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三十七話 灼熱焦土の神器

※書籍に関する情報をあとがきにて載せています。ぜひご覧ください!

『…………』


 現れた炎の巨人は、ミラエラをじっと見ていた。


 ミラエラは頬に一雫の汗を垂らす。


「まさか……神器、『憤怒の剣レーヴァテイン』の所持者だったなんてね。うふふ……驚いたわ」

「憤怒の……剣……?」


 エレシュリーゼは、意図せず顕現させた神器――灼熱を纏う剣に目を落とす。


 今、エレシュリーゼが分かっていることは、どうやら自分が手にしている剣が神器であるということのみだ。


 恐らく、剣と共に現れた炎の巨人も神器に関連するなにかであることは想像できる。ただ、どう関連しているかは全く分からない。


「と、とにかく……なんにせよ、まだわたくしは……戦える!」


 レーヴァテインを手にしてから、エレシュリーゼの体に力が漲っていた。


 彼女の体は、灼熱のオーラに覆われており、周囲に炎が纏わり付いている。


「行きますわよ!」

「くっ……!?」


 エレシュリーゼが真正面からミラエラの間合いへ飛び込む。


 影を操り迎撃したミラエラだったが……影はエレシュリーゼに触れると同時に、灼熱の業火に焼かれて焼失。エレシュリーゼが通った後は焦土と化し、ミラエラは堪らず後退する。


「逃がしませんわ!」

「調子に乗らないで欲しいわね!」


 強気に攻めるエレシュリーゼに待ったをかけようと、ミラエラが反撃に出る。


 再び影を使ってエレシュリーゼを襲うが、彼女の周囲を取り巻く灼熱が影を焼失させてしまう。


「そんな……! すべて喰らう暴食の影が……あっさりと……!?」


 ミラエラが驚愕している隙に、懐へ飛び込んだエレシュリーゼレーヴァテインでその胴を薙ぎ払う。


「はあ!!」

「ひぎいいい!?」


 剣で斬られる……というよりも焼き千切られる痛みに、ミラエラが悲鳴を上げた。


 辛うじて胴を真っ二つにされることは避けられたが、腹部に大きな裂傷が出来ていた。その傷跡には灼熱が纏い、彼女の体を内側からじわじわと焦がす。


「い、いたいっ……痛いいいい……!!」

「それが……あなたが弄んできた命の痛みですわ!」


 エレシュリーゼは激情に駆られるままに、ミラエラに攻撃を加える。


 卑劣で外道で……絶対に許してはならない悪であるという憤怒。


 それがエレシュリーゼに力を与える。


 一方的にエレシュリーゼが攻め続け、ミラエラの皮膚は全身焼け爛れてしまい、先ほどまでの美しさはすっかり消えていた。


「このっ……調子に乗るなっつてんだろがあああああああ!!」


 ミラエラはなりふり構っていられなくなり、全身から影を放出――影は膨張し、辺り一帯を纏めて喰らおうと巨大な口を開く。


 さすがに、これほど膨大な量の影を一度に焼失させることは難しい――今のままでは。


 エレシュリーゼは息を吸い込むと、


「スルト!」


 と、炎の巨人に呼びかける。


 巨人はエレシュリーゼの呼びかけに応えて動き出す。


『やっと俺様の出番かあああ!!』


 炎の巨人――スルトは、待ってましたと言わんばかりに走り出し、大口を開ける影の上顎と下顎を閉じて、脇に挟み込む。


 エレシュリーゼは頭の中に流れ込む神器の使い方から、炎の巨人スルトについての知識を得ていた。


 スルトの使い方は――。


「スルト! 喰らいなさい!」

『了解したあああ!』


 スルトはエレシュリーゼの命令に従い、影に灼熱の牙を立てる。


 ぐちゃりぐちゃりと音を立て、影がスルトの腹の中へと入っていく。


 炎の巨人スルトの体は、灼熱焦土のムスペルヘイムへと通じている。スルトの体内に取り込まれたものは、灼熱の世界という檻に囚われることとなる。


 ミラエラの影はスルトに捕食され、その本体はというと……姿を消していた。


「くっ……逃がしましたわ……!」

『さっき、時間だからまた今度っつって消えてったぜ?』

「な……気づいていたならなぜ追わなかったんですの!?」

『いや、俺様に下されてた命令は影を食うことだったからなあ』

「くっ……!」


 エレシュリーゼは爪を噛んだ。

 大敵を逃がしてしまったという憤怒が、彼女の中に渦巻き、周囲を取り囲む灼熱のオーラが一層強くなる。


 それを見たスルトが、


『おおっと、我が主人さんよお。それ以上、怒りを覚えたら大変なことになるぜえ?』

「うるさい! 元はと言えば、あなたがミラエラを殺しておけば……!」


 憤怒の剣レーヴァテインは、所持者の憤怒を力に変換する。所持者が怒りに身を任せるほどに、その力が増す。


 そして、レーヴァテインは所持者の怒りを増幅させることで、さらにその力を増す特性を持つ。


 今、エレシュリーゼはレーヴァテインによって怒りが増幅させられている……。


『神器使いになりたての奴ってのは、大体感情のコントロールが上手くいかねえってもんだが……こりゃあ力が暴走してやがるなあ』


 スルトの言う通り、エレシュリーゼの力が暴走していた。


 今のエレシュリーゼは……冷静さを欠いている。もはやスルトの声も届いていていない。


 エレシュリーゼが纏う灼熱は周囲に広がり、一帯が焦土と化す。


 焦土は徐々に徐々に、階層全域へと広がり続ける。




お久しぶりです!


今回は、『物理的に最底辺だけど攫われたヒロインのために、最強になってみた』の書籍情報をお届けします!


まずは、早速書籍の詳細情報です!


【新刊情報】7月30日発売

UG019

物理的に最底辺だけど攫われたヒロインを助ける為に、最強になってみた

著:青春詭弁 イラスト:Ruki

定価:本体1200円+税

ISBN 978-4-8155-6019-5


下層は上層に虐げられるのが世界の理……

階層が全ての世界で最下層から成り上がる!!


ということで、発売日は今月末に決定でございます!


ツイッターの方では、イラストの方も掲載していますので、よろしければぜひフォローしてください!(ゲス顔)※ツイッターIDは最後の方に記載します!


さらには、7月30日の発売を記念して、発売記念SSを執筆します!


可能であれば、読者の皆様への感謝の記しに、僕のポケットマネーから特別なプレゼントをご用意いたします!


いや、本当にできたら絶対にやりたい!


やはり、著作『物理的に最底辺だけど攫われたヒロインを助けるために、最強になってみた』がこうして書籍化に至れたのも、多くの読者の皆様の支えがあってこそだと考えるわけで……。


そんな読者の皆様のためにも、可能であれば……!


発売記念SS+特別イラ……確約はできないので、明記はしません。(笑)


というわけで、書籍詳細情報でした!


あ、ちなみに4冊だけサイン本を抽選でプレゼントしちゃうキャンペーンやるんですけど、いかがですか?


ですか!?(謎の圧)


Twitter:@oneday_8013


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