第220話 予想
甲子園の決勝戦は、大阪桐正が14対1で波乱なく勝ち、通算で6校目の春夏連覇を成し遂げた。2度目の春夏連覇は、史上初の快挙になる。そして新聞等のインタビューでは、大阪桐正の捕手である森友さんが私の敬遠について語っていた。
「監督も、根岸も、勝負をする気はあった。それがあのような形になったのは、私が敬遠のサインを出したからだし、今もその選択に後悔なんてしていない」
「敬遠の理由?打たれると思ったからだけど?」
「日本代表では、カノンとバッテリーを組むことを楽しみにしているよ」
……この記事が出て1番最初に出た言葉は上手い、だった。森友さんは火を、自身が被った。既に火が大きすぎて、大勢に影響は無かったけど。
「カノンは、それを見て森友さんのことをどう思っているの?」
「んー、また会うのが楽しみになったよ?」
甲子園が終わり、現在は本城さんと真凡ちゃんと3人で大阪まで移動中。アジア予選の各試合は関西を中心にして行なわれるし、1試合目はプロ野球球団の本拠地である京阪ドームで行われる。
「批判されてでも最適解を選択するチームのナンバー2という、凄く得難い人が大阪桐正には居たんだなって思ったし」
「……批判されてでも最適解、ね。カノンは詩野に、そうなって欲しいの?」
「前までは詩野ちゃんに、そうなって欲しいとは思っていたかな。今は、ちょっと違うけど」
横で爆睡している本城さんを尻目に、真凡ちゃんと色々と話す。横浜から大阪まで、新幹線でも3時間かかるから結構暇だ。
「もしかして、緊張してるのって私だけかしら?」
「本城さんはこの状況で寝ているし、真凡ちゃんだけじゃない?というか、甲子園では緊張する素振りなんて見せなかったのに何で今さら緊張なんてするの」
「日本代表としての緊張と、甲子園での緊張は別物だと思うのだけど?それに1度目の時は、普通に緊張してたわよ。……カノンと喋っているお陰で、朝からの緊張は少しずつ解れているから助かるわ」
真凡ちゃんは各国代表の情報が纏められた雑誌を買っており、真面目に情報を集めていたけど、本当にアジア予選は警戒をしなくても良い段階だ。その理由は昨年までの数字が、はっきりと示している。
「……昨年はアジア予選で韓国に負けて2位通過だったから苦戦したと思われているけど、3位の台湾相手には17対3で勝っているし、他の国々には20点差以上を付けて勝ってる。今年もアジア各国のエース級をぶつけられるはずだけど、最速が130キロに届く投手はほとんどいないレベルだよ」
「それは私も見たけど……ということは、日本はアジア予選だと過剰戦力ってわけ?」
「本戦だと、過剰とも言い切れないけどね。それでも140キロを出す投手が3人いて、ナックルボーラーまでいるなら相当な戦力になる」
「……1人、アメリカ代表にヤバいのがいるのだけど、これは例外よね?」
「例外中の例外だね。左投げで最速147キロとか、日本の高校生最速どころか日本プロ野球の最速を超えているよ」
日本は実力者がかなり揃っているけど、世界ランク1位のアメリカや2位のドイツ相手だと接戦になるかな。アメリカ代表に、日本最速記録の146キロを超えるストレートを投げる人がいるから、優勝するための最大の壁になりそう。
……一見すると、ただの金髪美少女17歳が147キロを出すから怖いよね。平均球速も142キロで、名前はザラさんだっけ。ストレートだけじゃなくて、チェンジアップやカーブで緩急を付けられるのは厄介だし、メジャーで確実に1位指名を受けるはず。
「アメリカの他の投手陣は最速でも140キロに届くぐらいだし、その人が飛び抜けてヤバいだけだよ」
「他の投手陣も、藤波さんや大槻さんレベルってことじゃない……。あ、でもカノンは敬遠されないのよね?」
「されないね。厳しく攻めた結果の四球ならまだあるけど、明確なフォアボールは無いよ。暗黙の了解みたいなものだし、絶対に敬遠されない保証はないけどね」
「……147キロって、打てるの?」
「今の私なら、難しくは無いかな。まあ、100%打てるとは言わないけど8割ぐらい打てると思う」
前回大会の優勝国であるアメリカ代表は、予選を免除されて本戦行きが確定しているけど、予選に出ても圧倒的な戦力差を見せつけるだろうなと思えるぐらいには強い。北米予選は、前回のU-18W杯で準優勝のキューバ、3位のカナダの他にもドミニカやプエルトリコなどの強豪国がひしめき合っている。
ここの枠が4ヵ国しかないのは少ない気もするけど、国数も少ないし、U-18の場合は大抵北米から優勝国が出て4+1になるから丁度良いんだよね。
各地域の予選で勝ち抜く国を予想しながら、代表の集結地を目指す。大会とかは何でもそうだけど、勝ち抜くところを予想し合う時が1番楽しいね。




