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三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第三章 第二節 王都回遊

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58話 犬神はクソジジイでした

昨日はブクマ4件増えてました、ありがとうございます!

もっとがんばります!


 犬神さんを待ちつつ三十分程度経過した。

 村長たち心配してなければいいけど。


 設楽さんはピコのエサやりに夢中だ。


「犬だけど」

「なに?」

「犬は移動手段として考えてるの?」

「可能であればね」

「犬に乗るなんて、漫画の世界っぽいよね~」

「そうね」

「この世界って犬見ないよね、いないのかと思ってたよ」

「どっちかと言えば山犬なんでしょ」

「山犬?」

「まぁ……オオカミみたいなものよ」


 オオカミか……もしかしたら犬も狂暴なのかもしれないな。

 躾けれないかもしれない。協力的じゃないかもしれない。

 俺たちの世界の犬って動物の中でも特別だって聞いたことがある。

 確か人間に従順な遺伝子があるらしい。

 まぁ、すべては犬神さん次第だ。


 俺は乾燥ナッツを食べながらのんびりしてた。

 まぁなるようになるだろうと緩んでいた。


「おーい! アカイちゃん! 連れてきたぞ!」


 振り向くとリーダーと小柄な男性。

 小柄だけど……恐ろしい威圧感だ。

 身長は百六十センチぐらいで灰色のボサボサな髪。顔の皺から判断するに六十歳は超えているだろう。

 だが。すさまじく引き締まった肉体だ。

 服はくすんだ襤褸をまとっているが、体の一部かのように馴染んでいる。

 袖口から手が見える。血管が随所に浮き出し、老人とは思えない太い指、力強い節。

 間違いなく強い。この世界で出会った生物の中で一番強いんじゃないだろうか。

 そしてたたずまいから伝わってくる、この人は武人だ。


「なんじゃこのガキンチョたちは」

「へへへ、村の仲間なんだけどよ、じいさんに会いたいってさ」

「ふ~ん」


 鋭い眼光で俺たちは見られている。いや観察されている。


「若いのう、商人かお前たち」

「い、いえ」

「生娘のような手じゃ、狩人ではあるまいて」


 仕事はなんですか?と聞かれたら困るな。

 異世界成長コンサルタントってとこかしら。


「まぁええわ、でなんのようじゃ」


 俺は設楽さんのほうを見た。


「こんばんは、シタラです。犬に関して聞きたいんですが」

「ふむ、何を聞きたい」

「犬を仲間にすることは可能ですか?」

「仲間? 使役したいということか」

「そうですね」

「何かと思えば。犬を道具にしたいということか」


 な、なかなか喧嘩腰だ。初対面の時のクラーク村長を思い出すぜ。


「平たく言えばそうですね」

「犬はプライドが高い、邪な人間に懐いたりせぬ」

「でも、あなたには懐いているんですよね」


 犬神さんは鼻で笑った。


「わしは犬に何も求めておらぬ。お互い尊重し合っておるから供に過ごしておる。

 おぬし達はただ犬に求めるだけであろう」


 まぁ……確かにそうかもしれん。でもそれって人間の歴史じゃないのか?

 牛を使って畑を耕したり、馬に乗ったり。

 形はどうであれ動物と供に生きてきたのが人間だろ。

 威圧感の中、話しかけるのビビるけど聞いてみよう。


「あの~、それってそんなにダメなことなんですか?」

「ふむ」

「牛や馬や羊を、労働力や食用で利用することもダメだってことですか?」

「そんなことはないな」

「じゃぁ、犬も同じように人と生活してもいいんじゃないかと思うんですけど」

「たしかにな、必要悪というのもあるじゃろう」


 そりゃそうだわな、そうでなけりゃ極論草以外食べれなくなるし。

 

「だったら犬の力を借りて生活してもいいんじゃないでしょうか」


 うむ、我ながら素晴らしいプレゼンではないか。

 反論処理からの、同意を得てか~ら~の~提案! 営業のセオリーだ!


 犬神さんの威圧感は一向に増しているように見えた。

 おかしいな……そんなに嫌われる行動はしてないのに。


「じゃがな小僧」

「はい」

「牛や馬の話をしたが、こんな奴もいる。

 たとえば、エサもろくに与えず、苦役を強いらせて、感謝の心もなく死ぬまで働かせる。

 つまり供に生きるのではなく、奴隷のように道具として扱う輩もおる」

「それは……そうですね」


 何が言いたいんだろう。

 やりすぎる人間もいるのはわかる。動物に発言権は無いからな。


「結論は、人によっては、動物を友や仲間として扱うものもいれば、奴隷や道具として扱う畜生もいるということだ」

「はい」

「何が言いたいかわかるか、小僧」

「僕たちが奴隷として犬を扱うと言いたいんですか?」

「そうだ」

「それは違う」

「違わない。見ればわかる」


 む、むちゃくちゃだ。


「しょ、初対面でなぜわかると言い切れるんですか」

「ふん、年の功だと言っておこう、さてもういいかの」


 犬神さんはリーダーのほうを向いた。


「わしは帰るぞ。シマーよ、付き合う人間を選ばねば、澱み、破滅するぞ」


 そのまま犬神さんは消えていった。


「……バカな」


 威圧感が去り、心を締め付けていた空気がなくなっていく。

 それと同時に俺は無力感を味わうのだった。


――――


 俺たちは宿に戻ることにした。空気は重い。


「ん~、犬神のじじい、普段はあんなに頑なじゃないんだけどなぁ」

「む、むちゃくちゃですよ」

「――クソジジィ」

「ま、まぁ犬のことは忘れたほうがいいんじゃねぇか、へへへ」

「そうね」


 正直俺は納得いかない。

 なんだあれ、初対面で決めつけやがって。

 そりゃ利用したいって気持ちはあるけど、動物をないがしろにしたりしない。

 ちまたではネコブームだけど、俺は完全なイヌ派だ!

 そりゃあ大型犬よりは、チワワとかポメラニアンのほうが好きだけど……

 

 モヤモヤしたまま宿に向かう。

 九番地裏二区から三番地までは遠い。一時間以上かかる道のりは俺の怒りを鎮めるどころかさらに燃焼させた。

 

――――


 宿に戻った時、村長たちに心配された。

 リーダーは色々あったことを上手いこと説明してくれたみたいだ。

 俺は愛想笑いをしつつ、ぶつけ所の無いムカムカをどうすればいいか困った。


 トイレだけ済ませて、恒例となっている設楽さんとの夜の会議を行った。

 最後の王都会議である。


「どうしたの」

「いや、やっぱりムカついて」

「そうね」

「初対面であそこまで決めつけるなんておかしいでしょ」

「……」

「心でも読めるのかよ! エスパーかよ!」

「……」

「くそー、むかつくなー」

「だったら」

「うん」

「もう一回行けば?」

「犬神さんのところ?」

「うん」


 もう一回か。再チャレンジしたい気持ちはある。

 むしろ俺は犬をいじめたりしない!って言い放ってやりたい。


「いき……たいな」

「いけばいいじゃない」

「でももう遅いし」

「明日の朝でいいじゃない」

「見つかるかな」

「シマーさんに頼めば大丈夫でしょ」

「そっか、行くか」

「ええ」


 犬神さんに再チャレンジすることを決めた。

 そして部屋に戻り村長とシマーさんにお願いすることにした。


――――


「なぁ~に~? もう一回犬神に会いたい~?」

「明日は時間無いぞ、馬車で鉄鉱石買ったらすぐ王都を発つ」

「その前の時間……どうしても行きたいんです!」


 わがままを言った。迷惑かけてるのはわかる。

 でも俺の尊厳の問題なんだ。人格を否定されて黙ってられる程、大人じゃない。


「っへ、アカイちゃんが初めて年相応に感じるぜ」

「え?」


 リーダーが服を正し、村長の目を見た。


「アカイちゃん初めてのわがままだ、聞いてやろうぜ村長」

「それは……かまわんがどうする」

「おい、サブゥ!」


 明日の準備をしてたサブさんがこちらに飛んできた。


「はいはい、聞いてましたよ」

「わりいんだけどよ~」

「ええ、鉄鉱石の積み込みは私がやりますよ」

「すまねぇな」

「いえいえ、鉄鉱石が買えるのも彼らのおかげですからね、お安いご用です」


 イケメンサブさんのウインクとオッケーサイン。

 あ~、申し訳ないな~。涙出そうだよ。


「んじゃ、朝一で九番地まで向かうか。宿は知ってるから多分大丈夫だろ。

 村長、すまねぇんだけど、買い物終わったら九番地裏一区の預り所まで来てくれるか?」

「わかった」

「あ、ありがとうございます!」

「んじゃ、さっさと寝ようぜ! ガハハハハ」


明日は小細工なしでぶつかってみよう。勝算なんてないけれど。

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