「……中学2年の時以来だから、三年振りのホームランだね。私だって、率を捨てる打ち方にすればホームランは打てるよ」


8対0となって9番の久美ちゃんがセンターフライでアウトになるも、また上位に打順が戻って湘東学園はこの回に14点を取った。試合は14対0で、1回裏に移る。


1回表が終わった段階ではまだ甲斐工業の選手の中には試合を諦めきれてない人もいたけど、1回裏に久美ちゃんが三振を2つ含む三者凡退で甲斐工業の上位打線を抑えると、甲斐工業の選手達の覇気は途端に無くなった。


……神奈川県大会の準々決勝で当たった慶凰大藤沢は、19対0から1点を取りに来たけど、甲斐工業は抵抗の意思すら感じず、結果的には18対0という大差で湘東学園が勝利した。これで2回戦の咲進学園に勝てば、湘東学園は3期連続の甲子園出場が決まる。


まあ京都の強豪校である龍安大平刻なんかは9期連続出場と10期連続出場の記録を別々に持っているし、最長記録となる12期連続と比べると短いようにも思える。……私が卒業してからも、記録が続けば良いね。

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