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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第126話 大会10日目

大会10日目を迎え、とうとう朝のニュースでも神奈川県勢の活躍を報じられた。特に大槻さんと私の紹介に、結構な時間を費やしてくれている。


今日は東洋大相模と履陰社の試合が先にあるので、まずはそちらの結果から。東洋大相模は左のエース石川さんを登板させるも、得意球のスクリューを滅多打ちにされ、続く柏原さんも抑えきれずに8対1で敗北。履陰社が、準決勝進出を決めた。


……最近になって魔境と呼ばれるようになった神奈川だけど、大阪は元から魔境だ。大坂桐正が神宮大会で優勝を狙わなかったのは、神宮枠で大阪から3校目が出場するのは嫌だったからとも言われている。


それだけ大阪は、強い高校が多くて全体のレベルも高い。大阪人は、大阪大会の決勝戦が実質全国大会の決勝戦なんて言い方をしたりするからね。そんな大阪で、1強になり始めた大阪桐正に食らいついているのが履陰社だから強いのは当然。


準決勝での対戦相手が決まったけど、私達はまず目の前の相手に集中しないといけない。私達の準々決勝の相手は、滋賀の滋賀学院だ。秋季近畿大会で智伝和歌山に勝って選抜行きを決めたし、ここまでの2試合は両方とも4点差で勝っている。


どちらの試合も滋賀学院にビッグイニングがあったから、大量失点だけはしたくない。今日の先発は優紀ちゃんだから、大崩れは無いと思いたいけど。






『3回裏、2対0と2点のリードをしている湘東学園の攻撃は、トップに戻って1番の伊藤からとなります。伊藤のここまでの成績は10打数の5安打で、非常にミート力のある選手ですよね』

『伊藤選手は地区大会の時から注目していましたが、木製バットに変えてからはより振りがシャープになってますよ。ただ滋賀学院も外野陣を前に出して、対策はしていますね』

『定位置より、随分と前に出ていますね。唯一パワーだけが欠点だと自分でも語っていましたが、打ちました!レフト前へのヒットです』

『完全に、シュートを見切って流し打ちしましたね。外に逃げる球に追っ付けて、上手く内野の間を抜くように転がしています』


「あの真凡ちゃんが、凄いわね。入学した頃とは、もう全くの別人ね」

「最初の頃は、バットに当たっても内野ゴロしか打てなかったのにな。よく1年で、ここまで成長したと思う」


湘東学園の野球部の部室に、湘東学園を卒業した小山と大野が入り浸る。2人は卒業式の時、部室の鍵の返却を忘れており、御影監督から「いつでもええけど、はよ返さんかい」と連絡で返すよう言われていたのだ。


それを思い出した小山は、大野を誘って鍵を返しに来る。そして返す前に、部室へ立ち寄った。


『2番の春谷はバントの構えをしています。ここは送りますか』

『ええ。伊藤選手は、飛び抜けて足の速い選手では無いですからね。素直に送った方が』

『走った!バスターエンドラン!?打球は左中間を転々としています!伊藤は3塁を蹴ってホームへ!』

『……仕掛けましたか。春谷選手は打てる方ではありますが、長打は珍しいですね』


「……これは、勝ったな」

「まだ決めつけるのは早いわよ?ノーアウトランナー2塁で、このクリーンナップはキツイと思うけど」


部室のテレビで観戦している2人は、食い入るようにテレビを見つめる。湘東学園は3回裏に3点目を入れ、かなり優勢になった状態だ。


『おっと?これは敬遠ですか?』

『違いますね。コントロールを乱しているだけでしょう。敬遠を視野に入れて、警戒して入るのは良いですが、本城選手を敬遠したところで次は実松選手なのでどうしようもないですね。実松選手まで敬遠して、ノーアウト満塁で江渕選手は怖すぎるでしょう』

『カウント3-1から5球目は、ボール。本城を四球で出塁させ、実松と勝負ですか?』

『いえ、カノンは基本、ランナーがいる場面で打たせてはいけません。あ、この外し方は不味いですね』


「次で打つな」

「何度も見てるけど、カノンを相手に臭い所を突くのは無意味なのよね。前の試合で活躍した友樹さんを、過剰に警戒し過ぎよ」


試合はノーアウトランナー1塁2塁となり、滋賀学院のエースは初球、ストライクゾーンのギリギリを狙ってボールとなる。それを見てカノンのことをよく知っている人ほど、次で仕留められると予感した。


『打ったー!!文句なしのホームランです!これで実松は大会新記録を樹立。待望の4本目です!』

『ああ、これは痛いです。滋賀学院にとって、非常に厳しい展開になりましたね』

『今の実松が打った球は、どう見えましたか?』

『内角低め、ギリギリに制球された130キロのストレートですね。初球に外へ逃げる変化球を見逃して、この内への直球は実松選手以外のバッターだとまず手が出ないはずです。それを簡単に打ててしまうのが、実松選手の凄い所ですね』


「……羨ましいな。私達が後1年遅く生まれていたら、甲子園の舞台に立てていたかもしれない」

「ええ。でも、私達は一緒にプレー出来ただけでも幸せかもしれないわよ?僅か4ヵ月だけだったけど、良い夢を見させて貰えたわ」

「ああ。東洋大相模に勝てた後は、もしかしたら甲子園に行けるんじゃないかとわくわくしたよな」


試合は奏音のホームランで6対0と大きくリードする。その後はお互いに点を取り合い、湘東学園対滋賀学院は7対3で湘東学園が勝利した。

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