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日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました  作者: トール


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9.世界初のインターナショナルスクール






学校を創る計画は順調どころか、どんどん大事になっていっている。


最初は王都に創る予定だった学校は、お祖父様の一言でクラウス公爵領に変更となり、()()()国際(インターナショナル)学校(スクール)を創るならば、その周辺を学園都市にすれば良いと大規模な都市計画に変更されたのだ。


そう、インターナショナルスクールは、世界初だった。


てっきりこの国初だと思っていたが、他国でもそんな学校はないのだと、執事長が教えてくれた。


予期せぬ出来事の嵐に、私のノミの心臓が潰れそうだ。もしかしたらすでに潰れて死んでるんじゃなかろうか。


「ここはあの世か、そうじゃないなら夢なのよ」


「お嬢様、後3ヶ月もすれば、街もいよいよ着工ですね」


と、私付きの侍女はニコニコしながら言う。


大人達によって、たった数週間で計画案がまとめられ、国の認可をもぎ取ってから僅か1ヶ月足らずで人手が集まり、さらに半月後には学校の着工が始まった。


建物はクラウス公爵家の領地にあった古城を利用し、有り余るお金とクラウス公爵家の技術力を凝縮した最先端魔道具でもって、あっという間に内装、設備を一新。

音声も録音できる、ハイテク防犯カメラをいたる所に設置した。何かあればすぐさま警備員がかけつける仕様だ。これで陰湿なイジメなどもなくなるだろう。

無論外部からの侵入者などにも対応済みだ。SEC○Mも驚きの防犯システムを構築した我が校のセキュリティに勝るものは、世界中どこを探しても無いだろう。


そして、後3ヶ月もすれば街を学園都市化する為の工事が始まるという。


こんな事、夢でないはずがない。


「大旦那様は人生の集大成だと張り切っておられ、旦那様も愛娘のお願いだと生き生きしておられます。仕事を求めて、他領からも人が流入し、クラウス公爵領は未だかつてない好景気に沸いているそうです。これも全て、お嬢様が考案された計画が素晴らしいからですわ!」

「いいえ。これはお祖父様やお父様が、わたくしの拙い提案を昇華して下さったおかげです。最先端研究所の新設と、研究者の大規模な支援の見返りに学校の教授へ招致するなど、考えも及びませんでした。きっとこれから、クラウス公爵領はこの国を牽引していく事となるのでしょう」


本当に、学校一つだけ創るつもりだったのにね……。


「お嬢様っ なんと謙虚なのでしょう! 尊い……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そうこうしている内に1年が過ぎ、学園都市は未完成なものの、学校と研究施設はほぼ完成したとのことで、14歳となった私は、王都の女子校からクラウス公爵領にある自身で創設した学園へ移る事となったのだ。



「自分で自分の首を絞めることになるとは……っ」


この時になって、私は自分の首を絞め上げている事に気付いた。


クラウス公爵領に移るという事は、王都にいるルドルフ君と離れ離れになるという事だ。


「嫌よ! ただでさえ学校が別になってから会える時間が減ったのに、今度はいつ会えるか分からないだなんて!!」


神よっ あの可愛いルドルフ君の思春期を見守れないというのか!! ジーザス!!


「お嬢様、ルドルフ・スレイン様がいらっしゃいました」

「なんですって!?」


ノック音の後の言葉に、バッと立ち上がり、鏡の前で身だしなみを整える。

洗練された高級な洋服に、違和感満載の平凡顔が映るが、これでも一応美少女(笑)である。泣けてくるが、おかしな所はないなとチェックし終わり、ルドルフ君の元へ急いだのだ。



「ルドルフ様!」

「ユーリ、」


気品しかない完璧な所作で、テラス席に準備されたお茶を飲んでいる姿は、まさに至宝である。


「そんなに慌てなくても大丈夫だ」


はしたなくも、競歩選手のごとく速歩きで来た私の手を取り、席にスマートに誘導してくれるルドルフ君は、王子様のようだ。


「ルドルフ様、急にどうされたのですか? 何かあったのでしょうか??」


いつもとは違う急な訪問に、何かあったのかと内心ドキドキする。

するとルドルフ君は近くにいた従者に目配せし、綺麗な花束を受け取った。


「急な訪問ですまない。その、学校帰りにユーリに似合いそうな花をみつけて……、う、受け取ってもらえないだろうか……」


ルドルフくぅぅぅん!!!!


貴方、王子様ですか!! 飼い主に貢ぐ犬王子ですか!!


「嬉しいですわ……っ もう、もうっ 大好きです!」


花の贈り物に気持ちが爆発し、つい抱きついてしまった。


「っユーリ……」


華奢だと思っていたルドルフ君は、私を軽々と抱きとめ、ぎゅっと抱き返してくれたのだ。


なんだか逞しくなってる……もう14歳だもんね。


「━━━……本当は、ユーリがクラウス公爵領に帰ると聞いて……会いたくて来たんだ」


暫く抱き合っていたが、ルドルフ君は私をそっと降ろすと、花束は口実だったのだと語りだした。


ちょっと、可愛すぎるんですけど!


「勿論、この花がユーリに似合うと思ったのは本当だ。けど、ユーリが領地に帰って離れ離れになったら……僕の事を忘れてしまうんじゃないかって不安で……っ」

「忘れるはずございませんわっ 本当は、わたくしだってルドルフ様と離れたくないのです! でもルドルフ様は王都の学校に通うのでしょう」


ルドルフ君は、将来私の婿としてクラウス公爵を継ぐ為、後継者教育を私のお父様から受けているのだ。

お父様は仕事の関係で王都から離れられないから、そのせいでルドルフ君も王都から離れられない。


「僕は、ユーリに釣り合う男になるって決めてるから」

「嬉しいですが、寂しいです」

「僕もだ……」

「長期休みに入りましたら、会いに参りますわ」

「僕も、出来るだけ会いに行くから……忘れないでくれ」

「ルドルフ様も、わたくしを忘れないでくださいまし」



こうして、私達は遠距離恋愛になってしまったのだ。



乙女ゲーム“貴方色に染められて”がスタートするまで、後2年。







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