第百三十八話
三人は一旦村長の家に戻ることにする。
戻る道すがら、ハルたちは家の中から様子を伺っている村人や、外に出てハルたちを見ている村人に気づかないふりをしながら様子を探る。
最初のうちはハルたちのことを監視している様子だった。
しかし、その視線には怯えの気持ちが含まれていることにハルたちは気づく。
そして、村長の家に近づくにつれてその視線は消えていく。
「おや、お早いお戻りでしたね。まあ何もない村ですから、色々な場所を冒険されてきたみなさんには退屈かもしれませんね。ほっほっほ」
笑顔で言うディアディスだったが、目の奥は笑っておらず、なにやらハルたちの反応を伺っているようだった。
「いや、綺麗な村だよ。虫の鳴き声も心地いい。落ち着く村だと思うよ」
「はいっ、いい村だと思います!」
ハルの言葉にルナリアが賛同する。
エミリは今もディアディスのことを警戒しており、暗い表情で二人の陰に隠れている。
「少し冷えたから、先に休ませてもらうよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
寝るんだから部屋には来るなよ? と暗に伝えながらハルたちは部屋へと戻る。
「はい、お休みなさい」
ディアディスも笑顔で会釈して挨拶をした。
部屋に戻るとルナリアはすぐさま障壁を張って音が漏れないようにする。
重要な話をするかわからないが、それでも誰かに会話を聞かれないほうがいいだろうという判断だった。
「とりあえず、明日は早めに出ることにしよう。どうにもいい感じがしない」
「わかりました」
「わかったの」
二人の返事を聞いたハルは深く頷き、この夜は就寝することとなった。
朝、ハルはまだ暗いうちに目を覚ます。
エミリも同様、ほぼ同じタイミングで目を覚ましている。だがルナリアは静かな寝息を立てて寝入っていた。
「……ルナリア、ルナリア、起きるんだ」
声をひそめながら、ハルが声をかけ、エミリがルナリアの身体を揺すって起こす。
「う、ううーん……あれ? 二人とも、もう起きたんですか? まだ外は暗くないですか?」
もぞもぞと起き上がったルナリアが目を向けたカーテンをしてある窓から見た外は薄暗い。
「ルナリア、外から怪しい気配がする。魔法を解除してくれるか?」
昨日の会話の際にルナリアが張った障壁はそのままであり、ハルとエミリは音ではなく気配を察知して目覚めていた。
「わ、わかりました……はいっ」
ルナリアも最初は寝ぼけた頭だったが、状況を理解し始め、すぐに障壁を解除する。
すると、気配だけでなく外を歩く雑踏が聞こえてきた。
家の中にも既にその者たちは入り込んでいるらしく、床が軋む音も聞こえている。
「二人とも装備を整えて、荷物を持つんだ。それと窓に結界を張ってくれ」
ハルが指示すると、ルナリアとエミリは素早く身支度を整えていく。
それと同時に、部屋についている二か所の窓にルナリアが結界を張った。
これで、ある程度の衝撃を防ぐことができ、侵入も防ぐことができる。
「俺が先に部屋を出るから、二人はなるべく早めに準備を終えてくれ」
いつ突入してくるかわからないため、ハルは自分が先に出ようと判断する。
「わかりました」
「わかったの」
返事をすると二人は準備を急ぐ。
扉を勢いよくあけるとハルが大きな声で呼びかける。
「一体何者だ! 俺たちの部屋に向かって殺気を放っているのはわかっているぞ!」
その言葉は侵入者たちに動揺を与えるに十分であり、侵入者たちはざわつく。
しかし、返事はない。気配は感じるが、暗がりであるため、姿も見えない。
「返事をしないなら、こっちからうって出るぞ!」
ハルは右手を炎鎧で燃やしながら部屋から出ていった。
自らの姿が見えることになるが、それよりも威嚇を優先することにする。
炎鎧は身に炎を纏うスキルであるが、相手にはその判断は使ず魔法の準備をしているように見えていた。
「ま、待て! 家の中で魔法を使うな!」
慌てたようにとびだしてきて言葉を返してきたのは村長のディアディスだった。
「やはりあんたが黒幕か。いや、あんたも下っ端か?」
ハルの挑発するような言葉に、最初は下手に出ていたディアディスだったが、今では感情を消し、目を細めている。
「――なかなか生意気な口をたたく。人族ふぜいが……さっさと彼女をこちらに差し出せ!」
舌打ち交じりでそう吐き捨てたディアディスはハルの挑発に余程いらついたらしく、寝る前までの丁寧な態度はなりをひそめて口汚くなっていた。
「それがあんたの本性か……」
ハルは炎鎧をおさめることなく、全身に炎をまとって廊下を歩いていく。
「は、早く、その火を収めるんだ! ここは屋内だぞ!」
このままでは自分の家が荒らされてしまうと考えたディアディスは慌てた様子でハルを怒鳴りつける。
「わかったよ」
そう返事をすると、右手にだけ炎を集める。
「……それで、なんの目的でこんなことをした?」
ハルの手の炎、そして外が少しずつ明るくなったことで差し込む光でディアディスの顔が見える。
その顔には笑顔はなく、醜悪な顔になっていた。
「貴様らが連れているのは【エルフの巫女】だろう? 貴様らのような下賤な人族が連れていていいお方ではない。さっさと引き渡せ!」
エミリに向かって手を伸ばして強気な態度をとるディアディス。その周囲には鎧をまとったエルフの姿があった。
「さて、そろそろ準備ができたみたいだな」
ルナリアとエミリがハルの背後にやってきていた。
ハルは気配を感じ取り、ハルたちの部屋の外とこの家の各出入口、そしてディアディスの周囲に兵士がいることをわかっていた。
「それじゃ、いくぞ!」
エミリが狙われているとわかった今となっては、ここに留まる理由はない――そう考えたハルは壁に向き直る。
「”フレアボム”!」
そして、爆発魔法を発動させて壁を吹き飛ばした。
自身は甲羅の盾を同時に発動させて魔法を防ぎ、ルナリアたちは魔法によってその衝撃を防いでいる。
「っ――う、うちの壁が!」
ディアディスは自分の家が壊れたことに愕然として、兵士たちは急なできごとに呆然としている。
ハルたちはその隙に、壁にあいた穴から飛び出して行く。
向かう先は馬車である。
しかし、もちろんそこにも兵士の姿があった。
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名前:ハル
性別:男
レベル:4
ギフト:成長
スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、
竜鱗4、鉄壁4、剛腕3、統率1
耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、
氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、
皮膚硬化、腕力強化6、筋力強化6、敏捷性強化5、自己再生
火魔法4、爆発魔法3、水魔法3、回復魔法1、解呪、
骨強化5、魔力吸収3、
剣術5、斧術3、槍術1、弓術1、短剣1
開錠1、盗み1、精霊契約
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:ルナリア
性別:女
レベル:-
ギフト:オールエレメント
スキル:火魔法4、氷魔法4、風魔法4、土魔法5、雷魔法4、
水魔法3、光魔法4、闇魔法3
加護:女神セア、女神ディオナ
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名前:エミリ
性別:女
レベル:-
ギフト:体術2、格闘術2、魔闘術1、先読みの魔眼
加護:武神ガイン
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お読みいただきありがとうございます。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。
書籍が3月22日に発売となります!
出版社:ホビージャパン
レーベル:HJノベルス
著者:かたなかじ
イラストレーター:teffishさん
よろしくお願いします!




