五話 最強剣士、腹をくくる
「と、とにかく……あれだ! みんなの案をくれ!」
「他力本願ですわね……まあ、いいですけれど」
「うーん……案って言われても……」
エレシュリーゼとモニカは考える素振りを見せる。ラッセルは呆れながらも考えてくれるようで、天井を仰いでいる。
頼りになる仲間達だなと、しみじみ思いながら三人が口を開くのを待つ。
「プレゼント……無難なところでしたら、お揃いのなにかとからいかがでしょうか? マグカップや、服とか。色々ありますわよ?」
「髪留めとかはどうかな? レシアさん、髪長いし……」
お揃いのものと髪留めか……。
「俺は……そうだな。指輪はどうだ?」
「ゆ、指輪かあ……そういうのは、なんかこう……早くね?」
「貴様が遅すぎるわけだが」
「……付き合って半年だぜ?」
「半年も、なにもないというのは遅いぞ?」
女性陣に目を向けると、大きく頷いている。
俺はゆっくりと目をそらした。
「まあ、ほれ。俺達には、俺達のペースがあるからな。うん」
「はあ……情けない。誕生日プレゼントにキスでもなんでも、レシア殿の望むことでもしてあげたらどうなのだ?」
「きしゅは……ちょっと……」
顔が熱くなるのが分かる。
いやいや、そんな恥ずかしいこと……まさか自分からできるわけがない!
「うーん……。でも、オルトくんって普段、レシアさんに愛情表現してないでしょ? そういうのって、日頃からしてないと拗れちゃうよ?」
「いや、まあ、そこはほら! 言葉がなくても伝わる的な?」
「そんな超能力者でもないのですから。言葉で好意を伝えるのは……大事ですのよ? ……うっ、なんというブーメラン……!」
エレシュリーゼが頭を抑えてなにか言っているが、気にしている余裕はない。
好意か……好意ねえ……。
「まあ……考えておく……。とりあえず、プレゼントは後々考えるとして、サプライズパーティーは協力してくれんだよな?」
問題を先送りして尋ねると、三人とも頷いた。
「うん。それはもちろん! 最高の誕生日しようね……!」
「ええ、わたくしもできる限りのお手伝いをさせていただきますわ!」
「はっはっはっ! 全力で協力するとも!」
サプライズパーティーに関しては、三人から協力を仰ぐことができた。
あとはプレゼントか……。
お揃いのもの、髪留め、指輪。
お揃い――つまり、ペアルックは気恥ずかしい。
髪留めは、俺のセンスならレシアに気に入ってもらえる品は選べる……はず! 我ながら美的センスには自信がある。
指輪は……うん。ないな。無理。
そうと決まれば、俺はすぐに行動を開始した。
レシアの誕生日まで時間がないわけではないが、早めに用意するに越したことはない。
「さて髪留めは……っと」
下町のアクセサリーショップに足を運び、品物をゆっくりと、一つずつ見ていく。あれも違う、これも違うと思いながら、じっくりと良いものを探す。
レシアの金髪に合わせるなら何色だ? 形は? なにか装飾があった方がいいか?
それらを総合的に見る。そして、満足のいくものが見つからなければ、次の店へと移って探す。それを三回繰り返した。
「中々、見つからねえな……」
こういう時、妥協できない自分の性格が恨めしい。
少し良いなと思っても、さらに上を探してしまう。ここまで来たら、自分で作った方が早いわけだが……やっぱり、重くないだろうか。
手作りの髪留めを貰ったら、引かないだろうか?
「……やっぱ、無難にいくのが一番だよな」
なにも奇をてらう必要はない。
何事も無難。そう無難に――。
「…………」
本当にそれでいいのだろうか?
「八年かけて、再会して初めての誕生日を祝おうってのに……保守的になっても仕方ねえよな」
どうせなら派手で、一生の思い出に残る――そんな誕生日パーティーにしたいと思うのは、きっと俺のエゴだ。
だけど……無難にやり過ごすことなんてできない。誕生日は、一年が経つごとにやってくるけれど、その年の誕生日は一日しかないのだ。
なら、絶対に無駄にはできない。そうだろう?
「よ、よし……お、漢オルト! そうと決まりゃあ腹をくくれよ……」
俺はその足で、宝石店へと向かった。
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やる気……出ます!




