第252話 反撃
5回表から友理さんがマウンドに登って、三者凡退に抑えた裏の攻撃で日本もアメリカの3番手投手に三者凡退で抑えられた。出て来た3番手投手は、左の軟投派というべきなのかな。速球の球速は、140キロに迫っているけど。
試合はグラウンド整備を挟んで、6回表を迎える。引き続き友理さんがマウンドに立つけど、徐々にコントロールミスが増えて来た。
ワンナウトからフォアボールでランナーを出すと、高めに浮いたストレートを打たれて長打となる。レフトの守備に就いた真凡ちゃんがやらかしたわけじゃないけど、大村さんが無事だったなら1塁ランナーは3塁で止まっていたのだろうか。
1点を返され、同点に追い付かれる。引き続き友理さんはワンナウトランナー2塁とピンチを背負うも、コントロールの効かないスライダーを多投して抑え切った。しかしまあ、疲労も考えたら確かにここまでかもしれない。
7回表は新開さんが投げる予定だけど、日本はいよいよ不味い状況に追い込まれている。良い投手は使い切ってしまっているから、新開さんが打たれたらもう投げる投手が私しかいない。
その前に、1点でも多く点が欲しい。6回裏は私からの打順で、アメリカは4人目の投手に代えて来た。ここまでお互いに投手交代が多いと、総力戦って感じがするね。
「げっ、アンダースローか」
「……あの投手も、データに無かった投手よね?
やっぱり、予選免除というのは大きいわね」
「予選で手の内を晒さなくて、良いってことだからね。
やっぱり日本代表はもう1人か2人、先発が出来る投手を招集するべきだったと思うよ」
その4人目の投手は、今の時代だと滅多に見ないアンダースローの投手だ。そして真凡ちゃんの言う通り、データは無い。最高球速は、見た感じ125キロ程度と遅い。だけどアンダースローの独特の球筋に、私はまだ慣れていない。
その投手と私が向かい合って初球、遅い球が揺れて落ちた。
「……は?」
私のバットは空を切り、ボールはミットに納まる。思わず、声が出てしまった。ふんわりとした球は、確かにブレて落ちた。いや、左のアンダースローで125キロを出せるだけでも希少なのに、ナックルボーラーとか希少価値の塊みたいな存在だね?
ここ2打席、私が長打を打たなかったからか外野は中間守備だし内野はバントの警戒を怠ってない。今のアメリカの守備に、突けそうな隙は無いかな。
ナックル、か。もしも次の球がアンダースローなことを活かした変化球だったら打てないけど、ナックルを多投してくれるなら打てるんじゃないかな。
そんなことを考えていたら、次はストライクから外のボール球に変化するシュートが投げられる。浮くシュートが見れるのは、貴重な体験だけど喜んでいる場合じゃない。手が出なかったし、あれがナックルの後に、ストライクゾーンの低めギリギリに決められたら、この打席では打てそうにない。
カウントは1-1になって3球目。落ちるナックルを見送ってボール。アンダースローって落ちる球を投げられないことが弱点のはずなんだけど、ナックルを投げられるならその弱点は無いに等しいよね。どうやって投げているのか気になるけど、向こうの投手は早くも指先を意識し始める仕草を見せた。
……お?これは、ナックルを多投出来ないパターンかな?アンダースローでナックルって、指先や爪に相当な負荷がかかってると思う。少なくとも2球続けてナックルを投げることは無いと読み、バッティングカウントで入れて来るだろう変化球を読む。
あのシュートは、結構変化量も多いし打ち辛いけど、向こうが過剰に私を警戒してくれているから同じ変化球は使わないんじゃないかな。こういう時に、打率10割で同じ変化球は通用しなかったという実績が活きて来る。それなら、次はカーブが来るんじゃないかな。
速ければストレート、遅ければカーブだと読んでカーブの軌道をイメージする。わざわざイメージしなくても、この速度のカーブなら対応可能かもしれないけど、念には念を入れよう。
そして4球目。カーブではなくスライダーを投げられた私は、それでも内角の低めに呼び込み、ジャストミートさせる。もしも相手が私の力を正確に推し測っていたら、低めじゃなくて高めにスライダーを投げていただろうし、そもそもスライダーじゃ無くてシュートを投げていただろうね。
純粋に速度が遅かったお陰で、何とか対応して芯に当てた打球は、思っていたよりも飛ぶ。そのまま観客席に飛び込み、勝ち越しのソロホームランとなった。試合は4対5と、再び日本がリードする。
しかし後ろの真凡ちゃんや本城さん、白木さんはアンダースローのナックルに苦しんでこの回は1点止まり。試合は4対5のまま、7回表を迎えた。




