第53話 お説教
「拓真貴方どう言うつもりなの?どう言うつもりな訳?私が少し目を離した隙に中学生を口説くなんていい度胸してるわね?ねぇ知ってるかしら?
ここは私の家なの?理解してる?私の家の中で浮気するなんて肝がすわってるわね?それとも馬鹿なのかしら?バレないと思ってるのかしら?見くびられた物ね?ねえ?もしかして貴方私の事舐めてるの?舐めてるわよね?ねぇねぇ?なんなの?なんなのかって聞いてるの!」
「……。」
「黙っていたら許されると思っているの?本当貴方、私の事舐めてるわよね?黙っていたら許されるなんて思わないで欲しいわね?そんなのが通用すると思ってるの?貴方何処まで私の事コケにすれば気が済むの?」
「いや…だから…」
「また言い訳?貴方はいつも言い訳ばかりよね?少しは男気を見せて欲しいわよね?ねえ?そうやって言い訳ばかり重ねて私が許すと思っているの?ほんっと!人をなめるのも大概にしてほしいわね!大体貴方はね!!いつもいつも私を…」
かれこれ冬柳さんの説教が始まって30分は経過したろうか?視界に時計が無いので確認出来ない。
え?
時計を見れば良いじゃんかって?
はっ!馬鹿を言わないでもろてっ!
現在の冬柳さんは劣化の如くお怒りだ。
そんな中時計を探しに視線を彷徨わせれば彼女の怒りは更にその勢いを増し、怒髪天を衝くだろう。
何処見てるんだ!
今私が話てるだろうが!お前は人の話も真面目に聞けないのかぁ!!
って感じに。
故に他所見等は絶対に出来ない、しちゃならない。
しかし僕は馬鹿だ、久豆流妹と2人で楽しそうにゲームなんてしていたらこうなるのは目に見えているのに…。
最近冬柳さんは滅多に怒らなかったしメンヘラ的なヘラり方をしなかったので油断していた。
しかしここで真っ当に言い訳しても文字通り言い訳してんじゃねーとキレられるのが関の山だ。
どうするべきだろうか?
そこでふと疑問に思ったのは冬柳父の事だ。
彼とは面識はあるがそこまて深い交友関係ではないしあまり知らないのが現状だ。
それでもはっきりいってしまえるのは彼が消極的な性格のイケメンと言う事だ。
何処となく自信の無さ、冬柳母に頭が上がらない印象を受けた。
冬柳さんの味方で地頭の良さを感じたのと同時にそんな弱さも感じていた。
そんな冬柳父が今回冬柳母を言い負かし屈服させ、オマケに信頼の向上までやってのけた。
何より子供を身籠ったと確信させる程愛し合っている。
いったいどんなけやったのか…?
…………まぁそんな事はいい…そんな事はいいのだ!
問題は彼がどんな手を使ったのか?
いったいどうやったのか?
それがわかれば今お怒り中の冬柳さんの怒りを鎮めれるかも知れない。
しかし分からない物はわからないし結局は僕なりのやり方で行くしか無い。
僕が今まで冬柳さんと付き合って来て身につけた、編み出した方法で!!
「ねぇ聞いてるの?私が貴方に話してるのに貴方は考え事?いいご身分ね?浮気しておいて上の空だなんて随分偉くなったものね?貴方に私の気持ちがわかる?わからないわよね?裏切られたこの私の気持ちなんて貴方にわか「冬柳さん。」るわけ……」
彼女の長文に割り込み間髪入れずに僕はぐいっと彼女に顔を近づけて目を見る。
ここで恥じらったり頬を赤らめては駄目だ。
一切の躊躇を捨てるのがキモだ。
「君こそどうして僕が信じられないの?」
「しっ…信じられるわけ無いじゃない…だって貴方は」
「残念だよ冬柳さん…君は僕を信じてくれないんだね?君の僕への気持ちなんてその程度なんだね?好きだ好きだって言っておきながら結局君は形だけの愛を僕に押し付けるんだね?」
「そ…そんな事」
「だってそうでしょ?君は僕が何を言っても言い訳と吐き捨てるだけ!信じる気概がない、それで信頼関係なんて育めるワケが無いよ?僕はね?中学生である久豆流の妹さんの前で雌の顔を晒す君の母親に配慮してあの場を去ったんだ、そして君達家族の話し合いが終わるまで暇つぶしにゲームをしていただけ、それだけだよ?確かに人の家のゲームを勝手に起動させたのはマナー的にどうかと思う行動かも知れないけど君は以前好きに遊んでくれたら良いと言っていたしソフトはほぼ僕の物だしここまで怒られるとはおもわなかったよ。そもそもだよ?どうしてクラスメイトの妹と暇潰しにゲームしたらそれがイコールで浮気になるの?君は僕が女の子と遊んだだけで浮気だと断定してこれ見よがしに言ってくるよね?桜田さんの時もそうだったけど君は僕を信じてないんだ!本当は浮気者って免罪符を付けて僕をイジメたいだけなんじゃないの?君は僕の事を全く信じてくれてないよね?本当は僕の事なんて好きじゃないんじゃないの?パットしないモヤシ男をからかって遊んでるだけじゃないの?僕はね!」
「ちっ違うわ私は貴方の事本気で好きで…」
「ならどうして信じてくれないの?気持ちが伝わらないよ!!」
そう言って更に距離を詰め、互いの鼻がぶつかる程近づき彼女の手を掴んで逃げられない様にする。
うわぁ…冬柳さんの手はスベスベで華奢な手だーとか目が宝石みたいに綺麗だーとかそう言った欲は吐き捨てる。
「あわ…あわわわ!」
「ねぇどうして!?どうしてさ?」
とうとう冬柳さんは視線をそらしあわわわと謎の声をだしながらうずくまる。
上手く…行った見たいだな…。
正直更にキレられて喧嘩になった場合僕は負ける。
その覚悟、賭けに勝つ覚悟が無ければこの博打的方法は出来ない。
そして今回僕は賭けに勝ったみたいだ。
名付けてメンヘラ返し。
「ち…違うのよ…違うのタクちゃん…貴方の事を信じて無いわけじゃないの…でも貴方が他の女といると不安で不安で仕方ないの!だから…」
「でも信じてくれてるなら不安になんてなる事はないでしょ?やっぱり僕の事…」
「違うのぉ!!違うのぉ!!!」
このやり取りを特等席でずっと見せられていた久豆流詩織は言葉を失っていた。
「…………………。」
最初怒り出した雫を見て焦った。
30分もの説教に彼女もまた身動きが取れないでいた。
彼女が怒っているのは自分の軽率な行動が発端だし私にも非はある。
そう思うと動けないのだ。
しかしあの…あの自由人の冬柳雫がここまで感情を剥き出しにして怒る相手がいる。
そして今も言葉巧みにあの扱い辛い冬柳雫を手名付けている。
そりゃあの兄では無理だ。
分かっていたって簡単に真似できる物ではない。
真島拓真。
少し興味深い人だなと…詩織は思った。




