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相談

俺たちは事務所に集まっていた。


あの後、赤﨑さんからのメッセージがあり、『氷室さんについて相談したい』という話を貰った。彼女には授業もあるので、学校が終わってから事務所で集まる事に。



「おはようございます!」


コクウや弦山と共に部屋で待っていると、赤﨑さんと井口さんが入って来た。赤﨑さんは井口さんにも協力を仰いだのだろう。良い判断だと思う。


急いで来たからなのか、普段着ではなく制服のままだ。


「あ、あのっ」


赤﨑さんは慌てた様子で話そうとするのだが、弦山が手早く赤﨑さんにお茶を出し、コクウが個包装されまクッキーを一枚赤﨑さんの膝上に置いた。


「まずは一息入れた方が良い」


『カァカァ』


「う、うん、ありがとっ」


冷静になれたのか、赤﨑さんはお茶をゆっくりと飲んで一息吐き、クッキーを咀嚼した。


「ふぅー……、うん。その、氷室さんなんだけど」


赤﨑さんが俺達を心配そうに見つめて来る。俺と井口さんは赤﨑さんを安心させるように頷く。


「私はあなたのマネージャーよ、あなたの私生活をサポートするのも大事な事だからね」


「俺程度であれば幾らでもこき使ってくれて構わないよ。なぁ、二人共」


「うむ、猫の手はまだ貸し出せるぞ」


『カァ!』


コクウが翼を広げた。赤﨑さんは小さく頷く。


「二人は今朝の事件について知ってるみたいだったけど……氷室さんの持ってる属性も知ってるよね?」


「えぇ。氷室家といえば氷属性を持つ家系である事はネットで調べればすぐに分かる事よね」


赤﨑さんが頷いた。


「氷室さん、学校での皆への態度が悪いというか……周りに壁を作っているみたいで、今の今までクラスメートとすら話す姿を見た事がないの」


「成る程、見た目通りな感じか」


ネットから拾える程度の情報ではあるが、氷室六花さんは冒険者としても類稀な才能を持ちつつ、仕事としてモデルも兼任している、美少女というよりは美女というべき人物。


非常に整った顔立ちは怜悧そうであった。


「それが本性かは分からないんだよね?」


俺が問うと赤﨑さんが小さく頷いた。


赤﨑さんは氷室さんと関わって来たわけではない。友人でも無ければ知り合いですらないのだ。今回の事件、彼女が犯人ではないと信じる事は出来なかった。だが。


「にしては状況証拠が有りすぎる」


「有り過ぎるってどういう事?」


赤﨑さんが首を傾げる。俺はお茶を一杯飲んで口を喉を潤した。


「氷室さんは最近転校して来た、氷を使った殺人、目撃者ゼロ、だが死体は見つかりやすい場所。これだけ揃えられていれば、彼女が犯人なんじゃないかと疑わせるだけの証拠を態と並べて晒しているように俺は見える」


「じゃあ、他に犯人がいるって事なの?」


「それを考えるとね。ただ、氷室さんが人当たりの良いコミュ力が高い性格だったらこうは行かなかったと思う。だから、彼女の性格を把握した上での犯行なんじゃないか?」


「成る程……」


「コミュ力高くて友人が直ぐ出来るタイプで、でも精神性が殺人者、とかなら今回の犯行は分かる。人は身内には弱い。皆友人を疑いたくないっていうのが根底にあるだろうからね。だけど赤﨑さんの話を聞く限り、氷室さんは寧ろコミュ力は無い。だから疑われても仕方ない訳だから、犯人である可能性は低いと思う」


「じゃあ……誰が?」


俺は目を閉じた。


「こんな短期間で彼女の人間性を知った上で罪を擦り付ける……っていうのは不可能だ。赤﨑さんの学校で氷属性を使う人は居ない?」


「うん、私は知らないかな。氷属性を持っているなら学校で有名にならない訳がないからね。隠していれば分からないけど……」


「だろうね。ならやっぱり、彼女が犯人とは思えない。井口さんはどう思います?」


「私も犯人とは思えないわね。犯人が何故今になって犯行に及んだのか、そして犯行を態と分かるように捨て置いたのかは分からないけれど……氷室さんの関係者が犯人、その可能性が高いと思うわ」


井口さんの意見に俺は頷く。


「じゃ、氷室さんが犯人ではない前提で話を進めましょう。私は社長に掛け合ってみるわ」


「俺は特に出来る事はないんですが、思い当たる所を見てみようと思います。コクウは上から頼む」


『カァ!』


「皆、ありがとう。私は学校で聞いてみるね。……でも、何で助けてくれるの?篠枝さんはそもそも関係ないし、井口さんは止めないの?」


井口さん口元に指を当てながら笑みを浮かべた。


「担当の不安を除くために努力するのはマネージャーの勤めだもの、それに、誰かを助けようとする気持ちを持つ人は嫌いじゃないわ。ただ、絶対に無理はしない事。学校でも聞き込み程度で済ませなさい。分かったわね?」


「はい、分かってます」


赤﨑さんは首を縦に振った。そして今度はチラリと俺を見る。


「パートナーが頑張ろうとしてるんだ、自分だけ茶をしばいてるのは趣味じゃない。それにまぁ……」


俺は態とらしくやれやれというようなジェスチャーを取って笑った。


「美人とお近付きになれるかもしれないしね」



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