99話 熊殺しッッッ!!
総合評価が775です。あと一人のブックマークでスリーセブン……。
朝に残ったコーヒーを飲んだ。幸せな一日の始まりである。
今日は狩りなので、先生、ピコ、アッシュとともに出発する。
六時ごろに出発したが早いとは思わなくなった。むしろ少し遅いと思えるぐらいだ。
『クラーク村の朝は早い』ってナレーションが聞こえてきそうだぜ。
設楽ちゃんはもちろん寝ている。コーヒー置いておいた。
――――
「おはようございます」
「おはようございます」
「おう~来たか」
リーダーに迎えられハンター達と村北部で合流する。
「ふむ……今日は勢ぞろいですね」
弓を担いだ先生がリーダーに問いかけた。
「ガハハ、爺さんが参加するからみんな興味津々よ」
「なるほど」
そんな注目のゼツペさんはアッシュと一緒に山を見ていた。
佇まいがカッコイイ。
そういえば、ハンター達と普通の狩りをしたことは無いな。
ストライクバードやワニといった年に一回のイベント的な狩りに同行しただけだ。
ちょっとワクワクした。
山を走るのは苦手だけど、ゼツペさんに結構鍛えられたし秘策もある。なんとかついていけそうな気がする。
「んじゃ~出発するぞ~」
「「「おう」」」
リーダーの号令とともに山に出発した。
――――
「って、速!」
北の山麓の森に入り、まずはリンクスが駆けだした。
それを追うようにゼツペさん、アッシュと駆けていく。
「ガハハ~」
笑いながらリーダーもついていく。
あとは、リーダーの息子達も走ってついていった。
はあ、しょうがない走るか。魔力を溜めて一気に加速した。
「え、アカィ――く……」
なんか先生に呼ばれた気がするな。でも振り返ってる余裕が無かった。
追いつくにはかなりギリギリな気がしたから。
――――
(いい感じで走れている!)
俺は山を疾走する。多分追い付けるはずだ。
平地はスキップ走法でかなり速く走れる。ただ、凹凸が多い場所や坂道は適さない。
リズムよくピョンピョン飛んで走るから、着地点の変更が難しいんだよな。
だから山で走るときのために色々準備してきた。
まず準備したものはグローブだ。革で出来ていてかなり丈夫だ。
そして山用に走り方を考えてきた。名付けてうさぎ跳び走法。
両足を揃えて一気に踏み出す。六メートルぐらいは飛んでいると思う。
着地時は、腰を曲げ腕が地面に着くぐらい前傾姿勢にする。
そして再度一気に踏み出す。
スキップ走法との違いは、一歩一歩の回転数は落ちるが、一歩の飛距離は伸びている点だ。
そして重要なのは一歩ごとに方向転換が出来ることだ。方向転換が可能なので障害物にも対応できる。
(しかし……、難点は腰が痛いことかな)
前傾姿勢なので腰と太ももに負担が大きい。
ゼツペさんみたいな動体視力が無いので仕方ないんだけどさ。
とにかく急ぐ。アッシュに、みんなに追い付かないと!
――――
「ほお」
「ん?」
み、見つけた……!
「あ、アカイちゃんじゃねえか」
「ど、どうも、お待たせしました」
リーダーは驚いている。ここにいるのはゼツペさん、リーダー、それとリーダーの三男のドライさんにリンクスとアッシュとピコだ。ピコは上空から降りてきた。
確かに場違い感はあるな。
「よ、良く追いつけたな、へへ」
「まあ……ゼツペさんに鍛えられましたから。はは」
「ふむ、当然じゃな。はっはっは!」
当然じゃないけどまあいい。
あれ? リーダーの長男アインさんがいない。
「アインさんは?」
「アイツはみんなのところに場所を伝えに行った。渋々だったけどな。ガハハ。
爺、張り切り過ぎなんだよ」
「ふん、たるんどる」
リーダーはやれやれって感じだ。
「さて、なに狩ろうかの?」
「おう、どうする? いつもはボアとかホッグだな。鹿は警戒心強いから運がいい時だけだな」
この前はゼツペさんが鹿殺してたからな。
「熊とかヤマネコはおらんのか?」
「ガハハ、ヤマネコなんておとぎ話だろ? 熊はたまにいるぜ」
「ヤマネコは美味いんじゃがのう……、この辺にはおらんか。なら熊じゃな」
ヤマネコ……。多分想像している猫ではないはず。
巨体なんだろうか……。めちゃ怖いんですけど。
「ガハ…ハ、熊か」
「よし、行こうかの」
ゼツペさんは歩き出す。適当に歩いているようで何か探して歩いている。
長年の経験なのか、何かしらのサインがあるのかはわからないけど、スタスタ歩いていく。
俺たちはそれについていく。
「バフ」
リンクスが小さくゼツペさんに合図した。
「ふむ」
ゼツペさんがハンドサインで俺たちを静止した。そして木に登る。
「おったの、静かについてこい」
俺には全然見えないけど見つけたらしい。静かに進む。
目の前には少し下った傾斜面だった。
(――いた)
熊がのそのそ歩いている。大きさは動物園で見たことがある熊より少し大きい。
アッシュと同じぐらいのサイズではないだろうか。アッシュがスタイリッシュだとすれば、熊は熊らしく肉厚な感じだ。
「警戒しとるの、熊は鼻がいいからの」
へ~そうなんだ。喋っていいのかわからなくてただただ頷いた。
「おい、ナイフいるか?」
「熊にはきかん。体毛と筋肉で刃が通らん」
「んじゃ、どうするよ」
リーダーの提案を却下し、右手を上げた。
ゼツペさんの手には赤ちゃんの頭ぐらいの石がある。いつのまに持っていたんだろう。
「行ってくる。お前たちはここで見とれ」
「お、おい」
ゼツペさんは立ち上がりリンクスに何か耳打ちした。
そして熊へ無防備に進んでいく。
「ど、どうするんでしょうか」
「しらね~よ、熊狩りなんてやったことねえ」
「……」
リーダー、ドライさん、俺は緊張しつつ様子を見守ることにする。
熊は斜面を下るゼツペさんに気づいた様子だ。
警戒レベルを上げたのか、威嚇しているように見える。
ただ鳴き声はちょっと間の抜けた感じだった。俺には「へええぇえ」と聞こえた。
ゼツペさんは回り込むように近づき、一本の木を背にした。
熊との距離は八メートル位だろうか。睨み合っている。
(や、やばいんじゃないのこれ)
ゼツペさんは左手から何か投げたようだ。石か木の実か。
激昂した熊はゼツペさんに向かい走り出した。
走る熊を初めてみたがとても速い。一瞬で距離を詰め左手を突き出した。
「今じゃ!」
そう叫びゼツペさんが飛翔する。一度見せてもらった大ジャンプ。
五メートルぐらい飛翔し木の枝に飛び乗った。
目標を失った熊の手は木にクリーンヒットした。
熊は捉えたはずの獲物がいないので戸惑っているようだ。
後で聞いた話だと、熊は耳と鼻は利くが、目は良くないらしい。
「バフ!」
気配を消していたリンクスが熊の背後から飛びかかった。
飛びかかるとわかる、サイズはほぼ同じだ。
背後から押さえつけられた熊は暴れているようだが、押さえつけられた経験などないのだろう、ただバタバタしている。
「ふん!」
そしてゼツペさんが落下して熊の頭蓋に石をぶちこんだ。
なかなかグロい光景だ。まだ動いているようなので数度石をぶちこむ。
ゼツペさんは数秒確認した後、俺たちを呼び寄せた。死亡確認が完了したのだろう。
絶命した熊は寝そべったままだ。外傷は頭だけなので綺麗な死骸だった。
「す、すごいですね」
「あ、ああ。爺すげえな」
「ふむ、なかなか、すりりんぐじゃったわい」
ゼツペさんは非常に満足そうだ。やはりゼツペさんは規格外である。
リンクスはアホ顔で「バフバフ」喜んでいる。
「次はお前たちの番じゃな、アッシュ、ピコ」
「ワン! ワン!」
「ピッ! ピッ!」
アッシュもピコもヤル気満々だ。
しかし……この熊どうするんだろうか。五百キロぐらいありそうだけど。
熊殺しの目撃者となった俺たちは、目の前に寝そべった熊を見て呆然と立ち尽くすのだった。
さあ……、狩りは始まったばかりだ。
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