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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第三章「ルナリアの故郷」

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第九十九話


「――あなたは!!」

 近づいてくるその男を見たハルは驚きのあまり、戦闘態勢を解除してしまう。


「っ、ハ、ハルさん!」

 それを見たルナリアが慌てて声をかける。助けが来たといっても、決して油断をしていい状態ではなかった。


 しかし、ハルはベヒーモスが目の前にいることも、戦闘中であることも意識から抜け落ちていた。

 ルナリアの声も普段なら聞き逃すことのない彼だったが、今は一切耳に入っていないようだ。


「はっはっは、相変わらずだね! でも、俺が来たからといって、気を抜くのは早いぞ!」

 大声を上げて笑った男はそう言いながら悠然と歩いて、ハルのもとへと近づく。


「な、なんであなたが!?」

「あれだ、幼体黒鉄竜狩りをしていたところに、血相を変えて助けを呼ぶ冒険者が来たんだ。聞けばベヒーモスがいるという話じゃないか。それなら俺の出番だろということで、参上したんだ」

 白く眩しい歯をむき出しにした笑顔でハルに話しかける人物。

 どんと叩かれた胸板に覗く鍛えられた筋肉質な身体は彼のこれまでの経験を物語っている。


 彼に向かってベヒーモスの拳が振り下ろされるが、彼は右手で簡単にその拳を受け止める。


「ったく……おいおい、人が話をしているというのに、それは無粋じゃないか? なあ」

 それまでの明るい雰囲気を霧散させた男性がベヒーモスに視線を向けてひと睨みすると、魔物はたじろぐように急いで手を引っ込めて、数歩下がった。


「これでゆっくり話せるね。――それで、君は冒険者になれたのかい?」

「う、うん、でもその、今はそれどころじゃ……」

 人の所業ではない素手でベヒーモスの攻撃を受け止めるということをやってのけた彼に対して、ハルはなんといっていいものか言葉に困っていた。自身の知る彼ならばこれくらいやってのけるのはわかっていたが、突然の再会に驚き戸惑うばかりだ。


「……おもいだした! あなたはたしか、世界で唯一のSSSランク冒険者の……えっと、名前はなんだっけ?」

 ぽんと手を叩いたエリッサはどこかで彼の顔を見たことがあった。


「あぁ、知っている人がいたんだ。俺の名前はゼンライン。そっちの彼女が言うようにSSSランク冒険者といわれているよ。まあ、本人自覚なんてないけどね」

 なんてことないように笑顔で言うゼンラインだったが、その存在感はベヒーモス以上だった。


「まあ、あれか。こんなのがいたら落ち着いて話せないよね。ちょっと待ってて、残りは俺がやるから」

 軽い口調でそういった瞬間、既にゼンラインの手には剣が握られていた。

「……い、いつの間に?」

 ルナリアの口からそんな疑問が口をついてでるが、答える間もなくゼンラインはひょいっとベヒーモスに向かっていった。


 ――決着は一瞬。

 それも圧倒的なもので赤子の手をひねるようにあっという間にベヒーモスは動きを止めてしまった。


「ふっ!」

 ベヒーモスとゼンラインは一度すれ違っただけ。

 ゼンラインの持つ剣はおそらく身長190センチほどの彼の身長を大きく上回る大剣であり、攻撃しようとしたベヒーモスの腕ごとすっぱりと身体を真っ二つにしていた。

 目にもとまらぬ挙動に驚き固まったまま絶命したベヒーモスはドドンと大きな音をたてて、左右に倒れていった。


「はあはあ、み、みんなを、呼んできたぞ!」

 それとほぼ同時に息を大きく切らして戻ってきたのはエリッサの仲間たちだった。

 引きずられるような勢いで駆けつけて来てくれたであろう冒険者たちは急いで準備した様子がうかがえる。


「あー……うん、ありがとう。みんなも来てくれてありがとうね」

 エリッサがパーティメンバーと、助けにかけつけてくれた冒険者に礼を言うが、その表情は少し困っているようだった。


「……それで、その巨大な魔物というのはどこにいるんだ?」

 きょろきょろとあたりを見渡してもエリッサのパーティメンバーが急ぐほどの敵が見当たらないことを不思議に思ったようで、助けに来た冒険者の一人が当然の疑問を投げかける。


「いやあ、その……ね?」

 苦笑交じりのエリッサが苦し紛れにルナリアに振る。

「え!? えっと、その、ハルさん!」

 突然話を振られて驚いたルナリアは慌ててハルの名前を呼んだ。


「いや、俺に振られてもあれなんだが……まあ、あそこに倒れているのがそうかな」

 ここまでくるとゼンライン以外も視界に入るようになったハルは真っ二つになっているベヒーモスを指さした。


「…………」

 それを見た冒険者たちは、呆然と口を開いていたが、誰も言葉を発することができなかった。

 どう見ても一瞬でカタがついたことはわかるような状況に何と言っていいか分からなかったのだ。


「ちなみに、倒したのは通りすがりの剣士だった。もうどっかに行ったみたいだけど」

 冒険者たちが想像していることの予想がついたハルがこの情報を追加する。


 実際、ゼンラインはまだ近くにいたが、冒険者たちが近づいているのを知ってハルにこっそりと耳打ちして姿を隠していた。


「……ど、どうする?」

「ど、どうしようか……?」

 状況を理解した冒険者たちからやっと出てきた言葉は、この状況をどうすればいいのか? という疑問だった。


 ベヒーモスが倒れている。

 しかし、倒した人物はいない。

 素材をこのままにしておくのはもったいないし、それ以上に肉などに魔物が集まってしまうのも避けたい。


「えーっと、その人はベヒーモスには興味がないから素材はみんなでわけるといいって言ってた、と思う」

 何と言ってごまかそうか考えた結果に出たハルの言葉にゼンラインは彼にだけ見える場所で顔を出して、その発言に頷いていた。むしろその誤魔化しにナイスだと言わんばかりに親指を立てていい笑顔を浮かべていた。


「と、いっても俺たちはただあとから駆け付けただけだからなあ……」

「おう、確かにこの素材はおいしいが、何もしてないのにもらうのもなあ……」

 この場にいる冒険者たちは、みんな善人らしく、手助けには来たものの、何もしてないことで報酬をもらうことを是とはできないものたちだった。


「あのね、このベヒーモスだけどそもそも私のパーティを狙って追っかけてきたの。それを止めてくれたのがそこにいるハルとルナリア。最終的にベヒーモスを倒したのは通りすがりの人だったけど、それまでダメージを与えていたのはそこの二人なの」

 結論の出なさそうな雰囲気を感じとったエリッサが一歩前に出て説明しだす。それを聞いて、冒険者たちがハルたちを見て感心したようにしている。


 ベヒーモスに立ち向かうだけでもかなりの勇気と力がいることである。

 それをたった二人で成し遂げたというのだから、称賛すべきものだった。


「それで提案なんだけど、このベヒーモスの解体って一人や二人じゃどう考えても無理よね。だから、みんなで解体作業をして、核とか角とかは一番の功績者である二人に持っていってもらって、それ以外のランクの下がる部位をみんなで分けるというのはどうかしら?」

 当然ながらハルとルナリアはこの提案に頷いていた。エリッサの機転の利いた発言に内心感謝している。


「二人はいいみたいだけど、みんなはどう?」

 エリッサの質問に、他の冒険者たちも頷いている。

 一番高い部分が二人のものになったとしても、かなりの報酬になるため、ただ駆けつけただけでそれがもらえるのなら反対する理由がなかった。


「それじゃあ、二人は休んでいてちょうだい。さあ、みんなで解体作業に取り掛かるわよ!」

「おー!」

「やるぞおお!」

 リーダーシップを発揮したエリッサの意気の良い掛け声と共に、ベヒーモスという超巨大な獲物の解体が始まっていった。




*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁1、

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化2、自己再生

     火魔法3、爆発魔法3、水魔法2、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術4、斧術2、槍術1



加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


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