第221話 過密日程
甲子園で決勝まで戦っていた人達は、明日に日本代表メンバーと合流するはずだった。なのに私達が集結地であるホテルに到着すると、既に到着していた大阪桐正の面子が出迎えに来る。
「カノンと本城は久しぶり。それと、そっちは面と向かって話すの初めましてだよね。大阪桐正3年の森友です。これからよろしく」
「……湘東学園2年の伊藤真凡です。こちらこそよろしくお願いします」
あっはっは、と笑いながら真凡ちゃんの肩を叩く森友さんに対して、青筋が立たないように堪えている真凡ちゃんは案外大人しい。野球部にこういう先輩が居なかったから不安だったけど、大丈夫そうかな。
「甲子園決勝まで戦っていた2校の選手は明日合流と聞いていましたけど、予定が変わったんですか?」
「変わって無いけど、早く合流して悪いことはないからね。それに、私達にとっては地元だし」
ホテルには既に代表メンバーが揃いかけており、友理さんや裕香ちゃんの姿も見える。……よく考えたら、ここって大阪桐正の被害者面子が勢揃いしているのか。ギスギスが残ったままU-18W杯を迎えたくないのは理解出来るし、過密日程なのに休み無しで来るのはご苦労様ですとしか言えない。
「甲子園が終わった3日後にはU-18W杯のアジア予選って、なかなかにハードな日程ね」
「プロになったら、似たようなスケジュールが半年間続くよ?」
「……それも、そうね?」
ホテルの部屋は2人一組で、真凡ちゃんと同部屋になったので、荷物を置いて一息つく。本城さんは、城西高校の白木さんと一緒の部屋に入れられた。なるべく知り合いが相部屋になるよう、配慮はしてくれているみたい。
明日には日本各地から来た代表面子が揃うから、明日の午後と明後日は軽い全体練習と木製バットでの打撃練習があって、3日後には開会式と初戦がある。初戦の相手はサウジアラビアで、世界ランクは詳しく憶えてないけど80位ぐらいだったはず。
まあ、世界ランクは目安にしかならないけどね。サウジアラビアの次はカンボジアで、その後はパキスタン、インド、タイ、マレーシア、イラク、イラン、ブータン、ネパール、フィリピンの順だったかな。警戒するべき国は、ぶっちゃけ無い。
「開会式が9時からで、試合開始は13時から?」
「うん。アジア二次予選に参加する国の数は24ヵ国だから、開会式が終わったらほとんどのチームが移動するんだよ。その後、一斉に開始するから、試合開始は13時からになるね。日本の1試合目は、京阪ドームだから移動はないけど」
日本がいるBリーグは6つの球場を使うけど、日本がメイン会場である京阪ドームで試合する日は多い。全部大阪にある球場だし、ホテルから近いから移動は楽だと思う。
毎日、1つの球場で3つの試合が行われるから3試合目はナイターになる。国際試合はイニング数が9で、コールドは無い。だからよく60対0みたいな試合になることもあるし、手を抜けないから点差は付きやすい。
「基本的に、投手がベンチ外になるから真凡ちゃんもベンチに入れると思う」
「あ、そうだったわね。26人全員が、ベンチに入れるわけじゃない……。あれ?カノンって連投制限に引っかかっても、野手として出場出来るの?」
「投手として3連投するのが禁止なだけで、2連投した後に野手として出るのは大丈夫だよ。完投した後に、中3日の休みを設けずに野手として出ることも可能だから問題は無いね」
「へえ。ちゃんと、そういうのは決まってるんだ」
別に私だけが二刀流ってわけじゃないし、前にも問題になっているから、投手としての制限を迎えても野手として出場が出来ることは認知されている。むしろ、真凡ちゃんが知らなかったことの方が少し意外だった。確認の意味で聞いて来たのかもしれないけど、そういうのは頭に入っている印象だったし。
球数制限は、1試合に100球まで。この100球というのは高校生だと、かなりコントロールの良い投手が9回を投げ切る時の球数と一致するぐらいかな。試合に出た選手の中で、1番球数が多い人は3日の休養日が設けられており、2番手以降も50球を超えていれば中1日の休みが必要になる。
50球以下なら連投は出来るけど、3連投は禁止というルールもあるので投手の頭数は絶対に必要。日本の場合は第一エース藤波さん、第二エース芳田さん、第三エース大槻さん、第四エース吉岡さんでローテーションする感じだと思うけど、9回まであるから中継ぎ陣もフル活用しないと厳しい。
「友理さんや真弘さんは、中継ぎになるのね」
「友理さんはあのスライダーを捕手が捕れるか心配だったけど、篠宮先輩が捕れるらしいから助かったよ。……高速スライダーをポンポン投げてくる友理さんがワンポイントとして出て来るとか、敵だったら勘弁して欲しいね」
「それは違いないわね。あと野手もローテーションするかもって言ってたけど、どういう感じになるのかしら?」
「ローテーションするかは分からないけど、単純に相手の先発の右左に合わせて左バッターを多く入れたり入れなかったりすると思う。左バッターがそんなに多くないから、真凡ちゃんの出番は多いはずだよ」
恐らく現時点で、全試合に出すと言われているのは私以外いないはず。負担が重ければDHにするとは言われているけど、DHになったら本城さんのお株を奪うことにもなるし、個人的には守備に就いた方が慣れているから打撃面でも良い影響は出る。
だからU-18W杯の試合では、基本的にセンターで出続けることになるね。連投で抑えをやるかもしれないし、フル活用されることは覚悟しておこう。




