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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第150話 リベンジ

4回裏は無得点で湘東学園の攻撃が終わり、5回表。島谷さんはソロホームランを浴び、試合は9対8と再びリードされる展開となる。そして1点差で統光学園のマウンドに登ったのは、エースの友理さん。


どこまで本気で投げるかは分からないけど、3イニングなら球数が嵩んでも投げ切ると思う。そして友理さんの球速は、134キロと2年生にしてはトップクラスの球速。そして1番の問題は、高速スライダーのキレが増していることだ。


まさか秋の段階でもヤバかった高速スライダーのキレが、さらに成長しているとは思わなかった。5回裏。この回の先頭バッターの私は、じっくりと友理さんの高速スライダーの球筋を見るけど、変化量が相変わらず凄い。


カウント1-2と追い込まれて4球目、ストレートを打ちにいくと真後ろに飛ぶファールになる。サイドスローでも独特な投げ方をしているせいで、浮き上がっているように見えるから打ち辛い。


追い込まれてから3球ファールで粘って迎えた7球目で、縦スラを当てた私は一二塁間へ流す。転々と転がる打球にセカンドが追い付いて捕球するけど、1塁は間に合わず内野安打となった。


「ナイスバッティングです。打ったのは縦スラですか?」

「縦スラだね。秋の頃よりも曲がり始めや落ち始めが打者寄りで、打ち辛い球になってるし、よく見た方が良いよ」


1塁ランナーコーチに入ってる光月ちゃんに情報を渡し、友理さんを見据える。現時点で1点負けという状況だし、走ってノーアウトランナー2塁という状況を作りたい。


そう思っていたら、友理さんはクイックで随分と速い球を外角に投げ込む。これは、完全に盗塁を警戒しているね。この速度のストレートと、古谷さんの肩の組み合わせを考えると、盗塁は難しい。だけど、ストレート1本で抑えられるほど、私の次のバッターは弱いバッターじゃない。


2球目。外角低め、ボール気味の球を智賀ちゃんがかっ飛ばしてスタンドへ入る。値千金の逆転ツーランホームランで、再度試合は逆転。9対10という、完全な馬鹿試合となった。


その後は6回に1点ずつをお互いにもぎ取り、迎えた最終回。島谷さんは球数が嵩んで限界だったので、私がマウンドへと登り、最後を締めることになった。


「……全力で行かないと打ち取れないと思うけど、全力で行く?」

「私自身、統光学園の上位打線に私の速球が通じるか試したいし、全力で行くよ。ただ、リードは速球中心でお願い」

「ん、分かった」


統光学園の上位打線を相手に、私は全力で投げる。最後は136キロのストレートで広沢さんを抑えたので、私自身、成長していることを感じた。少し気になったけど、134キロのすっぽ抜けを平然と捕る詩野ちゃんはキャッチャーとしてどうかしていると思う。


統光学園対湘東学園の試合は10対11で湘東学園の勝ちとなり、挨拶後は互いに甲子園で会おうぜと煽り合って別れた。湘東学園と統光学園は、北と南で分かれる今年の夏の大会で戦うことは無い。


……しかし、次の相手は県大会で戦うことになる。春季神奈川県大会決勝の相手は、去年の夏の優勝校、横浜高校だ。


「もう1つの準決勝、平塚高校対横浜高校の試合は1対11で横浜高校のコールド勝ちです。去年の黄金世代が抜けたにも関わらず、超強力打線に今年も仕上がっていますね」

「横浜高校は選抜に行けなかったし、地獄の冬で有名だし、相当な練習をして来たんじゃないかな。冬合宿だけで部員が毎年10人近く辞めるそうだし、練習量は私達と匹敵するかも」

「……うちの野球部は、退部する人が出ないのが不思議なぐらいの練習量ですからね。しかし、横浜高校は夏の大会以来ですか。あの時は9対3で負けましたが、今回はリベンジしたいです」


久美ちゃんがリベンジに燃えているけど、あの夏の試合で1番失点したのは久美ちゃんだったからかな。あの時久美ちゃんは2回を投げて、4失点している。コールドにならなかったのも久美ちゃんのお陰だけど、責任は感じていたみたい。


秋の大会では結局当たらなかったし、夏の大会での悔しさを晴らす絶好の機会。だけど横浜高校とは今年の夏の大会でも当たるし、何も考えずに全力でぶつかるということは出来ない。


優紀ちゃんが今は居ないし、決勝戦は久美ちゃんが先発する。今日の消耗具合を見ると、1年生達を明日の決勝戦で使うのは避けた方が良いから、緊急時には智賀ちゃんが投げるしかないのかな。


「しかし、平塚高校はよくここまで勝ち上がって来たね。3回戦で和泉大川越に勝ってからの勢いは、去年の私達に似たものを感じたよ」

「元々、地力はある高校ですからね。横浜高校戦では初回で大量失点したのが響きましたが、その後は2失点だけですし、夏はどうなるか分かりません」


シード漏れ常連校だった平塚高校も夏のシード権を獲得し、徐々に意識は夏の大会に向く高校が増えて来る。決勝戦は、色んな高校に偵察されてマークされることを考えると、優紀ちゃんを隠せているのは良い状態なのかもしれないね。

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