第196話 死の組
「死の組に入ったらごめんね」
「……私と久美に、何?」
「詩野久美じゃなくて死の組だよ。死のブロック!」
「カノンのくじ運は、悪くは無い方だから堂々と引いて来なよ」
甲子園の組み合わせ抽選会の日が来たので、大阪の会場まで来てくじを引く。選抜の時とは違い、どの高校も18人のフルメンバーで来ているので会場は人がいっぱいだ。
「ベスト8まで行ったら、またシャッフルするのね」
「うん。だから、8校のブロックが8つあると思えば良いかな」
真凡ちゃんの足の怪我も無事に完治し、万全の状態で臨む夏の甲子園。少しでも多く、試合はしたい。
「久しぶりだね。140キロ到達、おめでとう」
「……うわ、スライダーお化けが出た」
「出た、とは酷い反応だね。くじを引く順番は私が一つ先だから、カノンは私の後ろに並ぶと良い」
「言われなくても、わかってるよ」
途中で部員達とは離れて、私は舞台の端の主将達が並ぶ列に並ぶ。1つ前は、統光学園の友理さんだった。北神奈川代表の統光学園の次に南神奈川代表の湘東学園がくじを引くから、当然のことなんだけどね。
お偉いさん達の挨拶が終わった後は、北の出場校からどんどんくじを引いて行く。北海道から東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄の順番だね。関東で今年、注目度の高い高校として多久大光陵は1つ目、日大産は6つ目、花咲栄徳は4つ目のブロックに入る。
そして、統光学園は「3A」を引いて1つ目のブロックに入った。ここで会場が騒めいたのは、「2B」を引いた多久大光陵と統光学園が第一ブロックの決勝で当たるからだろう。どちらかは、ベスト8に進めないことが確定した。
友理さんがくじを引き、私の番になったのでパネルを選択して掲げる。書いてある文字は「7B」で、第二ブロックの左から5番目に入った。既に対戦相手は決まっていて、北北海道代表の朝日川大付属と大会2日目の第3試合で戦う。
地味に第2ブロックの1番左には、南栃木代表の咲進学園がいるね。去年の秋に和泉大川越相手にコールド負けをしたとはいえ、あの時でも関東大会の初戦はキッチリ勝っていたし、評価は高い学校だと思う。
順当に行けば決勝は咲進学園かな、と思っていたら大阪桐正の主将である大村さんがくじを引き「5B」と告げる。咲進学園の向かい側の位置であり、湘東学園は勝ち進めば第二ブロック決勝で大坂桐正と戦うことになった。
……まあ、こういうこともあるだろう。死の組というほど、第二ブロックに強豪校が集っているわけじゃない。でもこれ、大阪桐正視点は地獄かもしれないね。ブロックの初戦から決勝まで、強い所としか当たらない。
優勝候補に選ばれている宝徳学園は7つ目、銀光大阪は3つ目のブロックに入った。地味にこの2校は、初戦の相手が強そうな所だ。特に宝徳学園は、初戦で福島の星光学院と戦うことになっているけど、お互いに甲子園出場回数が15回ずつだった。
……甲子園出場回数は直接的に強さを示すものではないけど、1つの目安にはなるね。宝徳学園は第七ブロックの決勝でも愛光大名伝に当たりそうだし、こっちも大会序盤から厳しそう。
チームの方に合流したら、こいつやりやがったという目線を頂いたけど、どちらかというとやらかしたのは大阪桐正側だと思う。
「……初戦と2回戦の相手は優勝候補や対抗馬として名前が挙がらないような高校が相手だから、そんなに悲観するほど悪いくじじゃないよ」
「詩野ちゃん、全く感情の籠って無いフォローをありがとう。まあ、腹をくくるしかないね。優勝候補大本命の大阪桐正と、全力でぶつかれそうなのはむしろ助かるよ」
詩野ちゃんにジト目で見られているけど、大阪桐正の方から入って来たんだしどうしようもない。そんな中、御影監督から日程について話してくれる。
「予定なら大会2日目に1回戦、10日目に2回戦、14日目に3回戦やな。試合間隔では恵まれとるし、問題は大阪桐正戦だけやな」
「あの、大阪桐正が絶対に勝ち上がって来るとは限りませんよね……?」
その日程に対して智賀ちゃんが絶対に大坂桐正が相手になるとは限りませんよね?と言い、その智賀ちゃんの言葉には全員が「決勝は大阪桐正以外あり得ない」と言う。野球で絶対という言葉はあまり使いたくないけど、大阪桐正は別格だ。
「大阪桐正が決勝の相手じゃない確率って、私が智賀ちゃんの球に三振する確率と同じぐらいだと思う」
「私の球に……それって、絶対にあり得ないことじゃないですか。やっぱり、それほどにまで強いんですね」
「春の選抜甲子園で、私達が勝てなかった履陰社を圧倒して勝っているからね。私達も成長したけど、困ったことに向こうも成長しているから厳しい戦いになると思う」
「でも、諦めたりはしないですよね?」
「当然。目標は、甲子園優勝だよ」
世間からの反応としては、大阪桐正がまた最悪のくじを引いているだの、智伝和歌山や銀光大阪、前橋栄徳や三島東が入った第三ブロックが死の組だと言う声が多く、悲喜こもごもな光景が見られる。
これから、半月以上に渡って試合が繰り広げられる甲子園。出来れば最後まで、試合がしたいね。




