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才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『成長』チート~  作者: かたなかじ
第四章「人獣王都へ」

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第百九話



 ハルとルナリアはゆっくりと街を見て回る。

 ここまでのどの街よりも人が多かったが、急いでいる感じではなく、みんながみんな楽しそうに行き来しているのを見て、ハルもルナリアも自然と笑顔になっていた。


 宿を探す二人だったが、入場の際に場所を確認していたため、すぐに到着することとなる。


「デカいな……」

「大きいです……」

 そこは、これまでに宿泊したどの宿よりも大きく、ともすればお屋敷と見間違うばかりのサイズだった。


 大きな両開きの扉は開かれており、人の出入りもあるため、ハルたちもゆっくりと足を踏み入れる。

 中は広々としたエントランスがあり、受付のカウンターに店員が数人待機して客の対応をしている。


「と、とりあえず普通の冒険者もいるっぽいから、俺たちも並んでみるか」

「は、はい」

 ここまで大きなタイプの宿屋は二人も初めてであり、恐る恐るといった様子でカウンターに向かおうとする。


 すると、一人の店員が穏やかな笑顔と声音でハルたちに話しかけてくる。

 パリッとしたスーツのような清潔感のある服に手入れの行き届いた涼し気で爽やかな雰囲気を持つエルフの青年だった。

「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょうか?」

「えっと、宿泊したいんだけど……」

 一瞬何か間違った行動をしてしまったかと遠慮がちに構えたハルが用件を伝えると、店員は笑顔で誰もいないカウンターへと誘導する。


「それでは、こちらで宿泊のご案内をいたします」

 よく見れば、他のカウンターは全て接客中であった。

 それゆえに、気をきかせて、というよりもハルたちを待たせないように、という彼の心からの行動だと予想される。

 スムーズな流れでカウンターの反対側に回り、宿泊手続き用の支度をし始めていた。


「あ、あぁ。えっと、とりあえず一泊。状況次第でしばらく滞在予定といった感じかな」

 ハルの条件を聞いて頷いた彼はすぐさま部屋の空きを確認する。

「なるほど、承知しました。部屋は空いているので問題ありません。ただ、宿泊の延長を希望される場合は、できれば本日中に、遅くても明日の朝の早いうちにこちらのカウンターで申し出て頂けると助かります」

 無茶な条件にも柔軟に対応してくれることに、ハルとルナリアは好印象を持つ。


「それじゃあ、まず一泊よろしく」

「承知しました。それでは、こちらにご記入を……」

 台帳に記入して、料金を支払って部屋を確保する。

 馬車に関しても、停車場所が確保されているためそちらに停めることとなった。

 

 流れるような安心感のある手続きを終え、客室に案内された二人は部屋もまた落ち着いた雰囲気であることに嬉しさを感じつつ、それぞれの部屋でしばしの休憩をとってから街に繰り出すことにする。



 まずは、食事。

 大きな街であるため、出店や食堂、カフェにレストランと色々な店があるため、目移りしながらも食事に舌鼓を打っていく。

 二人にとってその街ならではの美味しいものを食べることは旅の楽しみの一つとなっているようだ。


 そして、腹が満たされたところで二人は冒険者ギルドへ向かうこととする。


「デカいな……」

「大きいですね……」

 そこで二人は宿に到着した時と同じリアクションをとることとなる。


 宿と比べても大きさ負けしていないほどのサイズの冒険者ギルド――そこは出入りする人々も宿以上に多く、賑わっているのがわかる。

 入ると大勢の冒険者たちがいるというのに、不思議と狭いと思わない構造となっているのがわかる。

 併設された酒場では、すっかり出来上がっている冒険者の姿もあった。

 また、依頼掲示板も大きく、たくさん張られた依頼用紙を前に、どの依頼を受けようか話し合っていたり、自分たちに会った依頼を探していたりする冒険者の姿が目に留まる。


「中も中ですごいな」

「ですねえ。すごくたくさんの冒険者の方がいます」

 二人とも人の多さに圧倒されていた。

 全体的に人の声や物音でごった返しており、二人がやってきても特に気に留めるような冒険者たちはいなかった。


「とりあえず、素材の鑑定を頼もう。素材の買取はどこで……」

 初めて訪れたグリムハイムの冒険者ギルド。何がどこにあるのかわからずハルが周囲をキョロキョロ見渡していると、職員の一人が声をかけてくる。


「あの、初めていらっしゃる方だと思われますが、どのようなご用件でしょうか?」

 温和な表情の男性。ハルと同じ人族で、腰が低そうだが背筋がピンと伸びている紳士ぜんとした男性だった。


「素材の買取をしてもらいたくて……」

「なるほど、どういったものを持ち込まれたか教えていただいても?」

 ものによって鑑定する場所が違うための質問だった。


「大きな声では言えないんだけど、ベヒーモス関連の素材を」

「……承知しました。それではこちらへいらして下さい」

 周囲を警戒しつつハルが静かに一言告げると、男性職員の表情から温和な様子が消え、真剣なものへと変化する。


 それから案内されたのは、買取カウンターの奥にある扉の向こうだった。

 扉を開けて、中に入るとそこは広大な空間が広がっており、外から見た以上の広さがある。


「ここは、空間魔法で作られたスペースで素材の保管や加工を行っています。ささっ、ここを抜けてあちらの部屋へお願いします」

 広大な空間の中にいくつかの部屋が設置されており、その一つに案内される。


「この部屋は私に割り当てられた鑑定部屋です。申し遅れました、私の名前はチェイサーと申します。当ギルドの主任鑑定人をしております」

 たまたま声をかけてくれたチェイサー。

 その彼がこれまたたまたま主任鑑定人というのもすごい偶然もあるものだとハルもルナリアを目を丸くして驚いていた。


「ふふっ、驚かれましたか? 私もまさかベヒーモスの素材を持ち込まれる方に声をかけるとは思ってもみませんでしたよ」

 時折ギルドの案内役を買って出ながら何人もの数えきれない冒険者たちを相手にしてきたチェイサーであったが、彼もハルたちのように若い冒険者がベヒーモスというレア素材を持ち込んだことに驚いたようで小さく微笑んでいた。

 元々ベヒーモスはレアな素材であったが、王都の冒険者ギルドまできてわざわざ持ち込むとなると、もしやその中でも……という考えからここに連れてくることにしていた。


「俺たちとしても、主任さんに見てもらえるのはありがたい。前のギルドだと、値段をつけるのが難しいと言われてしまったから」

 主任鑑定人というチェイサーの肩書にほっとしながら、苦笑しつつハルは角を取り出した。

 前のギルドでの反応から推測するに、恐らく魔核のほうが高価なのだろうと考えて、まずは角を見てもらうことにする。


「ほう――この角は……傷がほとんど見当たりません。これほどの美品はそうそうお目にかかれるものではないですね」

 王都のギルドでなければ値段をつけるのが難しいと聞き、気合の入った真剣な表情で手袋をはめ、目の間に出された素材を念入りに確認していくチェイサー。

 その挙動や言動からも、この角が高い評価を得ていることをハルとルナリアは感じていた。





*****************

名前:ハル

性別:男

レベル:3

ギフト:成長

スキル:炎鎧4、ブレス(炎)3、ブレス(氷)4、ブレス(毒)1、ブレス(闇)1、

     竜鱗4、鉄壁1、

     耐炎3、耐土3、耐風3、耐水3、耐氷3、耐雷2、耐毒4、

     氷牙2、毒牙2、帯電2、甲羅の盾、鑑定、

     皮膚硬化、腕力強化4、筋力強化4、敏捷性強化2、自己再生

     火魔法3、爆発魔法3、水魔法2、回復魔法1、解呪、

     骨強化3、魔力吸収3、

     剣術4、斧術2、槍術1



加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


*****************

名前:ルナリア

性別:女

レベル:-

ギフト:オールエレメント

スキル:火魔法2、氷魔法2、風魔法2、土魔法3、雷魔法2、

     水魔法1、光魔法2、闇魔法1

加護:女神セア、女神ディオナ

*****************


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