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三話 レシアの誕生日



「「かんぱ〜い!」」


 第299階層を突破した俺達は、転移魔法で第100階層まで帰ってきていた。

 勇者になってかれこれ半年が経過し、階層の攻略は順調も順調。国王から褒美に何が欲しいか聞かれ、俺達は先日シェアハウスを第100階層に購入した。

 シェアハウスは貴族の屋敷並みに大きい。とはいえ、エレシュリーゼからすれば大したことないとのこと。貴族ってすげえ。

 そんなこんなで、第299階層を突破した記念に、シェアハウスで酒や料理を並べ、俺達は騒いでいた。


「そういえば……そろそろ人類生活圏の拡張をしようという動きがあるそうですわ」


 大分、酒が進み――いくらか全員の頬に赤みが差した頃。グラスを両手に持ったエレシュリーゼが、そんなことを口にした。


「階層の拡張ですか……どのように行われるのですか?」

「さあ……? わたくしも詳しくは知りませんわ。ただ、王家が先頭に立って開拓を進めると聞きましたので」

「なるほど……。でも、こうして私達の頑張りが目に見えるようになると、少し嬉しいです……」


 レシアはくすぐったそうな笑みを浮かべる。控えめに言って可愛い。


「はっはっはっ! とはいえ、まだまだ第299階層! 先は長い!」

「そうですわね……。ただ、半年でこれだけ進んだのですし、そう遠くない未来かもしれませんわ。第1000階層」


 それはどうだろうか。

 俺は酒を飲み干し、ふわふわとする頭の中で考える。

 ここまでは確かに順調だった。このパーティーは、他の勇者パーティーから見ても、とにかく特出している。

 単騎能力が高く魔人と互角以上に戦えるレシア。

 広域制圧力に長け、パーティーの火力を支えるエレシュリーゼ。

 戦闘力は高くないがサポート能力が群を抜いているモニカ。

 そして、近中距離で無類の強さを誇るラッセル。

 欠点らしい欠点は、ほぼ皆無だ。

 だからと言って、調子に乗れるわけではない。上に登るほど、敵は強くなるのだから。


「はっはっはっ! そろそろ、俺が買った火酒を開けようと思う!」

「火ならわたくしが飲まない道理はありませんわね!」

「あ……私もいただきます」


 ラッセルが肩に担いだ火酒の入った樽を、三人が変わりがわり飲む。アルコール濃度の高い酒を、かなり早いペースで飲んでいたからか――三人はすぐに酔い潰れ、床の上で寝ている。


「酒、弱いくせに飲むからだよ……ったく」


 俺はレシアを抱き起こし、とりあえずソファに寝かせる。

 今度はエレシュリーゼを運ぼうとすると、モニカがエレシュリーゼの介抱をしていた。


「……モニカは、あんまし酔ってねえのな」

「うん。私、アルコールとか、毒とか……そういうの効かない体質だから……。そういう、オルトくんだって余裕そうだね?」

「最初の一杯以外、大して飲んでなかっただけだ。誰かが素面じゃなけりゃあ、誰も介抱できねえだろ?」

「私がいるよ?」

「じゃあ、次はそうさせてもらうかね」


 肩を竦めて言うと、モニカは苦笑を浮かべた。

 エレシュリーゼを寝床に寝かせた後……後片付けをしながら、モニカに尋ねた。


「そういえば、モニカって勇者の報酬……全部仕送りしてるんだっけか? 日用品とか大丈夫なのかよ?」

「え? う、うん。自分で使う分は残してるから……。あ、そうだ。私、今度実家に帰ろうと思うんどけど……お休み取っても大丈夫かな……?」

「まあ、別に構わねえけど。いや、そうか……丁度いいな」

「え?」


 俺の言葉にモニカが疑問符を浮かべた。


「いや、実はだな……もうすぐレシアの誕生日なんだよ」

「へえーそうなんだ? なにかプレゼントでも用意するの?」

「サプライズを考えてるんだが――」


 正直、なにも思い浮かんでいなかった。

 というか、ここのところとにかく迷宮の攻略をしていて時間がなかった。


「いっそ、長期休暇でも取ってみっか……。それくらいなら、許してくれんだろ。多分」

「適当だね……」


 俺は肩を竦めた。


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やる気……出ます!

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