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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第四章「人獣王都へ」

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第百十二話


 チェイサーが代行するという書類にサインをして厳重な容器に素材を入れたあとのことは、チェイサーに任せることとなる。


 先ほど話していたように、展示は来週頭になるため、その時に冒険者ギルドでチェイサーと合流して確認をしに向かうことになった。


「当日は、お二人には必ず同行して頂きます。さすがに、どの品物がいいかまでは私の独断では決められませんのでよろしくお願いします」

「昼過ぎくらいにくればいいんだったよな?」

 ハルが事前に聞いていた時間を確認する。するとチェイサーは静かな笑みを浮かべて頷いた。


「はい、それで構いません。展示確認の際も同じ時間でお願いします。受付でお名前を出されれば伝わるようにしておきますので……――それでは、なにとぞよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく頼む」

「よろしくお願いします」

 互いに挨拶をして、ハルとルナリアはギルドを後にし、チェイサーは手続きの準備をする。


 ちなみにドラクロは話がまとまったのを確認すると、飽きたのか自室に戻って行った。






「さて、それじゃあ次はどうする? 来週頭までは暇になったわけだけど」

「何か依頼でも受けましょうか?」

 ギルドから出てきたばかりだったが、これですぐに戻るというのもどうかなと二人とも思案顔になる。


 悩みながら大通りを歩いていた二人だったが、不意に同じタイミングで顔をあげる。


「……なんだ?」

「なにか、騒がしいですね……?」

 二人が気づいたのは、街の南門から聞こえてくるがやがやとした騒がしい声だった。


「はあはあ――だ、誰か! 誰か助けてくれ!」

 喧噪を切り裂くようにそう大きな声を出しているのは、いかにも村人といった風な質素な服装をしている男性。

 だが周囲の人は遠巻きに誰が助けるわけでもなく見ているだけだ。


「――あれ?」

 必死に叫ぶ男性を見たルナリアがきょとんと首をかしげる。


「どうした?」

「いえ、あの方、どこかで見た覚えが……」

 視線を動かさずに言葉を返すルナリアに、ハルは改めて男性の顔を真面目に見た。


「どれどれ……あー、おれも顔に見覚えがある気が……」

「わかりました! 手前の村の人です! 確か、食堂で働いていた……」

 ぱっと表情を明るくして手を合わせたルナリアが思い出したことで、二人は慌てて駆け寄っていく。


 既に人混みができつつあるなかで、それをかき分けながら近づいた。

 前に行こうとする人は少ないため、あっさりと二人は男性に駆け寄ることができた。


「何があった?」

 目線を合わせたハルは努めて冷静な声で男性に話しかける。


「あ、あんたは……確かうちの食堂にきてくれた」

 ようやく助けを求める声に気づいてもらえたと振り向いた男性もハルたちのことを覚えていた。


「私たちは冒険者です。一体何があったんですか?」

 落ち着かせるように優しい声音で問いかけるルナリアの質問に、男性は思い出したように必死な表情になる。

 この質問を投げかけた時点で、ハルもルナリアも、もしかしたらと想像はついている。


「冒険者! た、助けてくれ! 村が……俺たちの村が襲われた! 盗賊に襲われたんだ! あいつら、魔物もつれていて……!」

 ハルにつかみかかりながら、懇願する男性のその様子にルナリアは息を飲んだ。

 あの穏やかな村で過ごしていた人たち、子どもたちの笑顔が頭をよぎったからだ。


「…………」

 その男性を見ながらハルはしばらく沈黙でいる。

 硬い表情でルナリアはハルの判断を待っている。


「っ……お、おい! あんたたち戦えるんだろ? だったら助けてやれよ!」

「そうだそうだ! 冒険者だったら村を助けに行ってやれよ!」

 男性の村が魔物の襲撃にあったことを知った人たちによって一瞬で周囲の空気が変わった。


 思わずといった様子でそう声を大にする彼らも、自分自身無茶苦茶なことを言っているとわかっている。

 しかし、彼らも村に何度か足を運んだことがあり、そんな村を何とかしてやりたいという気持ちから言っていた。


「――わかった。ルナリア、行くぞ……それから、あんたたちこの人を冒険者ギルドに連れて行ってくれ! そして、ギルドマスターに伝えてほしい。ハルとルナリアが村を救いに先行したと――少しでも可能性をあげないと……」

 考え込むような表情になったあと、決意を秘めた表情でハルは口を開いた。

 黙り込んでいたのは、自分たちがどうするのが正しい選択なのか? 正解に近いのか? それを考えていたためだった。


「こ、この馬を使ってくれ!」

 なにかできることはないかと近くにいた男性が一頭の馬を二人に提供する。


「すまない、できるだけ返したいがどうなるか分からないと先に言っておくよ。――ルナリア、後ろに乗って。急ぐからしっかり捕まって」

「は、はい!」

 先に馬に乗り込んだハルはルナリアがしっかりと掴まったのを確認すると、すぐに馬を出発させる。


 残された住民たちはすぐさまそれぞれ行動を始める。

 ――男性を冒険者ギルドに誘導する者。警備隊に連絡をする者。知り合いに声をかけにいく者。

 ハルはそうやって動いてくれるであろうと期待して、後ろ髪ひかれずに村へと向かっていた。


「……ハ、ハルさん! 大丈夫でしょうか?」

「ダメかもしれない!」

 不安そうなルナリアの言葉に、ぎりっと奥歯をかみしめつつも叫ぶように返事をするハル。

 その言葉は衝撃的なものであり、ルナリアは次の言葉がでない。


「だけど、ダメかもしれないって思っても、あんなに必死な人を無視して向かわないわけにはいかないだろ! あの場所で戦える力を持っているのは俺たちだけだった。あとはドラクロに街の人が報告してくれるのを期待するしかない……まきこんで悪いな」

 ハルはただただ自分が正しいと思う気持ちだけに従って動いていた。

 脳裏には村では子供たちと遊び、村の人々もハルたちのこと歓待してくれたことがよぎる。


「……いいんです。あの村には私も少し思い入れがありますから!」

 彼の熱い気持ちを感じ取ってルナリアは真剣な表情で村を思った。


 特にルナリアは子どもたちと遊んでおり、みんな彼女になついていた。

 そんな子どもたちの笑顔を思い出したルナリアは祈るような気持ちを胸にハルにギュッと掴まる。


「とにかく急ぐぞ、俺たちだけでも戦って少しでも助けられる人を増やすんだ」

 手綱を握るハルは真剣な表情で馬を急がせる。馬も二人の心境を察したように必死で走っている。

「はい!」

 ルナリアはハルが気を遣わくていいように、しっかりと掴まる。


 村にどんな敵がいるのか? 

 どんな戦い方をしているのか? 

 どれだけの人が残っているのか? 

 どれだけの人が無事なのか?


 そんなことをぐるぐる考えながらも、二人は村へと急ぐ――。


*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁1、

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化2、自己再生

     火魔法3、爆発魔法3、水魔法2、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術4、斧術2、槍術1



加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


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