第4話
「叔母さん大変、起きてください」
「……青葉さんな」
夜ふかしのせいで重たいまぶたを開く。
うとうととしている私に呆れているのは、起こそうと身体をゆすり続けて疲れ切っている 碧依。
時間は5時30分。
もう少し寝させていただきたい。
「やっと起きてくれましたね。この呼び方だと一発なんですね、憶えておきます」
「やめろばかたれ」
「昨日の爆発事件覚えてます?」
机の上にある飲みかけのワイン。
泥酔した記憶は無い為、単純に飲み切る前に寝てしまったのだろう。
勿体ないけど水道に捨てる。
歯磨き、うがい。
ぴょこぴょこと後ろについてくる 碧依は私の返答を待っているようでずっと首をかしげている。
顔を洗って、「よし」と身体のスイッチを切り替える。
「いいか、爆発事件と言ったけどあれは単なる機材の発火事故だ。探偵が出る幕でもなければ、刑事課の警部が非番を返上してまで取り組むことではないと思うのだが?」
「ん!」
スマホの画面を私に向けてくる。
寝起きの目にはスマホのライトすらキツイ。
目が馴染むのを待って、細目にしながら確認する。
ネットニュースか。
〝長野県の松本駅にてモバイルバッテリーの爆発は意図的な物だった? 犯人と思われる人物がSNSにて謎の投稿。次の爆破場所の予告か──〟。
「なんだこれ。どうせ目立ちたがりのおふざけだろ。サイバー警察に任せておきなさい」
「事件が起きる前に止めるのが警察のお仕事ですよね?」
「探偵も刑事課も事が起こった後がお仕事だ。疑わしきは罰せず、ネットで犯罪者ぶってるからって、他から訴えが無ければ捕まえるこが出来ないことのほうが多い」
「そんなんだから警察がなめられるんですよ」
なめてるのはお前だけでは?
「まあ警察官は私だけじゃない公安とかに任せておけば──……」
私のスマホが鳴る。
呼び出し音は舘ひ●しの『冷たい太陽』。
画面には『赤石クン』と出ている。
デートのお誘いかな、とも考えたがそんなわけはないからそのまま電話に出る。
『警部、非番の日に申し訳ございません! 赤石です』
「おはよう赤石クン」
『それが申し上げにくいのですが捜査に参加して欲しいと……』
「爆破事件のことかね」
私がそう言うと目の前にいた 碧依が目をキラキラとさせながらガッツポーズ。
縁起でもないものに喜ぶなとおでこにビンタする。
『はい、その通りです。署長から『あの可愛らしい探偵さんにも事件に参加してもらいなさい』と言われまして……しかも犯人からの犯行予告も謎解きみたいになっていてお手上げ状態なんですよ』
「分かった。参加する。その謎解きだが写真で撮って送っ──」
「SNSに投稿されたものなので確認出来てます」
「大丈夫なようだ」
『警察署に送られてきた文面とネットで上がっている文面が少し異なるようなので一応送られせてもらいますね』
「助かる」
そこで電話が切れた。
署長め、イケメンの赤石クンに頼ませれば私が断れないこと知っていてのことだな。
腹黒タヌキおやじ。
「お望み通り、事件に参加できることになったぞ。大変憎たらしいことにな」
「やった」
「そうと決まれば急げ。2階で寝てる 浅葱を起こさないように出るぞ」
私はスーツに着替え、 碧依は正装だと言わんばかりにセーラー服に。
音を立てないように出ていく。
後で謝罪のメールでも送っておこう。
せっかくこっちに来たのにお留守番とは可哀想に。
車に乗り込む、助手席に 碧依が座る。
ため息が出てしまいながらエンジンをかけ、出発。
「いいか、これはいつもの殺人事件とは違う。私もあまり経験はない。だから自由行動はなるべく控えてくれ。私の言うことは絶対聞く事。一回転して『わん』と言えと命令してもだ」
「了解ですわん」
「その事件、俺も見学させてもらっても良いかな? 家族の働いてるとこ見てみたいし」
「うおっ!?」
後部座席からひょこっと出てきたのは上の甥、 浅葱。
置いてきたつもりだったがいつのまに乗り込んでいた。
あまりの驚きで車体が揺れた。
その勢いで碧依は頭をぶつけた。




