57話 犬神探しは突然に
1日1ブックマーク増えてます。ありがたいです。
そろそろ王都編も終わりです。
現実世界でも、隠し子って結構いるもんだ。
人は理性だけで生きていないからね。子供は愛の結晶ともいえるけど、想定外の結晶の可能性もある。
しかしまぁ、異世界であっても人間は人間だ。色々ありますよね~。
「ヨドさん、子供いたんだ」
「ヨドさんに口止めされておったからの。ノイマンのことを知っているのは村でも数人しかおらん」
「私も知らなかったわ~」
「やっぱりディーンさんも知らなかったんですか?」
「ええ」
村長は少し照れくさそうにしている。
「ノイマンが村を出たのは、十五年以上前じゃ。ディーンと出会ったのはその後じゃからの」
「なるほど~」
村長の馴れ初めも気になるところだ。湖の町で出会ったんだっけな。
そんでもってノイマンさんの料理が美味いのはヨドさん譲りなんだろうな。
こんなところで村と王都に繋がりがあったのは意外だった。
「ま、いいじゃねぇか。 そろそろ露店に戻ろうぜ」
「そうじゃな。もう少し買うものもあるしの」
聞きたいことはあるけど、やるべきこともやらないといけないからな。
再度露店街に戻ることにした。
――――
「へへ、ちょっと甘いもんでも食いたいな」
「へ?」
リーダーから似合わない発言。
「ど、どうしたんですか? 似合わないですよ」
「ノイマンとこだと食った気がしなくてよ。甘い菓子でも食いたくなっちまったんだよ。
露店街の一角に甘いもの売ってるところあるからよ、行こうぜ」
結構強引に甘い匂いのする一角に向かうことにした。
「そういえば、砂糖ってどうつくってるんだろうね」
「サトウキビか甜菜でしょ」
「テンサイ?」
「砂糖大根よ。詳しくは知らないけど煮詰めて作るんじゃないかしら」
もしくは異世界特有の作り方があるかもしれないな。
シュガードレークとかいたら面白そうだ。
「砂糖大根は結構簡単に栽培できるって話だぜ。値段も安いし」
「へ~」
「むかし犬神のじいさんから砂糖大根もらったことあるしな」
「犬神?」
「あぁ、デカイ犬飼ってるやつがいるって言っただろ」
「乗れるぐらいデカイ犬ってやつですね。犬神っていうんですねぇ~」
ほんわかしながら甘い場所に向かう俺。
突然大きな力で引っ張られる!
て、敵か!? 盗みか!? 違う設楽ちゃんじゃねぇか!
「な、なんだよ、びっくりしたなぁ」
「犬の話何!?」
設楽さんは力強く俺を掴んだ。俺の服を絞った雑巾のようにギュっ掴んでいる。
「ま、前に話したじゃないか」
「知らない! 聞いてない!」
あ~確かに果実酒飲んでフワフワしてた時に話したな。華麗にスルーされた気がする。
「た、確かにお酒飲んでる時に話したかも」
「乗れるの? 荷物は運べるの? 繁殖は? 懐くの? どうなの!?」
「え、ええ~っと」
設楽さんの前髪に隠れた右目の魔眼が光ってますよー!
た、助けてリーダー
「お、おう、おうシタラちゃん。ちゃんと話してやるからアカイちゃん解放してやれ、な」
やっと解放された。
「い、犬神のじじいの話をすればいいんだな」
「はい」
「ええ~っと何から話すかな、へ、へへ」
「乗れるんですか?」
「おう、乗れるぜ。正確には乗ってるのを見たことがある。
デカイからな、俺の身長より少しちいさいぐらいだ」
「人に懐きますか?」
「いや~~、わかんねぇな。難しいんじゃないか。
そもそも飼ってるのが犬神のじじい以外知らねぇしな」
「犬神さんの居場所は?」
「さぁ」
設楽さんの再度魔眼が開きそうになる。
「ま、王都にいたりいなかったりするな。運が良ければ会えるかもな。へへへ」
「探しましょう」
「い、今からかよ? む、難しいぜそりゃ」
「難しいってことは可能なんですね」
「え、あ、まぁ。そりゃ~」
「お願いします」
「しかしな。どうすっかなぁ。う~ん」
「お願いします」
「いないかもしれないぜ」
「お願いします」
すんません、リーダー。うちの子は決めたらやる子なんです。
「わ~ったよ、全力で探してみるか。その代り走るぜ」
「はい!」
お昼のスイーツタイムは、一転して犬神探しになってしまった。
――――
露店街を駆け抜けながら、リーダーは何人かに声をかけた。
「すまねぇ、犬神の居場所しらねぇか?」
「しらねぇ」
「そっかわりいな」
そして次の場所でも同じように聞く。
しかし出てくる答えは、「知らない」、「最近見てない」、「さあな」など手掛かりにもならない答えだった。
ただリーダーはすり抜けるように人ごみを歩いていく。
俺たちは見失わないように走る。
結局、露店街では情報を得られなかった。
「っち、ま、そんなに上手くいかねぇか」
「き、聞く相手選んでましたね」
「ん? ああ、じいさん酒好きだしな。酒屋とある程度商売の規模がでかそうな奴らに聞いただけだ」
「なるほど」
まぁこのデカイ王都で一人を探すなんてのは無茶な話だ。
「んじゃ次行くぜ」
リーダーは底なしの体力で王都を駆け巡った。
七番地二区からスタートし、七番地一区、六番地一区、二区、三区、四区、五区、五番地五区と回った。
人ごみは忍者のようにすり抜け、人通りの少ない場所は軽く走る。
走るとは聞いていたが本当に速い。
俺たちはついていくのがやっとだ。リーダーは移動と聞き込みをやっているのに。
五番地五区まで回って、一番有力な情報は「半年以上前に見たな」って情報だった。
五番地二区の宿に泊まっていたらしい。
次は五区から二区まで走る。もちろん聞き込みを続けながら。
し、しんどい。
二区の宿についたので半年前に泊まっていたらしい「風の宿」の店主に話を聞いてみた。
「店主、すまねぇ。犬神探してんだけど」
「おお、犬神様か。最近見てないね」
「最後に来たのはいつだ?」
「前回の武術大会の時だな」
「そっか……すまねぇ、ほかに探す手がかりはねぇかな?」
「う~む、王都にいらっしゃるかもわからんしなぁ」
また振り出しか。
「もしもこの時期なら裏区にいると思うよ」
「裏か」
「犬神様は裏区のほうが好きだっておっしゃってたしね」
「わーった、すまねぇな!」
裏区ってのはブライトウェイの向かい側。つまり南側だ。
正式には南一区とか言うらしいけど、通称「裏一区」って呼ぶらしいな。
「さって」
「裏区ね」
「おうよ、大丈夫か二人とも」
「は、はい」「うん」
「んじゃ手始めに五番地の裏区まで行くとしますか」
五番地二区から進み、ブライトウェイを渡り、五番地裏一区まで到着した。
裏一区はスラムのような感じかと思えばそんなことなかった。活気がある。
一見北側と何も変わらない感じだ。少しだけ薄暗くなった気がする。
「さって、裏も久々だな」
「表とあまり変わりませんね」
「ガハハ、表は王都にずっと住んでるやつが住みたがるだけさ。
どっかから来たやつらは裏区のほうが好きって声も多いぜ」
「そんなもんですかね」
「んなことより、探すぞ、夕方までに王都にいるかどうかは突き止めたいしな」
「はい!」
五番地の裏一区を進む。
手当たり次第に声をかけるがなかなかヒットしない。
五番地裏四区まで来て一旦止まる。
「さって、どっち行くかな」
裏四区の終点についた。このまままっすぐ行くか、左の四番地に進むか、右の六番地に進むか。
「帰りを意識するなら四番地だよな~」
宿は三番地だからね。
「じゃぁ六番地ね」
「な、なんでだよ」
「だって迷ってるじゃない」
「お、おうよ、左か右かで迷ってる」
「だまって四番地にいけばいいのに、迷ったってことは六番地のほうがいいんでしょ」
しぶ~い顔をするリーダー。
「っま、勘だよ勘。あのじいさんは汚ねぇ飲み屋とかのほうが好きそうだな。
だったら六番地のほうが当たりだと思っただけだ」
「じゃぁ行きましょう」
「へいへい~」
六番地裏四区、裏三区、裏二区、裏一区とすすむ。情報なし。
七番地裏一区、裏二区まで進む。いまだ情報なし。
日は少しづつ傾いていく。焦る俺。
このまま続けてていいのだろうか。
大体そんなデカイ犬を連れてたらもっと目立つと思うんだけどなぁ。
「あ」
「どした? アカイちゃん」
「犬神さんって旅してるんですか?」
「そだな、王都拠点にブラブラしてるらしい」
「王都まではどうやって来てるんでしょうか?」
「そりゃ~犬に乗って……。そうか」
「犬を預けているってことね」
「もしかしたらだけどね」
「なら馬車関係か、預り所だな」
「行ってみましょう」
七番地一区に戻り、馬車や荷物を預かってくれる場所まで向かう。
番をしている青年を見つけたので声をかける。
「すまねぇ、犬神来てねぇか?」
「犬神様ですか? ちょっと待ってください」
青年はバックヤードまで行き確認してくれたようだ。
「西九番地裏一区で犬を預かってるらしいですよ」
「おおお! すまねぇ! 恩に着るぜ!」
「いえいえ」
おおよその場所が判明した! 急いで九番地まで向かう。
もう夕方だ。ここで外せばタイムアウトだろう。
――――
九番地の預り所で犬神の所在を聞いてみると、裏二区で昨日飲んでいたとの情報を得た。
裏二区の飲み屋を片っ端から探す。
「犬神探してんだけど」
「ああ、昨日ここで飲んでたよ」
ビンゴ!
「マジか! い、いまどこにいるかわかるか?」
「さあな~、あの人はブラブラしてるからな、この辺の宿に泊まってるとは思うんだが」
「っち、どうすっかな~。サブでもいれば話はやいんだが」
リーダーは考えている。少し焦っているようだ。
まぁここまで来て会えずじまいは俺も嫌だ。
「おっし、二人はここで待っててくれねぇか」
「え」
「俺が近場の宿をぐるっとしてくるからよ、その間にこの店にきたら入れ違いになるしな」
「わかりました」
「よし」
リーダーは店主の元へ。
「すまねぇんだけどよ、犬神きたらこいつらに知らせてくれねぇか」
「そりゃかまわんが」
「恩に着るぜ、んじゃおめーたちなんか食って待ってろよ」
「わかりました」
「んじゃ行ってくるわ!」
足早にリーダーは街の中へ。
「んじゃ、俺たちは待つとしましょうか」
「そうね」
安い酒と干し肉と乾燥ナッツをもらった。
放置していたピコにご飯上げたかったしね。
「ピイ!」
「ごめんごめん、ほらご飯だよ~」
四時間ぐらい歩きっぱなしだったからクタクタだわ。
犬神さん見つかるといいな~。




