潰滅の騎士
引き続きのランクインありがとうございます!耳にたこわさかもしれませんが、皆様のお陰です、ありがとうございます!
手を翳し、騎士に重力を掛ける。
だが当然のように動きを止めず、潰滅の騎士は大剣を構えて肉薄してきた。
(ボスクラスに重力効かない奴多過ぎるだろうよ!)
振り抜かれる大剣を後ろに跳んでかわす。
切り裂かれた風が頬に強く当たる感覚。だが俺が特に慌てる事はない。
指先に力を込める。すると俺の両足が淡い光に纏われる。
足に対するエンチャントだ。エンチャントも俺の魔法の一つで、コクウの攻撃にも多用するが、何時もは俺自身に付けている。
「コクウ!」
『カァ!』
大剣を振り被る騎士に対し、俺は逆に攻勢を仕掛ける。
コクウに指先を向けると、コクウが淡い光を纏う。
「『長頸烏喙』」
コクウが宙返りし、凄まじい勢いで振り被られた騎士の大剣へと突撃。大剣を弾かれた騎士は体勢を崩す。
赤﨑さんを助けた技だ。俺のエンチャントとコクウ自身の素早さが合わさり、弾丸の如き速さで突貫する技だ。
(流石に破壊するまでには至らないか)
耐久が高いのか、それともボス故の破壊不可能設定なのか。それは分からないが、今は端に置いておく。
「コクウッ!」
『カァー!』
コクウが騎士の頭上高くまで飛び上がり、俺も騎士から距離を取りつつ、コクウにエンチャントを行う。
「『昏天黒地』」
コクウから黒い羽が地上に降り注ぐ。羽は騎士自体とその周辺に突き刺さり、数秒後、黒い球体となって辺りを包み込んだ。
球体が収まると、そこにあったのは鎧の一部だけが残る騎士と、抉れた玉座の間だった。
騎士は体力が尽きたのか、端から徐々に粒子となって消滅。ドロップ品だけを残していった。
コクウにエンチャントして放つ技、
『昏天黒地』。俺が使う重力魔法に色や形が似ているのだが、性質はまるで違う。
コクウ自体が持つ力を俺がエンチャントする事で威力を増強。放たれた羽はコクウの思考に連動して、空間そのものを抉る。抉られた空間がどこにいったのかは分からないし、確認しようもない。
余りに危険過ぎて使う場面が限られて来るのだが、着弾地点に関しては何とかコクウと訓練してコンパクトにする事は可能になったので、前回は動画映えのためにも使ったのだ。
「お疲れ、コクウ」
『カァカァ』
俺の頭に着地したコクウは、俺を労うように頷いた。騎士が落としたのはコアだけの模様。
「ほれ」
『カァ』
頭上のコクウにコアを食べさせるが、特に変わった様子もなかった。苦笑いしつつ、辺りを確認する。
玉座の間に変わった様子はない。この古城ダンジョンは玉座の間という専用エリアでのボス戦となる。あの潰滅の騎士がこのダンジョン最後のボスとなり、これ以降にエリアはない。
(うーん、ハズレなのか?ここの中ボスから手に入れたんだけどなぁ)
ぽりぽりと頭を掻いて、帰ろうか考えていた所、
——それは急に現れた。
エリアの中央部に強烈な光が発生する。そして光は徐々に扉を形成していった。扉の形は非常に美しく、全体的に真っ白な白をしている。
この古城ダンジョンには全く似合わない程だ。
「……まじか」
この扉は帰還用の物ではない。
古城ダンジョンはエリアの入り口だった扉を開けると自動的に帰還するようになっている。また、俺がクリアして来た今までのダンジョンでも、このような帰還用の扉は見た事がない。
完全なイレギュラーである。
だが何故現れたのかは大体予想が付くし、そのために来たのだ。
「……ここからは完全に未知の領域だ、お前が居るだけマシだな、コクウ」
『カァカァ』
ペシペシと翼で俺の頭を叩くコクウ。俺に任せろとでも言っているようで、微塵も緊張した様子はない。何時もながら頼りになる兄弟で相棒な奴に苦笑しつつ、俺は意を決して扉に触れる。
扉はゆっくりと開く。奥には何も見えず、ただ白い世界が広がっている。息を吐き、俺たちは足を踏み入れた。その途端——
——世界が、反転した




