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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第五章「中央大森林」

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第百三十九話


 馬車を使って逃げようとすることは予測されており、兵士たちに囲まれている。

「止まるな!」

 ハルは速度を緩めようとするルナリアとエミリに指示を出す。彼女たちは再び足に力を入れて走り出した。


 そして、ハル自らも速度を上げて兵士たちに突っ込んでいく。

 馬車を囲んでいる兵士の数は6。


「まんまとこっちに逃げてきやがったな。お前たちはもう終わりだ!」

 吠えるようにそう言いながら剣をハルに向ける兵士。


 しかし、ハルはひるむことなく真っすぐその兵士に向かっていく。

 声は出さない。自らの居場所をあえて知らせる愚行は犯さない。


「うおおお!」

 自らを奮い立たせるように兵士は声をあげながら剣をハルへと振り下ろす。

 兵士の持つ剣は特別なものではなく、一般的に扱われている標準的なものである。そのことをハルは鑑定で見抜いていた。


 見抜いていたがゆえに剣に対して左の腕で防ごうとした。

 剣と腕がぶつかった瞬間、金属音が響き渡る。


 皮膚硬化、腕力強化、骨強化、竜鱗によって超強化されている腕は兵士の剣を真っ二つにする。


「――なんだと!?」

「……なっ!」

「剣が折れた、だと……!?」

 周囲の兵士たちは仲間の兵士の剣が折れたことに驚いている。


 この場にいた兵士全員がハルの腕が斬られ、吹き飛ぶのを予想していた。

 剣と腕がぶつかればそうなるのが必然である。しかし、現実には反対のことが起こっていた。


「せい!」

 そして、剣が折れたことに驚いている兵士の腹をハルが思い切り殴って気絶させる。

 ルナリアとエミリも同時に動いており、折れた剣に注目している間にそれぞれが一人ずつ倒していた。


 三人の兵士があっという間に倒れてしまったことで、残りの兵士には動揺が広がっていく。

 女子どもが相手で、残りの男も強そうではない――そう聞かされていた。

 しかし、ふたを開けてみれば相手の強さは圧倒的で、仲間があっという間にやられてしまった。


「せやっ!」

 暗い夜中に心に広がった動揺はすぐに収まらず、その隙をハルたちは見逃さずにあっという間に倒していき、馬車を奪取する。


「二人とも乗るんだ!」

 六人の兵士を邪魔にならない場所に移動させて、ハルは御者台に乗り込む。


「ハルさん、大丈夫です!」

「いくの!」

 二人の返事を聞いて頷いたハルは手綱を握り、馬車を出発させた。


 ハルたちを逃がすつもりがないのであれば、馬車に細工をしておくところだった。

 しかし、ディアディスはこれだけの手勢であれば逃がすこともないだろうと慢心していた。

 ハルが人族でルナリアが獣人族、そしてエミリはエルフとはいえ子どもである。それらもエルフ至上主義であるディアディスを油断させる要因にもなっていた。


「いけえええ!」

 兵士たちが集まってくるが、馬車は既に走り出しており、速度を上げて村の中を疾走していく。

 既にトップスピードにのっていたため、後続の兵士たちとの間に距離が生まれる。


「ひとまずは安心だな。ルナリア、あとは頼むぞ」

「了解です!」

 手綱を握るハルは運転に集中する。


 相手の目的がエミリであるため、彼女は馬車の中で隠れている。

 そして、ルナリアは馬車の後ろに移動すると真剣な表情で杖を構える。


 馬車が先行しているうちはいいが、重量の差から馬に乗っている兵士たちに追いつかれるのは目に見えていた。

 そのための対応がルナリアの魔法だった。


「っ――村を抜けたぞ!」

 村の中で魔法を使うわけにはいかないため、ルナリアはこのタイミングを待っていた。


「“フリーズウォール”!」

 氷の壁を発生させる魔法だが、今回狙ったのは地面である。

 地面を広範囲で凍らせて、兵士たちが乗る馬が滑るようにする。


 あっという間に距離にして数十メートルを凍らせた。

 凍った道に足を取られて馬ごと兵士たちが倒れていった。


「ふー……これで、しばらくは追って来られないはずです」

「お疲れ様、それじゃあどこかに身を隠そう」

 一仕事終えたルナリアをハルは労いながら、さらに馬車を進めていく。

 ディアディスたちがどの集団に属しているのかがわからないため、まっすぐ中央大森林に向かうのは危険だと判断する。


「うん……でも、近くに村とかはなかったと思うの。大体の人が真っすぐ中央大森林に向かうから」

 エミリの話を聞いたハルは、馬車を走らせながら何かを考えている。


「――だったら、どこか水辺に行こう。食材は持ってるし、火も起こせる。どこかにあるといいんだが……」

 馬車の速度を落とさずに、周囲に視線を送る。


「あっち、どこかで左のほうにそれてくれれば川があるの」

「わかった」

 ハルはエミリの言葉に疑問を持たずに、馬車の進行方向を変える。


「っ――なんで……?」

 追われている状況に置いて、何のためらいもなく自身の言葉を信じてくれるハルに驚きを隠せないエミリの呟きは小さい声だったため、彼の耳には届かない。


「ふふっ、エミリさんのことをちゃんと信じてくれているんですよ。そういう人なんです」

 魔法を撒き終えたルナリアはエミリの隣に座ると、抱きしめるように彼女の頭を撫でて微笑んだ。


「……うん、だから信じられるの。ルナリアのことも」

 初めての感覚に戸惑うエミリは無表情のようで、頬を赤く染めていた。


「うふふっ、私もエミリさんのこと信じてますよ。でも、川に到着したら色々話して下さいね。信じているとはいえ、情報の共有は大事です」

 前半は笑顔で、後半は真剣な表情で話すルナリアに対して、エミリも真剣な表情で頷く。


「わかってる。あんなことにまでなるとは思わなかったから黙ってたけど……今度はちゃんと話すの」

 決意した今度の声はハルにも届いており、ハルも真剣な表情で頷いていた。


 横道に入ったハルたちは、途中で馬車を降りてゆっくりと進んでいく。

 その際に、土魔法や水魔法と風魔法などを使用して偽装を施している。

 もし追いつかれるにしても、少しでも時間を稼げるようにというハルの提案だった。


 そして、しばらく進んだところでエミリが言った通り、穏やかな川へと到着した。



*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:4

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁4、剛腕3、統率1

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化6、筋力強化6、敏捷性強化5、自己再生

     火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、

     骨強化5、魔力吸収3、

     剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1

     開錠1、盗み1、精霊契約


加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法4、氷魔法4、風魔法4、土魔法5、雷魔法4、

     水魔法3、光魔法4、闇魔法3

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************



*****************

名前:エミリ

性別:女

レベル:-

ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼

加護:武神ガイン

*****************


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ポイントありがとうございます。


書籍が3月22日に発売となります!


出版社:ホビージャパン

レーベル:HJノベルス

著者:かたなかじ

イラストレーター:teffishさん


よろしくお願いします!


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