三十話 最強剣士、刃を抜く
前話について、みな様に誤解を与えてしまったので修正を行いました。
レシアが寝取れた説は完全な誤解です。私の描写ミスですね。秒で修正しましたので、ご安心下さい。レシアはしょ――――げふんげふん。レシアさんは純潔です。
以上。この度は大変お騒がせ致しました。
レシアは衝撃によるものか、その場に座り込む。
その隣で、レシアを心配して声を掛けようとするエレシュリーゼに、
「悪い。エレシュリーゼには事後処理を頼むわ」
「え、ええ……ですが……」
「レシア……俺に任せちゃくれねえか?」
ここで男を見せなくては、態々ここまで登ってきた意味が無くなってしまう。
それを知ってか知らずか、エレシュリーゼはコクリと頷き、この場を後にする。
俺はそれを見届けた後、レシアの隣に座った。
「何をしているのですか……」
「俺が何をしようたって、てめえには関係ねえだろうが。つーか、声……震えてんぞ」
表情は窺えないが、涙声になっている。
「……そんな事ありません。変な事……言わないで下さい」
「はっ……見栄張ってんじゃねえよ」
「み、見栄なんて……張っていません!」
俯きながらも良く通る声でレシアが声を荒げた。
俺はそんなレシアを尻目に捉える。
暫く、黙っていると……レシアがその沈黙を破る。
「……馬鹿な女だと思いますか。婚約者が魔人だなんて」
「誰も分からなかったんだ。気にする事ねえだろ」
「そんな事できませんよ……。キュスターに連れられて、私は勇者として教育を施されました……」
レシアはこの8年間の事を掻い摘んでだが、口から零す。
「私は……その時から、キュスターと結婚する様に、ずっと……ずっとずっと言われていたのです。私がキュスターの言う事を聞いている限り、第1階層のみんなの生活は……保証すると……! だけど嘘だった!」
「……どういう事だ?」
確かに、キュスターは魔人だ。
しかし、口約束とは言え、それが反故にされたかどうかは分からない。
レシアはゆっくりと口にする。
「オルトが……来たから」
「なに……?」
「……私は、みんなが元気にしているかどうか……ずっと聞いていたのです。オルトも、お母さんも……みんな元気だって……言っていたのに、オルトが来た。それで、私はキュスターが嘘を言っていると確信したのです」
「なら、さっさと逃げりゃあ良かったじゃねえか」
「私が逃げ出したら、今度はどうなるか分からないじゃないですか。下手をすれば、みんな殺されていたかもしれません……」
だから、レシアはキュスターの言う通りにしていた。
全ては俺達、第1階層のみんなを守る為に。
「でも、嘘だった! 全部! これじゃあ、あたし……なんで頑張ってたのか……分からないっ。政略結婚で王家との繋がりを持って、あたしが権力を持ったら……キュスターなんかに負けない権力を得て、あたしがみんなを守ろうと思って、結婚……嫌だったけど我慢してたのに……! 全部無駄だったよお……!」
レシアは自分が思っていた事、今まで感じていた苦痛をそのまま口にしている様だった。とうとう、そのまま泣き出してしまい、「うわーん!」と大声で泣いている。
俺は口をあんぐり開けて、慌てふためく。
「ちょ……な、泣く事無いだろう!? ほ、ほら! へ、変な顔〜……」
「うわーん!」
死にたい……!
俺は気を取り直し、とにかくどうやって慰めればいいものか思案する。
しかし、あれだな……こいつもこの8年間、頑張ってたんだな。
それに、結婚……嫌だったのか。良かった……。って、安心してる場合じゃないだろ、俺。
俺は頭を振る。
「ええいっ……! しゃんとしろ!」
「いたっ……!」
俺はレシアの頭にチョップする。
レシアは頭を抑え、俺を見上げた。
「ったく、餓鬼じゃああるめえし。ピーピー泣いてんじゃあねえよ」
「ひっく…………オルト、痛いよ……」
「いや、そんなに強くやってないだろうがよ……」
思わず心配になるが、本当は大して痛くなかった様だ。
レシアは袖で目元を拭い去る。
「…………み、見苦しい所を見せました」
「切り替えはええ」
「……いえ、その……私は偉くなって、この世界を丸ごと変えたいと……思っているのです。その為の知識と経験は積みました。キュスターが魔人で、予定が狂いましたが……。私は、みんなの為にまだ頑張りたいのです。だから、こんな所で立ち止まっている暇は……ありません」
そうか……レシアは自分の意志で勇者になろうとしていたのか。キュスター云々は関係なく。力を得て、世界ってのを変える為に……。
「いや、俺みてえな奴とはちげえな……」
「……? 何か言いましたか……?」
レシアは恥ずかしがる様な表情で尋ねる。
俺は首を横に振った。
「いんや、なんでも……。やっぱり、俺はてめえの事が好きだなって、思ってよ」
「――――え」
「あ」
あれ、今なんて言った?
俺は言い訳する為に、慌てて口を開こうと――。
「お楽しみの所悪いけど……それは私の所有物なんだよねえ?」
ブックマーク、ポイント評価をして頂けると幸いです。




