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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第100話 シーソーゲーム

4回表は8番の美織先輩から。代わったばかりの小島さんからヒットを打って出塁すると、続く奈織先輩もヒットで続き、ノーアウトランナー1塁3塁となってバッターは真凡ちゃん。


転がせば1点という状況で、真凡ちゃんはセカンドへのゴロを打ち、2塁はフォースアウト。幸い、1塁はセーフとなって併殺は免れたので、1点を加えてワンナウトランナー1塁と状況が変わる。


左投げのピッチャーにうちの左打ちのバッターは相性が悪い気がするなぁと思っていたら、その左打ちの詩野ちゃんが今日2安打だったのにも関わらず、ショートゴロで併殺に倒れてスリーアウト。残念ながら4回表は1点止まりとなり、試合は6対4と2点差だ。


「何を打たされたの?」

「シュート。ビデオだと分からないぐらいの微妙な変化だったよ」


むすっとした詩野ちゃんに何を打たされたのか聞いてみると、小島さんはほんの少しだけ沈むシュートを投げているらしい。スライダーを意識して、引っ掛けたのかな。


どちらかと言えば小島さんはゴロを打たせるピッチャーなのだけど、そのシュートが関係してそうだ。元からストレートもシュート回転をしているし、素直なバッターほど打ちにくいかもしれない。


4回裏は、久美ちゃんがノーアウトから連打を浴びてランナー1塁3塁というピンチを迎える。そして、ここで迎えるバッターは3打席目の赤石さん。


前の打席で満塁でも敬遠気味に勝負を避けたから、この打席でも勝負は避けるのかと思ったけど、久美ちゃんが初球を入れたので勝負をするみたいだ。


この赤石さんと勝負をするというバッテリーの選択は、凶と出る。カウント1-2から恐らく勝負を決めに行った4球目。初見のはずのドロップカーブを打たれ、レフトオーバーのツーベースヒットとなる。6対6と、同点に追いつかれてなおノーアウトランナー2塁。


後続の2番バッターには送りバントを決められ、ワンナウトランナー3塁で3番レフトの松本(まつもと)さんと勝負。幸いなことに、松本さんは左打ちだったから相性が良かったのか、三振に打ち取れた。直後、4番の中村(なかむら)さんにヒットを打たれて勝ち越されたけど。


試合は6対7と逆転された状態で、後半戦に突入する。


「……点の取り合いで押し負けているの、夏の横浜戦以来かしら?」

「横浜戦は9対3で大差負けだし、点の取り合いではなかった気がするよ。この回で、再逆転をしたいね」


わりと湘東学園は、点の取り合いだとリードされることが少ない。序盤で先制を許していても、後半戦に入る頃にはリードしていることが多い。……クリーンアップから始まるこの回で逆転をしないと、一気に湘東学園が苦しくなってしまう。


5回表は、私の敬遠から始まる。四球で出塁すると、盗塁を決めて2塁へと進んだ。すると、本城さんは敬遠される。何だかんだ言って、打点は相当稼いでいるから警戒してくれたのかな。今の本城さん、長打を打てない状態なんだけど。


ノーアウトランナー1塁2塁となって、今日はノーヒットの智賀ちゃんが打席に。秋の大会も智賀ちゃんを5番に固定しているけど、秋の大会で1試合を通してノーヒットだったのは大槻さんを相手にした時だけだったかな。


真凡ちゃんが左投手に苦手意識を持ち始めているように、智賀ちゃんは左投手に対して得意意識を持ち始めているかもしれない。わりと、左投げの投手を相手にホームランを打ってるしね。きっかけは、夏の東洋大相模戦でスクリューが得意な石川さんからホームランを打ったからかな?


左投げの小島さんは初球、チェンジアップを投げてタイミングを崩そうとする。すると智賀ちゃんは、何とかしてチェンジアップに合わせようとスイングを調整し始めた。


緩急のある変化球が苦手な智賀ちゃんに、グッと力を溜めて待つコツというものは教えた。クローズドスタンスだと、基本的に打つポイントというのは後ろの方になるから、本来であれば緩急には対応しやすい。前に伸びきらないよう、軸は崩さないように打てば、変化球でも強く打てる。


そろそろ、捉えられる頃なんだ。そう思ったら、智賀ちゃんはチェンジアップを左中間に飛ばした。長打コースとなり、私と本城さんはホームに還る。この回に湘東学園は3点を取り、9対7と再逆転を果たした。


「カノンさん!チェンジアップの打ち方が分かりましたよ!ああやって、溜めて前で打ってしまえば良いんですね!」

「わふっ、智賀ちゃん、どうどう」

「……溜めて、前で打つ?」

「あ、真凡ちゃんはたぶん智賀ちゃんの打ち方を真似できないから考え込まないで」


案の定、智賀ちゃんが抱き着いて来たけどそろそろ扱いも慣れて来たのでくるっと反転して智賀ちゃんを着地させる。真凡ちゃんが智賀ちゃんの打ち方に疑問を感じていたけど、真凡ちゃんの場合は元から打つポイントが前の方だから、真似は出来ないと思う。


その裏は久美ちゃんがランナーを出しながらも奈織先輩と美織先輩の好守により0点に抑え、9対7のまま試合は6回表を迎える。泣いても笑ってもあと2回で、甲子園行きかそうでないかが決まるんだ。私も、ちょっと緊張して来たかも。


……あれだけ苦労して、甲子園にあと一歩のところで終わってしまったからなぁ。中学の頃に全国大会は散々味わえたつもりだったのだけど、夢だったその先に行ってみたいという気持ちは案外強かったのかもしれない。

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