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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
戦争編

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エルフの領域【前編】

 

 つまりゴルゴダの支配領域にちょっかいかけて真凛様——もとい魔宝石のエメリエラを手に入れようという不届き者が働いていたわけか。

 けど、それは簡単なことではなく、今日に至っては俺までついてきてしまった、と。

 どこのどいつだそんなことをしくさりやがる武神は。

 絶対武神だろう。

 女神族じゃないだろ、そのどことなく間抜けで詰めの甘い感じ。


「っ、そんな話を信じられるわけがあるか! どうせ我々の情報を探りにきたのだろう!? 貴様らに教える情報などなにもない! 去れ!」

「あ、はい! お邪魔しました!」

「!?」


 ぺこん、と頭を下げる真凛様。

 その姿と、あまりにも素直な態度にマーケイルは動揺した。

 まあ、動揺するわ。

 敵が探りにきたと思ったら、礼儀正しく自己紹介のあとお辞儀までして立ち去ろうとするのだから。

 ただ、俺としてはマーケイルが鈴緒丸やエメリエラを見ても、あまり混乱しなかったのが気になる。

 鈴緒丸は見るからにこの世界の属性ではない。

 和装で、お前だけなんかゲームのジャンルが違うんだよ、って感じだ。

 けれどエメリエラは女神。

 この世界の女神だ。

 むしろこの世界を作ったティターニアのかけら。

 それから生まれた女神である。

 妖精族とエルフ族は天神族への信仰心に厚く、その分他種族に興味がない。

 もっと言うとエルフ族が信仰するのは『ウェンディール王国』同様、女神。

 まあ、信仰する女神は違うけど。

 エルフ族が信仰するのは、『災いと繁栄の女神』ナターシアと『戦いと勝利の女神』イシュタリア。

 ……どちらもかなり苛烈な性格の女神だと聞いている、アミューリアに。

 なので、女神に対してはもっとこう、信仰深い感じで、丁寧な対応をしてくるもんだと勝手に思ってた。


「…………」


 あれか?

 エメリエラが女神っぽくないせいか?

 一応天使の羽みたいなのはついてるから、一目で女神とはわかる……はずなんだけどなぁ?


「ヴィンセントさん、帰りましょう! ……どうやって帰るんですかね?」

「エルフ族の世話係にお願いして、案内してもらうんですよ」

「あ、そうか! お世話係の人にお願いしてもいいでしょうか?」

「……い、今連れてきてやる」

「ありがとうございます!」


 マーケイルも毒気を抜かれたような顔をしているな。

 フッ、なんにせよ俺が一緒に来たことで真凛様とマーケイルの『出会いイベント』はこれでおじゃん……!

 ヘンリエッタ嬢に「このフラグクラッシャー鈍器!」と言われた俺の本領発揮というわけだな!

 いやー、ガイが真凛様と『出会いイベント』かました時は「ぶっ殺す」と思ったもんだが——命拾いしたなマーケイル。

 お前がもしも今日、真凛様と二人きりで会っていたら俺は明日の筋肉痛を押してでもお前をぶっ倒しに出ていた。

 負けられない戦いがそこにある。

 なぜならお前のルートは特に許し難い。


 マーケイル・カリス。

 ヒロインの力を利用しようと近づき、ミイラ取りがミイラになる。


 はい! ダメ!

 ヒロイン=真凛様の力を利用しようと近づくってことはつまり口説く、ってこと!

 はあ? 殺す!

 そんなん殺す以外の選択肢がない!

 俺というものがいるのに、NTRとか絶許案件だろ!

 逆ハーレムエンドは解釈違いなのでこちらも絶許。

 純粋な真凛様を利用するために近づくとか、マーケイル、お前のルートだけは絶対に……!


「…………」

「…………」


 俺が睨みつけているのを、奴がどう思ったのかわからないが、向こうも俺を睨みつける。

 ただ、真凛様に対しての視線は少し違う。

 伺うような、探るようなものだ。

 その視線の先にやはりエメリエラがいる。

 エメリエラの姿は初日に他種族全員が見ているはずだが、妖精族とエルフ族にとって女神族は強い信仰対象。

 ちょっと気になるな。


『エルフ族の中では魔力量が少ないな、あの男』

「そうなのか?」


 耳打ちするように鈴緒丸が教えてくれた。

 ふーん、エルフの王子なのに魔力量が少ない……。

 それでヒロイン——真凛様を利用しようとするって流れなのか。

 だが残念!

 真凛様は絶対渡さん!

 お前のルートは破壊してやるぜ!


「お待たせしました。迷い込まれたのは——」

「あ、わたしたちです」

「貴様らが戻るまでしっかり見張らせてもらう」

「勝手にしろよ」


 マーケイルが連れてきた世話係は、俺の腰ぐらいまでの大きさの二足歩行の猫。

 え、これ獣人では?

 でも背中に蝶のような羽根がある。

 これも妖精なのか。

 妖精、いろんな姿のやつがいるんだな。

 ちょっと妖精と獣人の亜人族に見えた。

 彼は頭を下げると、音もなく歩き始める。

 彼について俺と真凛様が歩き出すと、後ろからマーケイルがついてきた。

 まあ、いいとは言ったけど後ろに立たれるのはなんかやだな。


「それは本物の女神なのか? なぜ女神がお前たちの味方をする? それは不公平ではないのか?」

「は?」


 突然話しかけてきたと思ったら矢継ぎ早。

 俺があまりに敵意剥き出しで聞き返したからか、真凛様が腕を掴んで首を横に振る。

 うう、そうされると弱い。


「はい、そうですよ。エメリエラは女神です。でも、生まれたばかりでまだ女神としては半人前みたいで……」

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