第39話 悩み
今日は土曜日の朝。
冬柳さんのお父さんが突然現れた日の次の日。
翌日の事、僕は暇を持て余していた。
土曜日は彼女と遊ぶ約束をしていたのだが実家からの呼び出しがあったとかで急なキャンセルとなってしまった。
こうして予定をキャンセルされたのは久しぶりだ。
彼女がまだ佐渡と関係を続けていて校内で作った自分のキャラや体裁を気にしていた頃以来だ。
あの頃と違い、今の彼女は周りの反応を気にしたりしない様になった。
だから今の彼女は前よりも強くなったと思う。
なんと言うかメンタルが安定して精神的に強くなったと思う。
それでも実家から呼び出されたら行かなくちゃならない。
多分…いや、ほぼ確実に久豆流家絡みで呼ばれているんだろうな…。
昨日会った冬柳さんのお父さん…あの人が味方についてくれてるのは心強いけど相手はあの冬柳さんのお母さんだ。
一筋縄ではいかないかも知れない。
まぁ結局の所、僕に出来る事は現状無く、こうして家の中でぼーっとしている事しか出来ない訳だが。
暇なので適当にぶらつくかと近所のショッピングモールに行く事にした。
前はここで桜田さんと偶然出会した訳だが今回もそんな偶然が起こる訳も無いかと思っていたのだけど…。
「やぁ偶然だね真島」
「おっすー」
「あぁ…どうも…」
本当に会ってしまったよ…
この広い町中でどんなけ確率高いんだ…。
ソシャゲのガチャの確率の方を上げてくれよ…。
「2人は…デート?」
「うん、凪咲ちゃんの買い物の付き合いかな」
「欲しいバッグがあってね〜健吾君に付き合ってもらってるのよ」
「そっか」
既に2人して下の名前呼び。
ベタベタとくっついて実にベストなカップルつぷりを見せつけてくれている。
実に羨ましい限りだ。
「そういう真島は?雫一緒じゃないの?」
「あぁ…実家に呼び出し食らってるみたい」
「実家…?ああ…」
何故と頭上にクエッションマークを浮かべていた桜田さんだけど直ぐに心当たりが見つかった見たいだな…。
そう、数日前の盛大な告白騒ぎだ。
婚約者を自称する久豆流の一方的な告白を冬柳さんは僕への公開大胆告白のインパクトでかき消した。
しかし親の決めた婚姻関係が子供同士の騒ぎで有耶無耶に出来る訳も無く、冬柳家は久豆流からのお怒りを受けたのだろう。
どう言うつもりなのかと。
「久豆流ってあの久豆流でしょ?滅茶苦茶金持ちなんでしょ?ヤバない?」
「確かにね…真島は大丈夫なのか?」
「あぁ…僕は大丈夫だけど…」
「てか気にし過ぎじゃね?雫なら大丈夫しょ!あんな俺様イケメンが何度言い寄って来たって訳無いよ!」
「冬柳さんの事は何も心配して無いんだけどね…」
「じゃ何が心配なの?婚約とかお見合いなんて本人が嫌って突っぱねれば断れるんだよ?」
「冬柳さんのお母さんがね…」
「お母さん…?」
「冬柳さんをそのまま大人にしてさらに厄介にした様な人なんだ…」
「あ〜ねぇ…」
「彼女が大人になってさらに厄介か……ちょっと想像出来ないな…真島は会った事あるのか?」
「うん…この前偶然…」
「とりま凄い美人なんだろーね、雫のお母さんってくらいだし…」
「うん…訳わかんなくなるレベルの美人だった…」
「訳わかんなくなるレベルって…」
「どんなんだよ…」
言葉にしただけではあの人の美人度を示すのは難しい。
ベースが冬柳さんってだけでもう異常なレベルの美人だけどそこに大人の色気とか纏う冷たい雰囲気とかが別次元の美しさを生み出していた。
そして…。
「冬柳さん家って昔は富豪の一族だったらしくてね…お爺さんとかから冬柳さんのお母さんはお前の代で立て直せみたいな事を言われてるみたいなんだ…」
「えぇ…なにそれ…」
「つまり冬柳さんは親の言いなりにされかかってるのか…真島は…その…辛いな…」
「え…?あぁ…でも父親の方は俺達の事を応援してくれるらしいし、…まぁ多分大丈夫だろ!」
「あぁ……」
「うん…そうだな…とりあえず頑張れよ真島!」
「うん、ありがと!」
なんか微妙な空気になって来た…
正直この2人には関係無い話なのに…
デートの邪魔までして…なんか悪いなって思ってしまうな…。




