表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第四章 アカイ、犬を求めて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/251

70話 問題 異世界とは何か説明せよ

4章もそろそろ終わりです。読んでいただきありがとうございます。


 『犬と狼』

 昔々、狼犬という動物がいた。

 他の動物と同じように野生の中で生きていた。


 そんな彼らに転機が訪れる。ニンゲンだ。

 狼犬の一つの部族がニンゲンと共に生きる選択をした。

 ニンゲンに従い、ニンゲンを信頼し、ニンゲンを愛していくと決めた。


 他の狼犬は激怒した。

 野生の動物が、他の種族と共存して生きていくなどありえない。

 狼犬は誇りを捨てた狼犬達は犬だと言い、自分たちは狼であると言った。

 同じ種族だった『狼』と『犬』は袂を分けた。


 その後、ニンゲンは繁栄していった。

 犬はそれと共に地位を確立していく。犬はニンゲンにとっての一番のパートナーである。

 ニンゲンも犬を信頼し、愛するようになった。

 犬は野生を捨て繁栄を得た。


 狼は時代と共に衰退した。だが誇りを護り強く生きた。

 変化に適応できず、居場所を失っていったが、誇りは失わなかった。


 狼と犬。どちらが正しかったかはわからない。


――――


 ボスの黒い犬がゼツペさんと共にやってきた。

 会うのは初日以来である。相変わらずの威圧感と圧倒的な存在感だ。

 俺の目を見ている。心の奥まで射貫くように。


「ガウ!」

「呼びつけてすいません」

「ガウガウ!」

「要件を言えといっとるぞ」


 俺は深呼吸をし、灰色の犬と目を合わせる。通じていると確信する。


「この子を――、村に連れていきたいです」


 黒い犬は気配をさらに鋭くした。


「ガウガウ!」

「ワン!――」


 犬同士で話している。

 さすがに何を話してるのかはわからないが、俺についてだろう。

 話が終わるまで待つことにした。


――


「ガウ!」

「連れていく理由を話せと言っておるな」

「お世話になっている村を良くしたい。出来たらこの世界も良くしたい。

 そのために犬の力が必要だからです」


「ガウ! ガウガウ!」

「なぜ、そんなにがんばるのだ? と言っておるな」

「なぜ……か」


 理由は簡単だ。蘇生のため。

 あれ……でもミックは十年経過すれば無条件で蘇生してくれるって話だったな。

 改めて考えると、なぜ俺は頑張っているんだろう。


 正直、蘇生関係無く何か役に立ちたいと思っている。

 この世界の人達と関わって、がんばって生きて、色々経験した。

 辛いことも多かったけど、それをひっくるめて俺はこの世界が好きだ。


 一言では言えない。説明が難しい。

 

「こ、この世界が好きだから……かな」

「ガウ」

「それだけなのか? と聞いておる」

「えっと……あ」


 ああ、今気づいた。先ほどよぎった不安の正体に。

 ゼツペさんが『犬は邪な心に敏感だ。恐らく匂いで判断しているんじゃろう』って言っていたな。

 薄々気づいていたけれど、犬に隠し事は出来ない。

 隠している内容はわからないだろうけど、隠しているかどうかはバレる気がする。


「ちょ、っと待ってほしい」

「ガウ」


 みんなが不思議そうに俺を見ている。俺は考えをまとめることにする。

 多分隠し事をしたままでは、ボスの信用は得られない。

 話さないといけないのか? 俺が異世界転生者であることを。


 懸念点は二つあるな。

 一つはそもそも異世界転生であることを誰かに話してもいいのかということだ。

 話すと死んだりしないのだろうか。この手のゲームや話ではでは転生バレは厳禁なことが多い。

 そしてミックに確認したいが連絡手段がない。


 もう一つは、ゼツペさんだ。

 話して良いのだろうか。無いとは思うが、他の人に話される危険性がある。

 いや、はたして危険なのだろうか。話されたところで誰も信じない気もする。


 ど、どうしよう。


「ガウッガウ!」

「――やはりなにか隠しておるのか?」

「ち、ちが」

「ガウ!」

「ならなぜ言えないのだ」


 ふと見ると、灰色の犬は不安そうな顔だ。

 俺は起こるかわからない未来の不安より、現状の解決を優先することにした。


(ミック! 言っちゃダメなら今のうちだぞ! 言っちゃうぞ!)


 エセ神様に向けて心の中で念じた。瀕死にならないと出てこれないような神様だ。

 どうせ大丈夫だろうと思ってはいるんだけどね。


「えっとですね」

「ガウ!」

「なんだ、と言っておる」

「全部話すんで、信じてくださいね。あ、その前にゼツペさん」


 通訳に徹していたゼツペさんは、自分が呼ばれることは無いと思っていたのだろう。

 ちょっと不意を突かれている。


「ワシか?」

「これから話すことは、内緒でお願いします」

「ふむ、他言せぬことを誓おう」

「すいません」


 俺は深く礼をした。ぶっちゃけゼツペさんに裏切られたらしょうがないって思ってるよ。

 他の懸念は、転生バレのペナルティぐらいだ。ま、なるようになるだろ。

 一つ咳払いをした。


「僕は……」


 皆が真剣な目で俺を見つめている。


「僕は……この世界の人間では……ありません」


 俺は目を閉じた。何か来るかもしれないと思い体を硬直させた。

 ――何も来なかった。ペナルティ無かったんだ! 良かった!


 安心して目を開くと、みんなポカンとしていた。


「あれ? 結構一大決心して話したんだけど……」

「アカイよ、何を言っておるのじゃ?」

「いや、だからこの世界の人間じゃないんです」

「遠くから来たということか?」

「いや、えっと異世界から来たんですけど……」

「なんじゃイセカイって?」

「この世界とは別の世界ででして……」


 あれ? 全然誰も理解してくれないぞ。ボスまでポカンとしている。


「ちょ、ちょっと待ってください! ゼロから説明します!」


 図解して、詳細を話すことにした。


****


 説明は難航した。異世界転生の説明はむちゃくちゃ難しかった。


「ガウガウ?」

「海の先じゃないのか? と聞いておる」

「だーーから、この世界じゃないの! どれだけ遠くに行っても行けない世界なの!

 絵でも描いたでしょ! 別の世界、アナザーワールド、OK??」

「ガ、ガウゥ」

「す、すまん」


 俺はヒートアップしていた。決心して話したのにまったく理解してくれないからだ。

 そもそも犬に異世界転生を説明するのが無茶な気がする。ゼツペさんもチンプンカンプンみたいだし。


 そもそもこっちの世界では異世界に行くってストーリーが無いっぽい。

 基本的に現実ベースの童話とか逸話しかないみたいだ。

 例えるなら『赤ずきん』の話は理解できても、『不思議の国のアリス』は突飛すぎるんだろう。


 二時間経過しても話は全く進まない。


****


 全部理解してもらうのはあきらめた。かなり簡潔にまとめることにした。


「俺死んだ。生き返るにはこの世界で頑張る大事。ここまではいいかな?」

「ガウ」「ワン」「ピィ」「ほい」

「頑張るために、犬に力貸してほしい。俺もがんばる」

「ガウ」「ワン」「ピィ」「うむ」

「俺の世界、犬友達。大事にする。安心してほしい」

「ガウ」

「ピィピィ!」

「トリも友達、大事」

「ピィ」


 結局三時間かかった。コミュニケーションって難しいよ。


「ガウガウ」

「もうわかった、連れてけ。だとよ」

「え」

「ガウガウ、ガウ」

「お前は嘘は言っていない。俺も疲れただとさ」


 三時間も座学をやったんだ。疲れて当然だ。


「ご、ごめん」

「ガウ」


 ボスはさっさと帰ってしまった。


「は~~、良かったあ」

「はっはっは、お疲れさん」

「なんかクタクタですよ」

「ワシも疲れたわい」


 俺はその場にへたり込んだ。隣には犬が近寄ってきた。


「ワン!」

「ははは、よかった~これで一緒にいれるな~」

「ワンワン!」


 モフモフしてあげることにした。


「気持ち~かワンコ~」

「ワン! ワン!」


 犬は顔をブルブルした。なんだろ?


「はっはっは、ワンコは嫌みたいじゃ。カッコイイ名前をつけろだとさ」

「名前かー。カッコイイ名前だな、よ~し」


 いろいろ考えてみる。


「俺の世界では、ポチとかタローとかハチとかがメジャーなんだけど……」

「グルルル!」


 明らかに嫌がっている。カッコイイ名前がいいんだな。

 『エクスカリバー』とか『アロンダイト』とか名づけると、設楽さんにバカにされそうだ。

 犬っぽくて、呼びやすくて、カッコイイ名前か。


「そうだな、アッシュなんてどうだ!」

「ワン!」

「お、気に入ったみたいだな! 毛の色にちなんだ名前なんだぞ~」

「ワンワン!」


 その場でぐるぐる回りだした。愛い奴目。


「はは~アッシュ~」「ワン!」


 目的を達成した安堵と解放感から、俺は眠くなるまで遊び続けた。

 新しい仲間ができた。



 動物使いのスキルレベルがLv5になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
宜しかったら、『ブックマーク』、『感想』、『評価』をいただけると励みになります。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ