第40話 本当に…敵わないな
ショッピングモールで真島と偶然会った佐渡と桜田の2人は彼と軽く雑談を交わした後、彼を見送った。
真島とはあっさりとした会話を交わしただけで会話自体は直ぐに終わった。
デート中だったのもあり多分気を使われたのだろう事は何となく察する事が出来た。
「なんか元気なかったね?真島の奴」
「……そうだね。」
佐渡は真島の歩き去って行った方向を見ながら思う。
俺が冬柳さんと付き合ってた期間はそれ程長い訳じゃないが彼女と付き合っていくのは並大抵じゃないと今ならわかる。
俺と付き合ってた頃の彼女は猫を被っていたし、本当の彼女の事を俺はあまり知らない。
しかし真島と付き合っていると言う事を公言してからの彼女は明らかに前の真面目で誰にでも優しい男にとっての理想の女の子像とかがが剥がれ落ちて素ですごしていると分かる。
今も彼女と付き合っていたなら俺は果たして彼女との関係を良好に過ごせていただろうか?
答えはNOだ。
まず大前提として彼女から俺は好かれてなかった。
彼女の好みは今でもわからないが少なくとも俺より真島の方が彼女にとっては好ましい人間だったのだろう。
今更未練は無いし凪咲ちゃんといる有り触れてるけども大事な日常の方が今の俺にとっては掛け替えの無い物に感じられるからあの頃に戻りたいとは思わない。
しかしそんな物は関係無くあの2人の今後が気になってしまう、そしてそれは凪咲ちゃんも同じらしい。
「お母さんが雫のパワーアップ板とか中々しんどそうだね、真島は…」
「え?ああ…そうだね。」
「別れるのかな?あの2人」
「え?…どうだろ…」
「私は別れないと思うなぁ〜」
「えと…どうしてそう思う?」
「だって雫だよ?あの子が親から久豆流君と付き合いなさい!って言った所でハイ!って聞くわけないもん」
「……はは、それはそうだな」
流石は友達だ…良く彼女の事をわかってる…
きっと凪咲の方が俺なんかよりもずっと彼女の事を理解してるをんだろうな…。
「健吾はさ…まだ雫の事…引きずってる…?」
「え…?…そっ!そんな事ない!俺は!」
「無理しないで良いよ…引きずってるの丸わかりだし」
「そんな事…俺は、」
「いつかはわからないけど…健吾の中から雫を完全に追い出して私だけの健吾になる様に頑張るよ!」
「凪咲ちゃん…」
「それと私…雫の事は嫌いとかじゃないからそこの所勘違いしないでね?今も雫の事は大事な友達だと思ってるの…」
「そうなんだ…正直あまり仲は良くないのかなって……」
「多分ね…あの子…私の事助けてくれたんだよね…」
「え…?」
「前に私がイジメられてた時…」
「っ!…」
「加藤君が証拠集めて美代達を糾弾してくれたでしょ?」
「ああ。…あれは凄かったな…俺にはあんな事できなかった…加藤は凄い奴だ…尊敬するよ…」
「……あれ多分雫の入れ知恵だよ」
「…え!?」
加藤の壇上に立っての糾弾劇…あれが冬柳さんの入れ知恵…?
「私は加藤君の事ろくに知らないけどあんなにスラスラと証拠出すなんて普通出来ないよ、用意良すぎ!…てかね、やり方がまんま雫なのよ!あの子、嫌いな子は時間かけて徹底的に追い詰める所があるし、やる時はホント容赦ないの…知ってる?あの子、まだクラスの人気者だった時女子から死ぬ程嫌われてたの。」
「え…?あ…そうなの…?」
正直知らなかった。
彼女は皆に囲まれていつも笑顔で…。
男子も女子も皆彼女の前では笑顔で…。
そんな空間を作り出せるのが彼女の魅力だって思ってた…。
今の彼女ならいざ知らず…当時の彼女が実は嫌われ者だった…?
「だから雫はもしもの時の為に大抵の女子の弱みを握ってるの…美代達の証拠も多分そんな感じで雫が用意した物を加藤君に渡したんじゃないかって私は思ってる。」
「それなら…どうして加藤を介したんだ?直接言えば良いじやわないか?」
「出来ないよ…そんな事…今のあの子のクラス内のポジションでそんな事したら悪目立ちしちゃう」
「…」
「今のあの子の一番大事な物は真島との時間…私を助けるなら目立つ事はしたくない…だから加藤君を利用したんだと思う。」
「……はは…凄いな…」
「…え?」
本当に…
凄いな…
本当に凄い。
嫌いあってるかも知れないなんて俺の勝手な勘繰りだった…。
彼女は…彼女達は分かり合ってる。
元彼の俺なんかよりもずっと彼女の事を理解している。
彼女の友達である凪咲ちゃんはちゃんと理解している。
今では殆ど会話らしい会話がなくなった彼女達。
疎遠になって形骸化して希薄になって…。
だから友情も無くなっていくと…そう思っていた。
でも…むしろ…むしろ今の方が彼女達は通じ合ってる。
本当に……
「かなわないな…。」
敵わないな…。




