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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第二章「旅立ち」

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第五十五話


 ハルたちの常識外れの行動に驚きつつも、サウサが鑑定場所に案内する。

 その道中で互いに簡単な自己紹介をした。


 ハルとルナリアはDランク冒険者で運よくたまたま宝を手に入れた、と。

 サウサは、このオークションの雑務を取り仕切っているものである、と。


 ちなみに、ランはサウサへの取り次ぎを終えると冒険者ギルドへと戻っていった。


「こちらの部屋へお願いします。他の参加者の方の鑑定はほとんど終わっていますので、すぐにとりかかれるものと思います」

 案内された部屋は地下にあり、そこは広々とした倉庫になっていた。


「えっと、どこにおろせばいいだろう?」

 いくつかのテーブルが並んでおり、そのどれに乗せればいいのかハルが確認をとる。


「それでは、こちらの大きなテーブルにお願いします。軽々と持たれておりますが、恐らく相当な重量でしょう。となれば、このテーブル以外では潰れてしまいそうですから」

 その指摘は正しく、中央の最も大きなテーブル以外に置いていたら恐らく潰れていた。

 一番中央はハルたちが持ってきたような大量の宝か、重量がある宝を鑑定する時によく使われるテーブルで、もっとも丈夫な素材を選んであるものだった。


「了解っと」

 ドスンという音と共にハルたちのお宝がテーブルに乗せられる。


 そして、被せている布を取り外すと、わらわらと鑑定人が集まってきた。

 個性豊かなメンバーたちが一斉に鑑定しようと動き出す。


「みんなまずは紹介からさせて下さい。初めてのお客様に対して失礼ですよ」

 そこへぴしゃりと窘めるようにサウサが鑑定人たちに注意すると、彼らを整列させる。


「ハル様、ルナリア様、紹介します。彼らが当オークションに出品される品物の鑑定を行う鑑定部隊です。ギフトであったり、知識であったり、各々が持つその様々の技能を使って真贋や価値の確認を行っていきます」

 贋作、粗悪品などが持ち込まれた場合に、それの出品を許可しては信用にかかわるため、それぞれの分野において腕利きの者たちが担当している。

 紹介された鑑定部隊の人たちはそれぞれあいさつ代わりに手をあげたり頭を下げたりしていた。


「よろしく、これが俺たちが出品したいものなんだが……」

 ハルは挨拶そこそこに、蓋の氷を外していく。


 すると、歓声があがる。

 一目でわかるお宝の量、そして詳細を確認していなくても良いものだろうと思える質。

 それらは、これまで数えきれないほどの宝を見てきた鑑定人たちをうならせ、自然と声を出させることに成功する。


「ちょっと量が多いかもしれないが、鑑定の流れはどうなるんだ?」

 ぱっと確認できるようなものではないのは、ハルでもわかるため確認する。

 ずっとここにいないといけないのか、預けるだけでいいのか、何かすることがあるのか? など疑問は尽きない。


「まず、こちらでざっと確認させて頂いて鑑定にかかる時間を算出します。算出まではここにいて頂きたいのですが、算出後はご自由になされて結構です。他の出品者の品物を確認したり、街に戻っても大丈夫です。オークション自体は五日後になりますので」

 サウサは丁寧かつ簡潔に説明していく。

 いつ開催されるのかも知らなかったため、ハルはなるほどと頷いた。


「鑑定のほうはこちらで行って、最低落札価格をつけさせて頂きます。それに納得されれば、そのまま出品と言う形になるのですが、もし未出品という形になれば……申し訳ありませんが、こちらも商売ですので鑑定手数料を頂くことになります」

 申し訳なさそうに言うサウサだったが、それくらいは当然だろうとハルもルナリアも理解している。


「出品の了承を頂けましたら、出品物展示場に陳列します。それを見て、入札者がどれに入札するかを決めていく形です。ちなみに、警備体制はしっかりしていますのでご安心を」

 長年ここに勤めているサウサは、鑑定部隊、警備隊などを信頼している。そこがしっかりしているからこそ、自信をもってオークションを開催できるのもあった。


「……なるほど、それじゃあとりあえず鑑定に入ってもらって、かかる時間の算出を頼む」

 ハルの言葉を聞いて、待ってましたと嬉々とした表情の鑑定人たちが作業にとりかかる。

 たまたま手が空いていたのもあったが、それよりも早く目の前のこの宝を鑑定したいという気持ちが強かった。


「――さて、彼らが調べている間に少しお話をしましょう。こちらへどうぞ、お茶を用意します」

 鑑定部屋の端のほうに、休憩できるスペースがあり、そこの椅子にハルとルナリアが腰かけ、サウサがお茶の準備をしていく。

 椅子は客を待たせたり、商談として使うためかとても質の良いもので、座り心地がよい。


「お茶とお菓子になります。どうぞ」

 目の前に茶を出された二人はそれに口をつける。ふわりと良い香りが立つお茶にほっと心が和らぐのを二人は感じた。

「美味い……」

「美味しいです……」

 二人の反応を見て、サウサは満足そうに微笑む。


「それはよかった。――お二人と話したかったのは、あの財宝についてです。他言は致しませんので、少しでも出所を教えて頂けませんでしょうか。場合によっては出品の際に箔をつけることができるかもしれませんので」

「――箔?」

 出所は聞かれるだろうとは思っていたハルだったが、それが箔につながるとまでは思っておらず、サウサの言葉におもわず首を傾げる。


「えぇ、どこどこに伝わる歴史のある食器であるとか、とある王国で使われていた金貨だとか……それがわかることで、購入者もお金を出しやすくなるのです」

 今回の宝を、ただ財宝だ! お宝だ! と考えていたハルとルナリアにしてみれば、目から鱗で驚いていた。

 サウサはハルたちが持ち寄った品が良いものだと一目見た時からわかったからこそ、それを最大限の価値をつけて出せないかと考えているようだった。


「ただ金になればいいとしか思ってなかったけど、そんな部分が重要になるのか……」

「はい、ビックリです……」

 この二人の反応にはサウサも苦笑する。


「そういうものなのですよ。というわけで、できれば情報を教えて頂ければと思うのですが、いかがでしょうか?」

 その問いかけに、ルナリアが答えようとしたのをハルが手で制して止める。


「それに関してだけど、少し待ってもらってもいいか? まだやらないといけないことがあるから、それが終わってからにしたいんだ」

「えぇ、それは構いません……――なるほど、承知しました。それなら、まずは鑑定にかかる時間が確定し、その後、お二人はそのやらないといけないことを終えて戻ってきて、そこでお話を聞くことにしましょう。できれば、オークション前日までに……そうですね、理想を言えば二日前に戻って頂けると助かります」

 ハルが何を成そうとしているのか、サウサはうっすらとではあるが理解しているようであった。だからこそ深く追及せずに、彼が最大限譲歩できる範囲を先に提示した。


「それは助かる。次はどうしたらいい? またここに来ればいいのか?」

「それでは、こちらをお持ちください。参加者証になりますので、それを見せて私の名前を言って頂ければ案内いたします」

 首から下げる名札のようなものをサウサから受け取って、一通り裏表を確認したのち、ハルはそれをカバンにしまう。


 その時、ちょうど鑑定を行っている部隊の一人がこちらに近づいてくる。そしてサウサに軽く耳打ちするとまた中央のテーブルに戻っていった。


「鑑定部隊の方々はあと二日ですべての鑑定が終わるといっていました。よろしいでしょうか?」

「あぁ。それじゃあ、俺たちは行くよ。色々とありがとう。それから、宝のことはちゃんと頼むぞ?」

「もちろんです!」

 数が多いため、盗難されないようにしっかりと見張ってくれとハルが言外に念をおすと、それがわかっているサウサも自分の矜持にかけて守ると胸に手を当て頭を下げ、誓った。


*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:2

ギフト:成長

スキル:炎鎧3、ブレス(炎)2、ブレス(氷)3、竜鱗2、

     耐炎3、耐土2、耐風3、耐水2、耐氷3、耐雷2、耐毒3、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化2、筋力強化2、

     火魔法3、爆発魔法2、解呪、

     骨強化2、魔力吸収2、

     剣術3、斧術2

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法2、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法1、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


お読みいただきありがとうございます。

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