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【電書化記念SS】公爵令嬢ディアレイン・ベスターのモーニングルーティン

NolaブックスBloom様から「婚約破棄されましたが、泣き寝入りはいたしません!〜悪役令嬢は身勝手な元婚約者に囚われた聖女を救出することにしました〜」と改題し、電子書籍化が決定しました!2026年2月7日より配信開始です。


※本編開始前、聖女ハヅキがやって来る前の時系列の番外編です。


 ディアレイン・ベスター公爵令嬢の朝は、一杯の白湯からはじまる。


 アデリア王国第一王子ローハルト・デ・アデリアの婚約者でもある彼女は、学園の女子寮で暮らしているため、様々な飲料を口にする。侍女が淹れる薫り高い紅茶に、寮の食堂で供される素朴な味わいのハーブティー。放課後には同じ学び舎で切磋琢磨する令嬢たちとお茶会に興じることも多く、この国では珍しい緑茶やコーヒーといったものをいただく機会も多々あるのだという。


「だからこそ、一日の始まりには敢えてただの白湯を。皆さんからお出しいただくものを心置きなく楽しみたいので、あまり胃に負担を掛けたくありませんから」


 次に彼女は、寝衣から動きやすい部屋着に着替えて、室内でこなせる簡単な体操に精を出す。


 体力づくりのため、体型維持のためなど様々な理由はあるが、一言で表すと『未来の王子妃に相応しい自分で在り続けるため』だ。歴代の王子妃、ひいては王妃たちもこうしてたゆまぬ努力と研鑽を重ね、その地位に恥じない姿を人々に見せていたのだろう、と語る。


「歴代の王妃様で意識している方は、ですか?そうですね、それはやはり現王妃のフェミナ様です。グラッツェン公爵家ご出身のフェミナ様は、南部出身の方特有のおおらかさがおありといいますか。常に微笑を絶やすことなく、私のことも実の娘のように可愛がってくださいます。早く本当の義親子の関係になりたいものですわ」


 体操を終えると、身支度を整えて食堂へ向かう。襟元に繊細なレースが施された純白のブラウスに、膝下丈のスカートというシンプルなこの制服を、彼女とても気に入っているという。


「10代特有の、少女から大人の女性になるまでのほんの僅かな期間しか着用が許されない、特別なものですもの。皆さんの清楚さ、無垢さ、純朴さの全てを引き立てる素晴らしいこのデザイン……まさに神の一着です。えぇ、とても気に入っておりますの」


 侍女を伴い食堂に向かう道すがら、大勢の女生徒から挨拶を受ける。これもまた、彼女にとっては日常の一幕だ。


「ディアレイン様、おはようございます!」


「メリアさん、おはようございます。今朝はクレールさんとご一緒ではないのかしら?」


「あの子ってば、昨夜遅くまで恋愛小説にのめり込んでいて、今朝はいつもの時間に起きてこなかったのですよ」


「あらまぁ」


「ちょ、ちょっとメリアってば!ディアレイン様にバラしちゃうなんて……!」


「わ、クレール!よく間に合ったねぇ」


「ふふ、ルームメイトが居るって素敵ね。羨ましいわ」


「ディ、ディアレイン様、お見苦しいところを……申し訳ございません」


「見苦しいだなんて、とんでもないわ。好きなことに夢中になれるのは素敵なことよ。だけど、睡眠不足でクレールさんが体調を崩してしまったらと思うと……心配だわ」


「ほっ、ほどほどにして!夜は!ちゃんと寝ます……!」


 公爵令嬢で王子の婚約者という立場の彼女は、寮でも数少ない一人部屋を割り当てられている。そのため、こうして寮生たちと交流できる時間を殊の外大事にしているのだ。いずれこの国の貴族女性の頂点に立つ者として、相応しい振る舞いだと言えよう。


「皆さん本当にお可愛らしくて……ここは本当に、素晴らしい場所ですわ」


 怜悧な美貌で知られる彼女だが、微笑む姿は慈愛に満ち溢れており、さながら女神のようだ。


 ◇◇◇


「まぁ、女神だなんて。カレンデュラお義姉様を差し置いてそんな……」


「お嬢様、気にされるところはそこでいいんですか?」


「ミリア?他に何かあるかしら?」


「……いえ、お嬢様がいいならそれで」



【特集!王家に連なる女性たち】



 ミリアが仕える主人ことディアレインが手にしている冊子の表紙には、大きくそう書かれている。女子寮の談話室で配られているその冊子は、いずれ記者や作家になることを夢見る女生徒たちが有志で作り上げたものだ。


「それにしても、ハンナさんに『インタビューさせてください!わたしたち、ディアレイン様のことをもっともっと知りたいのですっ!』と迫られたときは、胸が高鳴ったわ……!あぁ、目を閉じれば今でも鮮明に思い出せる、緊張のあまり小さく震える愛らしい彼女の姿を!」


 学園に在学中の生徒は、身分に関係なく皆平等というのがこの王立学園の理念ではあるけど、実際はそうもいかない。いつの時代も身分を振りかざす愚かな貴族はいるし、未成熟な子供たちなら尚更だ。


 だけど、ディアレインの存在が真の意味での平等を、この女子寮にもたらしている。


 程度の差はあれど、ここで暮らす女生徒たちは例外なくディアレインを慕っているし、敬愛するディアレインの意向に従い、身分に関係なく切磋琢磨し合っている。共通の話題があれば人は仲良くなれるというものだ。


「よく出来た内容だとは思いますが、お嬢様一人にページを割き過ぎですね。モーニングルーティンだけで何文字あるんです?」


「そうなのよ。私としては、フェミナ様やカレンデュラ様はもちろんのこと、北の離宮でお過ごしになられている王太后様のことをもっと読みたいわ。二度お会いしたことがあるけど、お年を召しても欠片も曇ることのない内側からあふれるような煌めきにすっかり虜になってしまったのよね……あぁ、次はいつお目通りが叶うかしら」


 今日も主人は、全力で女性への愛を語っている。絶好調で何よりだ。


「ほら、お嬢様。そろそろ食堂に向かいますよ」


「そうね。ふふっ、今朝はどなたが最初の挨拶にいらしてくださるかしら?アイラさんか、クララベルさんかしら。それとも――」


「まぁ、お嬢様がお幸せそうで何よりです」


 婚約者と共に過ごす時間よりよほど楽しそうなことは、些か問題かもしれない。だけど、ミリアにとっては目の前の主人の笑顔が何よりも大事なものなので、その思いはそっと胸に秘めておくことにする。

電子書籍版では大幅な加筆修正を行いましたが、女の子大好き恋愛感情マイナスなディアレインはそのままです。WEB版をお楽しみくださった方にも改めて楽しんでいただける一冊になりましたので、お気に入りのストア様でぜひ!

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更新ありがとうございます。この作品が好きで毎日のように読んでます。
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