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転職の神殿を開きました  作者: 土鍋
外伝・後日譚
165/176

帰郷Ⅰ

【森本 (しゅう)




『――行方不明者の捜索は、今もなお続けられており……』


 行方を眩ませた人間の安否を気遣い、家族の心境を慮る。それは決して珍しくないニュースだ。

 だが、森本家のリビングでは、この手のニュースを耳にするたびに、誰もが視線をテレビへと向ける傾向があった。


「心配でしょうねぇ……」


「今は気候もいい。迷子なら無事見つかるだろう」


 ニュースを見た両親は、気遣わしげに言葉を交わす。ここに姉がいれば、何かしら明るい話題でも提供したことだろう。だが、彼女は結婚して家を出ており、残った俺は口が上手いほうではない。


「……七年か」


 だから。父がぼそりと呟いた言葉にも、とっさに反応できなかった。


 七年前。兄が忽然と姿を消した。ブラック企業の鑑のような外食業で働いていた兄は、いつも通りに仕事へ向かい……そして、そのまま戻らなかった。


 あまりに突然のことであり、俺たちが考える限り、特に予兆といったものもなかった。兄の勤務先にも問い合わせたが、「知らない。弊社も困惑している」の一点張り。

 警察への届出はもちろんのこと、家族や友人で探し回ったり、探偵事務所に頼ったりもした。だが、その行方は杳として知れなかった。


「七年ね……」


 そして、母がしんみり答える。七年という期間には、ちょっとした意味がある。それは民法上の失踪宣告が可能になる期間。つまり、手続きをすれば兄は『死んだ』ことになる。父も母も、すぐその手続きをするつもりはないようだが、いずれは向き合わなければならない問題だ。


「……ごちそうさま」


 俺は遅めの朝食を終えると、重い空気から逃れるように部屋へ戻った。そして、上着を羽織ると玄関へ向かう。


「出かけるの?」


「ああ」


「最近、不審者が出るらしいから、修も気を付けなさい」


「不審者? そんな情報あったかな……まあ、その時はなんとかするよ」


 母親が告げた情報に首を傾げる。俺は警察に勤めている身であり、生活安全担当でなくとも、それなりに情報は入ってくる。


「ええ。女の生首が出るって」


「……前言撤回。管轄外だな」


 俺は肩をすくめると、玄関の扉を開いた。




 ◆◆◆




 ちょっとした買い物を終えた俺は、近所をぶらついていた。


「……」


 近所をぶらつくのは日課のようなものだが、今日は少し気分が違った。朝の両親の言葉に触発されたのだろう。兄のことを考えていたからだ。


 ブラック企業が嫌になって逃げた。過重労働で心が壊れた。兄の働きぶりを知る人ほど、そんな結論に達することが多かった。


 頭はいいほうだったと思う。器用な性格で、大抵のことはソツなくこなしていた。ただ、弟の俺から見ても捉えどころがないというか、あまり何かに情熱を傾けるような人物ではなかった。


 ――なんというか……他人事に思えるんだよな。


 兄がブラック企業で働き詰めだったある日。辞める気はないのかと、一度だけ訊いたことがある。その時の答えがこれだ。その言葉は、ずっと俺の心に残っている。


「――ん?」


 と、物思いに耽っていたからだろうか。俺は何かにぶつかりそうになって、慌てて動きを止めた。それは、サッカーボールほどの大きさの、青い――。


「うおおおおっ!?」


 思わず叫び声が漏れる。俺の顔の高さで浮かんでいるもの。それは……女の生首だった。


「人騒がせな……」


 自分を落ち着かせるために、俺は意識的に声を出した。出がけに母親が言っていたのはこのことだろう。誰の悪戯か知らないが、仕掛けを暴いてやる。そう自分に言い聞かせて、なんとか冷静さを取り戻す。


「さて――」


 まずは観察だ。眼前に浮かぶ生首には、不思議な点が二つあった。


 一つ目は、よくある生首のような凄惨さがないことだ。一般的なそれのように血みどろではないし、むしろ生気すら感じられる。悪戯目的としては詰めが甘いと言えた。

 それに、最初は驚いて気付かなかったが、その顔自体は非常に整っており、美人と言っていいだろう。青髪はカツラなのだろうが、意外とよく似合っていた。


 そして二つ目は、生首の周囲が、バチバチとスパークし続けていることだ。焦げくさい臭いはしないが、まともでないことは明らかだった。


「……なんだこれ」


 驚かせることが目的なのだろうが、気が逸れる要素が多すぎる。仕掛けた奴は何を考えていたのか。生首を前にして、そう首を傾げた時だった。


「――dklfd;frp:―gsカナメfl;?」


「喋った!?」


 予想外の展開に、俺は再び驚きの声をもらす。ひょっとして、立体投影装置を使った壮大なドッキリなのだろうか。だとしたら、大した技術の無駄遣いだ。


「arljgr、dklfd;frp:―gsカナメfl;?」


 俺が変なところに感じ入っていると、生首は再び何事かを喋った。だが、どこの言語かもさっぱり分からない。ただ――。


「表情は真面目なんだよなぁ……」


 俺がこの悪戯だか怪奇現象だかに付き合っている理由。それは、この女性の顔が真剣なものだったからだ。仕事柄、いろんな人から訴えを聞いているからこそ、なんとなく分かる。顔が美人だからだとか、そういうことではない……はずだ。


「arljgr、dklfd;frp:―gsカナメfl;?」


 俺が考え込んでいる間にも、彼女は何かを問いかけているようだった。まるで日本語が話せない外国人を相手にしている気分だ。そう思って、俺は真剣に彼女と視線を合わせる。

 その意思が通じたのか、生首の表情がさらに真剣なものに変わった。


「arljgr、dklfd;frp:―gsカナメ;モリモトfl;?」


「――!?」


 と。不意に、知っている固有名詞が流れた気がして、俺は目を見開いた。


「偶然……だよな?」


 そう自分に言い聞かせる。兄のことを考えていたから、そう聞こえてしまったのだろう。


「esdrhtrgk……arljgr、dklfd;frp:―gsカナメ;モリモトfl;? Qlo;agoカナメsoi……」


 だが。言葉は分からないが、彼女は何度も「カナメ」と繰り返している。固有名詞とは限らないが、何か意味がある音節ではあるのだろう。それに、「モリモト」という単語すら聞き取れた気がする。


「……モリモト、カナメ?」


 気付いた時には、つい口に出していた。これが誰かの悪戯であれば、仕掛けた奴は大喜びだろう。


「!」


 俺がそう呟いた途端、生首がこちらへ近付いてきた。だが、バチッという音がして、彼女の顔が見えなくなる。いや、これは――。


「遠くなったのか……?」


 そう判断したのは、彼女の全身が映ったからだ。倒れ伏している様子からすると、何かに吹き飛ばされたのだろうか。ともかく、彼女が生首の化物だという可能性はなくなった。


 そして、もう一つ。彼女は、どこかの部屋からこの映像を送信しているようだった。不思議な雰囲気の部屋であり、床にはびっしりと図形や記号が書かれている。正直に言えば、ちょっと怖い。と――。


「あれ?」


 不意に映像がぼやけていく。電波状況が悪くなったのだろうか。そんなことを考えていると、ぼやけた画像の向こうで、彼女が何かを叫んでいた。


「kl、klgrkioyk! oiaewoe!」


 だが、その言葉も長くは続かなかった。バチッという異音とともに、画像が消滅したのだ。突然の幕切れに、俺は呆然と立ち尽くす。


「なんだったんだ……」


 ぼやきながら、俺は周囲を隈なく観察する。だが、後に残されたのは、いつも通りの近所の風景だ。それでもしばらく探索を続けた俺だったが、何も成果は得られなかった。


「……帰るか」


 やがて、俺は捜索を打ち切った。今の一幕は白昼夢だったのだろうか。そんな思いとともに、俺は帰途へつく。


 だが……彼女の真剣な表情と、最後の切羽詰まった叫び声は、当分忘れられそうになかった。




 ◆◆◆




【クルシス神殿長 カナメ・モリモト】




「――向こうの世界とコンタクトが取れた!?」


 家を訪ねてきたミルティの報告に、俺は驚きの声を上げた。


「ええ。と言っても、時空の窓越しに会話する程度だけど。……ふふ、ツカサくん、こんにちは」


 生まれて半年になる、俺とクルネの子供をあやしながら、ミルティは世紀の大発見の概要を語る。


「最初は数秒しか保たなかったけど……カナメさんが着ていた向こうの世界の衣服を触媒にしたら、あっさり上手くいったわ」


「凄いじゃない! ミルティの偉業が増えるね」


 クルネは嬉しそうにミルティを褒める。だが、本人は複雑な表情だった。


「これは、あくまでカナメさんの衣服を触媒にしたものだから……こっちの世界にある触媒だけで異世界と繋げられるようにしないと、普遍的な発見とは言えないわ」


 さすがミルティと言うべきか、彼女は自分の成果に満足していないようだった。


「ところで、俺の髪はもういいのか?」


 俺は自分の髪をつまむと、ミルティに問いかける。『縁のある場所や人に繋げるために必要』だと言われて、俺の髪を切って渡したのは数日前の話だ。


「当分は大丈夫よ。それに、効果もあったみたい。カナメさんの髪を触媒にしてからというもの、黒目黒髪の人ばかり映っているから」


 そう言った後で、ミルティは感慨深げに溜息をついた。


「カナメさんのいた世界って、本当に遺跡都市に似ているのね……。あんな高層建築、いったいどうやって建設しているの? 魔法は使えないんでしょう?」


「俺は科学者でも技術者でもないからな……詳しい仕組みはなんとも」


「無数の鋼鉄の馬車が、車体だけで走っていたわ。物凄い速度だったけど、よくぶつからないわね」


「まあ、交通ルールはあるからな」


 と、ミルティは向こうの世界での質問を次々に投げかけてくる。研究者として血が騒ぐのだろうか。だが、やがて彼女ははっとしたように言葉を切った。


「――ごめんなさい。本題を伝えていなかったわ」


 そう前置いたミルティは、じっと俺の顔を見つめる。


「実は、カナメさんの名前に反応した人がいたの。カナメさんに少し似ていたわ」


「そうなのか!?」


 その情報に身を乗り出す。だが、過度の期待は禁物だ。ミルティからすれば、日本人男性はみんな俺に似ているように見えるだろう。


「ええ。私の問いかけに『モリモト、カナメ』と返してくれたわ」


「でも、よく意思疎通ができたね。ミルティは向こうの言葉は話せないでしょ?」


「だからこそ、知らない言葉の中に混ざっている『カナメ』『モリモト』という音節を抽出できた彼は、関係者かもしれないと思って」


 クルネの質問に答えると、ミルティはもう一度こちらへ向き直った。


「それで……もしよかったら、今度はカナメさんも付き合ってもらえない? カナメさんなら言葉も通じるはずだし」


「ああ、もちろん」


 俺は即答する。もともと俺が依頼した案件だし、断る理由はなかった。


「あ、そっか。そう言えば、カナメの言葉が理解できるのって、魔法のおかげなんだよね。違和感がないから、すっかり忘れてた」


「あの爺さんに、そこだけは感謝しておかないとな」


 ふと、あの偏屈な時空魔導師のことを思い出す。特にそれらしい噂は聞かないから、大人しくしているのだろう。もしくは、別の大陸にでも移ったか。


「……それじゃ、私は研究所に戻るわね」


 指でつついたり抱っこしたりと、赤ん坊をしばらく堪能していたミルティは、やがて名残惜しそうに立ち上がる。『辺境の賢者』は相変わらず大忙しのようだった。


 玄関先までミルティを見送り、扉を閉める。いつの間にか寝ていたツカサをベッドに寝かせると、クルネはこちらへ向き直った。


「カナメ、よかったね! 向こうの世界の人たちと、ようやく会えるじゃない」


「ああ、そうだな」


「家族とか、友達とか、たくさんいるんでしょ?」


 彼女は矢継ぎ早に問いかけてくる。その表情には笑顔が浮かんでいるが……。


「――クルネ」


 そして、俺はクルネをふわりと抱きしめる。予想外だったのか、彼女は照れと困惑が入り混じった表情で固まっていた。


「大丈夫だ。俺はこの世界で生きていく。……クルネやツカサと一緒に」


 上手く笑えていなかったクルネに、そう宣言する。俺が元の世界に戻りたくなるのではないかと、不安に駆られていることは明らかだった。


「……うん」


 彼女は小さく返事をすると、俺の胸元に顔を押しつけた。




 ◆◆◆




【森本 修】




 普段はあまり通らない路地を、ゆっくりと歩く。あの生首――いや、不思議な女性と遭遇してから一週間が経つが、彼女と再会することはなかった。


 それでも。もしかしたらと、俺は通勤ルートを曲げて、彼女と遭遇した道を行き帰りに使うことにしていた。

 怪現象の正体が知りたいのか、それとも兄の名前らしきものが出たからか。自分でも分からないまま、暗くなりかけた道を歩き続ける。


 ――と。突然、バチッという異音が響いた。


「っ!?」


 驚きというよりは期待に心を膨らませて、音源を探る。背後の何もない空間に、不思議な色合いのスパークが走っているのが見えた。


「これは……」


 やがて、スパークは放射状に広がっていき、直径三十センチほどの円を形成する。そして――。


「aor、qpassAoip@;w!」


 再び、青髪の女性が姿を現した。視線が合った彼女は、驚いたのか軽く目を見開いていた。そして、なぜか横を振り向く。


「カナメsoi! Asgw@fe;ljyaiogjlf!」


「隣に誰かいるのか……?」


 横を向いて喋り出したということは、そういうことなのだろう。やがて、彼女の姿が横へスライドし、男性の姿が目に入る。


「突然、驚かせて申し訳ありません。私は森本要と申します。不気味な状況だと思われることは重々承知していますが、よろしければ、ここの住所を教えて頂けませんか?」


「え――?」


 入ってくる情報量の多さに俺は硬直した。失踪した兄とそっくりの顔をした人物が、記憶通りの声で、兄の名前を名乗っている。それも、怪現象で現れた円形の窓らしき空間の向こうで。


「ん? ――修!?」


 そして、極めつけはこの反応だ。ここまで揃えられては、答えないわけにはいかない。


「兄……貴……?」


 呆気に取られながらも、空間の向こうを凝視する。記憶より少し年を取っている気がするが、もう七年も経っているのだ。むしろ当然と言えた。

 ただ、雰囲気はだいぶ変わっていた。どこか人生に投げやりだった雰囲気はなくなり、生き生きとしているように見える。


「やっぱり修か! ……そうか、髪を触媒にしたわけだし、俺と遺伝情報が一番近いのは修だろうからな。そこに引っ張られたのか……?」


 と、兄らしき人物は突然考え事を始めた。それもまた、兄によく見られる癖だ。だが、隣の女性に何事かを言われて、彼は再びこちらに視線を合わせる。


「修、久しぶりだな。……迷惑をかけた」


「いや、ちょっと待ってくれ。……本当に兄貴なのか?」


 俺は慎重に周囲の様子を探る。これがドッキリ番組か何かだとすれば、本気で訴えてやる。


「ああ、ドッキリか何かだと疑ってるのか? 俺もこっちへ来た時はそうだったからな。気持ちはわかる」


 そんな俺の気持ちを見透かすように、兄らしき人物は大きく頷いた。


「じゃあ、思い出エピソードでも語ってみせようか? 何がいい?」


「……姉貴の上の子供の名前は?」


 俺が問いかけると、自称兄は素っ頓狂な声を上げた。


「生まれたのか!? ……って、そりゃそうか。あの時点で妊娠六か月とかだったもんな」


「なるほど、引っ掛からないな」


 俺は笑みを浮かべる。兄が失踪した時点では、まだ姉は出産していないからだ。続けて、家族の名前などの一般的な事象を問いかけるが、目の前の相手の回答にはよどみがなかった。


「それじゃ、兄貴の初恋の相手は?」


「そんな話、お前とした記憶がないんだが……」


「ちっ、バレたか」


「この状況下で、俺のプライベートを暴こうとするなよ……」


 兄らしき人物は苦笑を浮かべる。その仕草も記憶通りで、俺は目の前の人物が兄だと認めざるを得なかった。


「……分かったよ。兄貴だって認める」


「そうか、よかった」


 兄は明らかにほっとした様子だった。そして、何を思ったのか、俺を上から下までゆっくり眺める。


「どうかした?」


「いや……ひょっとして、仕事帰りか?」


「まあ、こんな時間だからな……今じゃ俺も警察官だよ」


 そう報告すると、兄は軽く目を見開いた。驚いているらしい。


「警察って体育会系なんだろ? 大丈夫か?」


 体育会のノリが苦手な兄貴は、本気で心配しているようだった。そんな兄らしい反応に、自然と口角が上がる。

 だが、そんな俺とは対照的に、兄の表情は曇っていた。


「……それって、俺のせいか?」


 そして、真剣な顔で尋ねてくる。どうやら、自分の失踪が影響したと思っているようだった。


「別に、そういうわけじゃない。まあ、採用面接の時にはフル活用させてもらったけど」


 そう答えると兄はようやく笑顔を見せた。そこで、今度はこちらから問いかける。


「それで、そっちは? 兄貴だって働いてるんだろ?」


「いや、もちろん働いてるが……」


 兄は歯切れ悪く頷く。こんな不思議な技術を使っているくらいだし、どこか特殊な研究機関にでも勤めているんだろうか。


「……笑うなよ?」


「はいはい。そんなに勿体ぶるなよ」


 安請け合いすると、兄は言いにくそうに口を開いた。


「今の勤め先は……神殿だ」


「は? 神殿って、あの神殿? ギリシャとかローマとかにあるやつ?」


「……それだ」


 あまりに突飛な答えに、俺は何度も目を瞬かせた。


「あの兄貴が? よりによって神殿?」


 そして、俺は腹を抱えて爆笑する。無神論者の兄が神殿なんて、似合わないことこの上ない。それとも、公には言えない事情があって、あえてボカしているのか。


「先に言っておくが、嘘はついてないからな。隠れ蓑でも何の隠喩でもない」


 少し拗ねた様子で、兄はそう告げる。そして、続けて何かを言おうとして――ふっと画像がぼやけた。


「ミルティ、大丈夫か!?」


「grlkor、rtlg@:Qwe」


 ぼやけた映像の向こうで、隣の女性が何事かを答える。その答えを聞いた兄貴は、こちらへ緊迫した声を飛ばした。


「――修! 前にミルティ……青髪の女性と会って何日経つ!?」


「え? ええと……ちょうど一週間だ」


「時間は?」


「たしか、あの時は昼過ぎだった」


 その言葉に、兄は少し考え込む。


「多少のズレはあるが、時間の流れは似通っていると考えてよさそうだな。曜日は?」


「今日は火曜日だ」


「じゃあ、五日後の日曜日の今の時間に、もう一度ここへ来てほしい。できれば、家に顔を出したい」


「それは分かったが、急にどうしたんだ? 機材トラブルか?」


 兄の焦り具合に首を傾げるが、返ってきた答えは予想外のものだった。


「――魔力切れだ」


「……は?」


「魔力。お前もよくゲームしてたから分かるだろ?」


「いや、そうじゃなくて……」


 この兄は何を言い出すのか。返答に困った俺だったが、すぐにその必要はなくなった。ひときわ眩いスパークを放った直後、ぼやけていた画像が消失したからだ。


「なんだったんだ……」


 俺は周囲を見回したが、以前と同じくなんの痕跡も残っていない。だが――。


「そっか……生きてたんだな」


 つい言葉が漏れた。あまりに謎が多いし、胡散臭いと思う気持ちもある。でも……それだけは、疑うつもりになれなかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] この続きが楽しみです
[良い点] 女の生首と家族で本編最終話を思い出してちょっと笑ってしまったw そういう風だったんかい! [一言] そういや呼び寄せとはいえ、この時空連結は時空魔術師のじじいが先に成功したんだよな… あと…
[一言] おぉ! 家族とコンタクト取れた話はさらっと出てたけど ファーストコンタクトは是非読んでみたかった!
感想一覧
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