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清楚の皮を被った自己中メンヘラ美少女JKの冬柳さんと僕は上手く付き合って行けるのだろうか?  作者: ムラタカ


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第41話  いざ戦場へ

冬柳雫は豪奢な和装に身を包み、また普段はしない化粧で顔をデコレーションし、完全な"余所行き"の装いとなっていた。


彼女は今、普段は絶対に足を踏み入れない…いや、踏み入れる事の叶わない高級レストランに家族とやって来ていた。


時は日曜日。

土曜日に真島拓真が佐渡と桜田の両名と会話をした次の日の日曜日となる。


冬柳雫の無礼にたいする謝罪の意味も込めた団欒が両家の間で開かれていた。

冬柳雫の母は笑顔だった。

貼り付けた能面の様な笑顔。

なまじ元が良い…いや、良すぎるが為にただの笑顔がより魅惑的に映り場を支配する。


そしてその娘、冬柳雫は……無表情だった。

母と反比例するかの様に無。

その表情は無。

何も映し出してはいない。

完全な無、虚無だった。



そんな虚無状態の彼女を見る若干15歳の少女がいた。

ブロンドの髪色を持つハーフの少女。

久豆流詩織。


現状中学生だが同時に大学生でもあると言う特殊な立場の少女。

中学校には勉強に行ってるというよりかは少女としての人格形成や一般的価値観を学ぶ為に行っている。

小学生の頃に独学で高校生の範囲の勉強を済ませた彼女にとっては中学での勉強はどちらかというと学ぶ側より教える側に回ることの方が多い、しかし彼女にも学ぶ事は多い。 

彼女の一方的な教え方で理解を示す学生は少なく、どうやれば理解してくれるかを探求する。

彼女にとって中学生活はソレを学ぶ為の物とかしている。

そしてそんな彼女が今、視線を釘付けにされているのが兄の婚約者、冬柳雫さんだ。

詩織とは異なり、腰まで伸びた真っ黒で綺麗な髪は彼女が純潔の日本人である事を証明している。

まるで現役モデルであるかを疑うレベルで美しいプロポーションに人形の様に造り物めいた彼女の顔は美しさを通り越えていっそ不気味に思えるほど整っている。

詩織は自分が美少女だと自覚して生きている。

自分の美貌に疑い等持っていない。

しかし冬柳雫を観てしまえば自分など井の中の蛙だったのだと痛感させられる。

それ程彼女は美しかった。


(こんな綺麗な方が兄と…?)


そう思うのは詩織が兄と彼女が釣り合うとは思えないからだ。


兄は容姿だけならそこそこ良いが中身がまるで伴っていない。

子供の頃はその破天荒な性格をカッコいいと思った事もあったが今やただの恥さらしの面目潰しでしか無い。

運動神経はそこそこ優れているものの学力は並。

秀でた才能も特に無い。

別にそれが不満なのではない、無才、並、凡人、それを否定なんてしない、詩織は努力する人は好きだし無才、並、凡人でも努力して天才に並ぼうと頑張る人は好きだ。


だが兄はそれとは真逆。

徹頭徹尾他力本願。

誰よりも久豆流の名に依存する他責モンスター…それがこの私、久豆流詩織の兄、久豆流創真なのである。


そんな人間がこの異次元の品格を持つ少女と釣り合う?

いやいやいやいや……ありえないでしょ?


それが久豆流詩織の正直な見解だった。


「まずは先日の無礼を謝罪しますわ、久豆流様、本当に娘が申し訳ありません!この子ったら照れ隠しであの様な事を…」


「ははは!お気になさらないでください、誰でも間違う事はありますよ、さぁ、今日は無礼講だ、どうか楽しんで頂きたい」


「まぁ!本当に有難うございますわ!」


大人達の社交辞令大会が始まる。

付き合いで詩織も来ているが正直速く帰りたい。

こんな茶番に付き合っているより楽しい妄想に耽っていたい。

詩織はいつも頭の中で色んな妄想をして楽しんでいる。

そこでピキーンと何処ぞのエスパー並の閃きと共に次々と斬新な発想が生まれそれ等が大学の論文とかで評価され持ち上げられる。

つまる所詩織は根っからの天才タイプという訳だ。

しかしこんな形式だらけの場ではそんなひらめきも生まれない、なんとも不毛な時間だ。


「くく、さぁ詩織、今日は僕達の奢りだ、好きなだけ食べたい物を食べるといいぞ?ふっ、何せ今日は僕達の奢りなのだからっなっ!!」


「有難うございます…」


「ふっ、構わないさ!好きなだけ食べるといいさ、伴侶の好みを知るのも夫の勤めさ!」


兄は気安く無表情の雫さんに話しかける。

上手く関係を紡げていると思ってる見たいだけどどう見ても空回りだ。


どうしてこの人はここまでキモいのだろうか…我が兄ながら本当に嫌になる。


ため息を付きつつも詩織は黙々と運ばれてくる料理を食べる。

こうしたコース形式の料理は食べても余り満足感が得られない。

中学の友達と一緒に行くファミレスやたこ焼きの屋台やクレープとかの方が美味しいまである。

食べ物はお金かければ良いってもんじゃ無いというのが彼女の見解だ。


そしてそうこうしてる内に食事会はつつがなく進み、両家の団欒も大詰めとなった。


「今日はこの様な機会を与えて下さり本当にありがとう御座いますわ」


「いえいえ、これからも末永い関係を築きたいものですな」


「それで雫、これからどうかな?特別に君に相応しい場所を見つけさせたんだ、きっと君も気に入る事だろう」


「まぁ!良いじゃない、せっかくのご厚意よ?行ってきなさい雫、後の事は母がしておくわ!」


「そうなのですか?」


「ええ!ええ!楽しんでいらっしゃい!」


「それでは行こうか?雫」


そうして冬柳雫さんは立ち上がりレストランからテクテクと立ち去ろうとする。

慌ててそれに兄も付いていく。


「おいおい雫、少し急ぎ過ぎだぞ?楽しみにしてるのは良いがこの僕を忘れてるぞ☆」


そう言って兄は彼女の手を取ろうとして……

パーンと小気味よい音を奏でて弾かれた。





「え?」



小気味よい反響音がレストラン全体に広がる。

兄は何が何だかわからない。

そんな顔をしていた。


「ねぇそこの貴方?」


「え……?」


「前も言ったけど私の名前を気安く下の名前で呼ばないでくれる?」


「は………、え…?」


「何度も言わないと分からない程愚かなの?」


「…………なっ!お…お前!!」


「はあ…呼び捨ての次はお前呼ばわり…お金持ちのボンボンは教養がなってないみたいね?」


「な……なんだとお前!?」


「親のすねかじりでイキるしか能のない貴方の稚拙さを見ればそれも仕方ないのかもね?よかったわね?親に頼めばなんでもお膳立て出来るのだからさぞかし楽しくて楽な人生なのでしょうね、吐き気がするわ」


「こ…この雑魚女ぁ!!またこの僕を馬鹿にしてぇ!!ふ…ふふん!強がるなよ雑魚女が!お前が俺の事を好きなのは御見通しなんだ!!…、ふひひ!無理するなよ?…この僕の元でヒイヒイ鳴いてりゃそれでいいんだよ、なぁ?」


「貴方のその女を下に見る考え方…本当に虫唾が走るわ…しかも根拠も確証もなく相手が自分を好きだと思い込む悪癖…さぞかし面白可笑しく生き…「黙りなさい雫!!」てき…」



雫さんの言葉に被せ彼女の母親が唾を飛ばしながら激昂する。

それを静かに睨む雫さん。



「何を言ってるの貴方?未来の旦那様に対して何を言ってるのかしら?駄目じゃないそんな事をいっちゃ?駄目じゃない?ねぇ…駄目でしょ?」


「はぁ…お母さん…私は何度もいったわよね?こんな交際ごっこに付き合うつもりは無いと?」


「ごっこぉお!?

何度言ったら分かるの!!?これはごっこじゃない遊びじゃないのよ!!いい?雫?このお見合いにはね?冬柳の再建がかかってるの!!?これは冬柳の悲願なの!何度もいってるでしょ?いい加減理解しなさい!!貴方もう17歳なのよ?いい加減冬柳の人間としての自覚を持ちなさい!!」


「うんざりだわ!私はお母さんの道具じゃない!将来添い遂げる相手は私が決める!そしてそれはこの男じゃない!私には将来を誓った相手がいる!私の全身全霊をとして添い遂げたい相手がいるのよ!!冬柳だとかなんだとかそんなの知った事か!!」


「はあ…あの男の子の事?やめておきなさい、あんな何の魅力も無い男より久豆流家の彼の方が何倍も魅力的で「はあぁぁ!!?」しょ…」


「まさか…本気で言ってる?私を久豆流家に嫁がせたい方便としてもナンセンスだわ…この口だけの見せ掛け男がタクちゃんと比べられると本気で言ってるの?はあ…しょうが無いなぁ〜お母さんにタクちゃんが取られるかも知れないからお母さんにはタクちゃんのいい所はずっと黙ってたけどこ!れ!は!教えてあげなくちゃだめよね?もぉぉ!!仕方ないなぁ〜〜!!」  



今まで無表情だった雫さんの表情が変わった。

お母さんと言い合いをしてる時ですら彼女は無表情だった。


しかし彼女が言うタクちゃんなる人物の事を話している彼女は別人の様にキラキラとしていた。


「ねぇ?お母さん?

お母さんはお父さんの事好き?どうせお母さんの事だからさして好きでも無いのにお付き合いして結婚したんでしょ?

お父さんの旧姓…鷹野の傘下に入りたくて…でもそれだけじゃ老人どものノルマは満たせなかった…だから私を今度は自分の代わりにしようとしてるんだよね?

でもだ〜め!私はね?お母さんを見て育ったの!

私が子供の頃からお母さんを見て思った事は一つだけ。

お母さん見たいな空っぽの人生なんて絶対嫌…それが私の唯一の懸念だった!

だから彼氏だって沢山作ったしお付き合いもしたけど駄目だった…男なんてつまらない奴ばかり!

そこのボンボン男も同じ!久豆流家の庇護下にいないとな~んにも出来ない無能…しかも人を下に見るクズ!!久豆流家がクズを放り出して私を困らせる!こんな私の心の支えはタクちゃんだけ!!

タクちゃんはこの私が17年の人生の中でようやく見つけた光なの!!

お母さんにはわからないよね?

光を見た事無いお母さんには!!

数多いる下らない男どもの中で彼だけが光り輝いて見えるのよ!!

この男は私を顔でしか評価して無い!後は胸やお尻や体!外見しかみてないのに親の言いつけに習って私を伴侶にしようとしてる!

私の内面なんて見ようともしてない!!

親に黙って従ってれば私を好きに出来ると思ってるのよ!!結婚後の事なんてな~んにも考えてない!!タクちゃんはね!!タクちゃんはね!!!ちゃーーんと私の事を思ってくれるの!!タクちゃんは私が…」


「しっ雫!!貴方少しだまりな」

 

「黙れ!!!そして聞け!!今私が話してるんだろうが!!!タクちゃんは私を……」




なんだこれ……


詩織は度肝を抜かれていた。

正に何だこれ状態。


事あるごとに美少女からタクちゃんなる人物と比較されダメ出しされ指をさされてボンボン男と評される我が兄は白目を向いて疲弊していた。


まぁそれでもこの兄の性格状…多分自分のなかで上手い具合に脳内変換して立ち直るのだろうけど…

まぁそんな事は心底どうでも良い。


一応この場は両家の今後を決める大事な席の筈だ。

なのにもかかわらず雫さんは堂々と威風堂々と言ってのける。


己の思いを。

後の事など考えない。

今思った事、今まで思って来た事。


その全てをこの場でをぶちまけている。


多分彼女はこの場にこれをする為に来たのだ。

彼女にとっての決戦場。

久豆流創真との縁談を破壊する為に。


私はこの冬柳雫と言う少女を…。




カッコいいと思った。

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