第27話 怒涛の後
昨日のホームルームは怒涛だった。
女子同士の僻み、嫉妬は他者を傷つけ、貶める程の熱量を持っているのだと改めて痛感した。
男が主犯のイジメより女が主犯のほうがより陰湿になると何処かで聞いた気がするけどアレは本当なんだなと思い知らされた。
男のイジメは先に暴力が先行するイメージだが女の場合は暴力の代わりに精神的苦痛を伴う物が多いのだ。
力をもたない非力な女子だからこそのモノだろう。
あるいは精神的に稚拙な男子と比べ、女子は精神的成長の熟達が早いとも言われている。
故にイジメのクオリティも男子と比べ、より陰湿な物となるのだろう…、まぁわからないけど。
そして今回、個人的に何が一番怖いってそれは冬柳さんだ。
冬柳さんはもしもの為にカウンターとしてアレ等の証拠を随分前から隠し撮りとかを駆使して保有していたのだ。
女子は友達付き合いを表面的にしながらも裏では騙し合い、粗探しや知り合い同士の落とし合いを常日頃から繰り返しているのかと思うと純粋に怖くなる。
まぁ…こんなのは一部だけで滅多に無いんだろうけど…その例外が僕の彼女とか勘弁して欲しいものだ。
そして今回の騒動でウチの担任教師は女子生徒3人と肉体関係にあった事が露呈しただけに留まらず1人の生徒を貶め、自分可愛さにその生徒の未来を台無しにしょうとした。
教員免許の剥奪は当たり前で刑事罰にまで発展した今回の事件で担任は当然ながら学校を去ることになった。
当然担任は変更され新たにヨボヨボのベテラン教師と言う冠をかぶったお爺さんが担任となった。
一部の男子は新任の美人女教師、大原先生が担任なんじゃね?なんて騒いでたけどそんな事はなかった。
残念!
まぁそんな事はどうでもいいのだ。
問題はコイツだ。
加藤進…僕の数少ない友人だ。
テンプレートの様な友人キャラムーブをかましてくる奴で彼女欲しいが決め台詞のナイスガイだ。
持てないメンズと言う不名誉なチームを結成し、僕を勝手にメンバーにいれ、冬柳さんという彼女の存在が明るみになった後も彼は1人でこのチームを頑なに守っている。
しかし案外と友情に熱い側面を持っ精神的イケメンでもあり、彼には何度か助けられた事もある。
巻き込まれた形ではあっても今回の事件の立役者でもあるのだけど彼は今、僕の机に顎を乗せ、聞いてくれよぉ〜と泣き喚いていた。
「やべーよやべーよ…どうしょう」
「どうしょうもクソもなくない?」
「そりゃ薄情って物だろ?心の友よ!」
そう、彼は冬柳さんの代弁者として彼女が集めた証拠をあのホームルームにて開示する役割を果たした。
イジメの被害者である夏芽さんはそんな加藤に感謝の気持ちとそれ以上に彼の手腕にとても感動したらしい。
既に既知の事実だが加藤の成果のほぼ八割くらいは冬柳さんの物だ。
しかしそんな事、夏芽さんが知ってるワケが無い。
…今更言えないと加藤は危機感を感じている。
「もう大人しく冬柳さんが集めてたのを俺が公開したって白状すればいいじゃん」
「出来る訳ないだろ!そんな事!」
「なんでさ?」
別に白状した所で何も変わらないと思うのだが…?
「アホか!せっかく上がった夏芽さんの俺に対する評価が白紙どころかマイナスになるじゃねーか!!」
「結局下心かよ…」
夏芽さんも冬柳さんや桜田さんとはベクトルは違うが凄い美少女だ。
文学系美少女とでも言えばいいのか落ち着いた印象の中に確かな知性を感じさせる美少女で隠れた人気は確かにある。
しかし思ったことを包み隠さずそのまま言う人で良くも悪くも配慮に欠ける側面がある。
所謂空気の読めない一面があるのだが更に厄介な所として自分に絶対の自身を持っている事と徹底した効率厨な事が挙げられる。
最短最速で物事を片付ける事になんか強いこだわりがあるのか班とかグループ活動とかする事になった日にはやたらと口うるさく急かされるので他の生徒からは敬遠されている。
まぁ面倒なクラス委員長なんて物を嬉々としてやりたがる変人という認識が僕等クラスメイトの共通認識だ。
そんな訳で友達は少ない…てかいないので基本的には1人で本を読んでいる事が多い。
しかしここ最近はやたらと加藤の世話を焼いている。
加藤に絡みに行っている事が多い。
そして今も加藤の存在に気づいたのか笑顔でこちらにやって来た。
「どうかしら加藤君、さっき思いついたのだけれど本を効率的に読む方法としてメジャーな方法は多義に渡るだろうけれど私はやっぱり目次からあらかじめ内容を予測し、自分の中で物語の理解度を高める事が重要だと思うのよ?」
「え?…俺は裏表紙の簡素な説明文とかであらかた内容を予測するのが早いと思うけど?本を開けないで済むじゃん?」
「ぬはっ!?そ…そんな短縮法が……!?やっぱり加藤君…ただものでは無いわ…そんな抜け道があったなんて!!」
「つか、ラノベとかだとタイトルがそもそもネタバレレベルで内容を要約してくれてるから頭の中で整理しやすいよ?魔王が女勇者に転生しちゃって前世の自分と戦う事になっちゃった件とかさ?」
「たしかに…さっき見せてもらった小説は画期的だったわ…」
「そもそもキャラのセリフだけ読んで進めれば何となくわかるっしょ?時短には向いてるよ?ラノベ」
「成程…画期的なアイディアね」
一見すればアホかな?
と思えなくもない議論をいきなり大真面目に始めた2人。
夏芽さんは頭が良さそうに見えて意外とお茶目さんなのだろうか?
すると冬柳さんがツカツカとやって来て僕の前の空いてる席にどかっと腰を下ろし、僕の目をじっと見つめながら(睨みながら)言って来た。
「また浮気かしら?」
「いったい何処をどう見たらこの状況を浮気と捉えるのさ?」
「少し目を離したら直ぐにコレよ、加藤君と夏芽さんを侍らせて私を挑発してるのかしら?」
「僕はノーマルだ!男に興味なんてない!後夏芽さんは加藤に夢中で僕の事は多分視界にすら入ってないよっ!」
「可哀想なタクちゃん。私がついているからね?」
「ネタで言ってるのか真面目に言ってるのか掴めない所が絶妙だよ冬柳さん。」
「あら私は至って大真面目よ?タクちゃん」
「あ…あのっ!」
僕と冬柳さんがじゃれ合っていると夏芽さんが話しかけてきた。
「何かしら?私は今タクちゃんと大事な話をしているのだけどそれを邪魔してまで私達に聞かせたい用件があるの?」
「貴方達の仲を邪魔する意図は私にはないわ、それに私個人としては貴方達、良い組み合わせだと思うし?」
え?
僕と冬柳さんが?
どう見ても美女と野獣ならぬ美女と草食動物だろ?
「私とタクちゃんが?それはどう言った意味で言っているのかしら?」
「どう言った…?難しい質問ね、…そうね、単刀直入にいうならパズルみたいなものかしら?」
「パズル?」
「えぇ、貴方達、互いに欠けている要素を埋め合わせることの出来る良好な組み合わせに見えるわ」
僕と冬柳さんが?
性格やメンヘラ的欠点を除けば完璧と言って差し支えない冬柳さんに欠けている物ってなんだよ…。
仮に冬柳さんに欠けている物があったとして僕なんかにそれを埋め合わせる事が出来るとは到底思えない…。
「へぇ…貴方良い事いうわね、良くわかってるじゃない、それで?何の用なの」
「お礼が言いたかったの。」
「お礼?」
「ええ、あの時貴方達も、柏木さんや先生が暴れている時に助けてくれたり止めに入ってくれたでしょ?その事のお礼が言いたかったの」
「あぁその事」
「別に気にしなくてもいいよ、僕達もやりたくてしただけだし、それにほとんど役には立てなかったし」
「それでもよ、感謝してるのよ」
「俺からもありがとうだ、真島」
「加藤?」
「いやいや、先生に詰め寄られた時マジで怖かったしお前や他の奴等が助けに入って来てくれなかったらヤバかったわ」
「ま…お前には借りもあるしな」
「うあ?借り?そんなんあったか?」
「はは、こっちの話」
コイツは僕が冬柳さんと裏で付き合ってた事を白状した時も変わらず今まで通り接してくれた。
あの瞬間僕は間違いなく救われた。
兎に角…今日もまた1日が始まる。
長くて短い1日が。




