第115話 金属バット
練習試合が解禁された日の2日後。同地区の近所で手頃な相手ということで、日大茅ヶ崎と対戦。昨年の夏は横浜高校に負けてベスト8、秋も地区予選では鎌倉学院に負け、県大会では東洋大相模に負けてベスト8と、県内の上位校ではあるのだけど最近は勝ち切れてない印象を受ける。
練習試合の相手としては、丁度良いのかもしれない。今日が金属バットの解禁日でもあるから、どう転ぶのかも楽しみ。上手い具合に、木製バットでの訓練が発揮出来れば最高だね。
湘東学園 スターティングメンバー
1番 左翼手 伊藤真凡
2番 三塁手 西野優紀
3番 一塁手 本城友樹
4番 中堅手 実松奏音
5番 右翼手 江渕智賀
6番 捕手 梅村詩野
7番 投手 春谷久美
8番 遊撃手 鳥本美織
9番 ニ塁手 鳥本奈織
今日は、甲子園での打順を意識した並びになっている。ずっと打率低調気味だった優紀ちゃんを2番に置いて、送りバントをする打順かな。真凡ちゃんは出塁するということが前提で、組まれた打順でもある。
先攻後攻は、湘東学園のグラウンドで試合をするということで、軽い話し合いの結果、湘東学園が後攻になる。まあ、どっちでも良いけど歴史の長い野球部が来訪校だと先攻を取っていくケースが多い。
まずは1回表、久美ちゃんが日大茅ヶ崎の上位打線を三者凡退に抑える。慎重にフォームの改良を重ねた結果、久美ちゃんは若干コントロールが悪くなったけれども、ストレートの勢いや変化球の変化量は増した感じがする。詩野ちゃんのリードも大きいけど、三振の取れる投手になったのは大きい。
良いスタートを切れたし、初回に点を取りたい。湘東学園の攻撃は、木製バットを持った真凡ちゃんから。案の定、相手チームからも注目されているし、真凡ちゃんは少し気恥ずかしそうだ。
それでも6球目、追い込まれてからファールで粘り、甘く入ったストレートを叩いてレフト前へのヒットを打つ。続く優紀ちゃんは送りバントをしっかり決めて、ワンナウトランナー2塁という形を作ってくれた。
「ナイスバント。あっさり決めさせてくれたね?」
「うん。向こうの投手、そんなに球に勢いが無かったよ。調子、悪いのかな?」
優紀ちゃんが向こうの投手は調子が悪そうだと言ってるけど、あの投手、県内でも上位に入りそうなレベルの投手なんだよね。MAX124キロのストレートに、内外の低めに決められるコントロール、キレのある大きな変化量のスライダーと縦に割れるカーブを持っているのだから弱いわけがない。
それでも本城さんなら打ってくれそうだと思っていたら、軽く流して右中間のフェンス際まで飛ばした。早速、木製バットで狭いスイートスポットに当てる練習をしてきた成果が出たかもしれない。2塁ランナーの真凡ちゃんはホームまで帰って、1点を先制。
タイムリーツーベースヒットを打った本城さんは、思っていたよりも打球が伸びたことに驚いてそう。塁上で、少し不思議そうな顔をしているよ。本城さんに限っては、元からパワーが凄いからより木製バットの訓練が活きたのかな?
ワンナウトランナー2塁というこの場面、公式戦なら敬遠をされるような状況。だけど勝負してくれるみたいなので、遠慮なく打つ。初球を大きく外に外され、カウントが1-0となった2球目、内に入れて来たストレートを芯で当て、引っ張る。
打球はフェンスに突き刺さり、高い位置だったからかボールは落ちて来なかった。ちゃんと加減をしなかったら、高くしたあのフェンスを越えてたかもしれない。ライナーを打つ限り早々には超えないと思っていたけど、今回は危なかった。ツーランホームランにより、湘東学園の得点は3点になる。
その後、智賀ちゃんと久美ちゃんのツーベースヒットや鳥本姉妹の連打もあり、この回に一挙7点を取った。打線が爆発したというよりかは、冬合宿中に飛ばない木製バットで練習していた鬱憤を晴らすかのような打撃で……相手投手が、練習試合なのに1回裏で交代となった。
あまり大差を付けすぎるのもアレだけど、今回は向こうの監督が手加減をしないでくれと言っているし、元々手加減をするつもりも無いので2回以降も打ち続けた。そもそも、私以外に手加減が出来るほど器用なバッターがこのチームには居ない。
今日の試合で、智賀ちゃんと奈織先輩にはホームランが飛び出る。2回以降は送りバントなどの小細工もせず、ただ打って点を入れるだけだったけど、そのせいで16対1というスコアになった。1点を取られたのは、4回から智賀ちゃんをマウンドに送ったからだね。
2回を投げて、被安打2の四球1、失点1は頑張った方だと思う。これなら選抜でも、リリーフで投げさせることは出来るかもしれない。智賀ちゃんが甲子園でマウンドに登るのは、相当特殊な状況だと思うけどね。
久美ちゃんの方は、3回を投げて被安打1だったので何の文句も無い。三振が6個も取れたのは自信になっただろうし、スタミナも付いているから安心して見てられる。冬の期間でかなり成長したと思うし、どこまで通用するか、楽しみだね。




