第25話 ネタバラし
時間は放課後と言って差し支えない時刻に差し迫る。
ホームルームは既に30分以上の延長をかさね、法定の如く重苦しい空気を教室中に広めていた。
その重苦しい空気を作り出す原因となる3人。
教室中の生徒達から冷たい視線を浴びる3人の女子。
柏木達3人は青ざめた顔で今にも泣き出しそうな様子だ。
その柏木達3人はほぼ同時にグルンと担任教師に向き、彼に詰め寄る様に言う。
「先生!!助けて!助けてよぉ!!」
「ねえ…ねえ!!助けてよねえ?助けてよぉ!!」
「助けてくれるって約束でしょ!!」
?……助けてくれるって約束……?
どういう事だ?
「こっ…こら!近づくな!!何が助けてだ!!おっお前達が事の首謀者なんだろ!はっ…はんせいしてこんな事はしないと… 」
「巫山戯んな!!助けるって約束だろうが!!」
「せんこーのクセに約束破ってんじゃね〜あの事バラすぞ」
「や…やめろ!落ち着けお前等…いいからまず落ち着け!!」
「隠す必要なんて無いですよ先生」
「え……?」
担任教師は声量を落とし3人にだけ聞こえる様にコソコソと話し出す。
しかし断片的に聞こえるやり取りから教師もあの3人とグルだと察する事が出来る。
……いや、教師がグルとか…終わってんな。
どうりであの3人に都合良く話が進む訳だ。
女子生徒3人に詰め寄られて何かの言い訳に必死になる教師…しかし加藤はそんな事する必要なんて無いという。
「柏木達と先生の関係についても証拠持ってるんで、隠しても無駄っすよ?先生」
「は…?」
「……」
間の抜けた声を出す教師、加藤は黙って教師の出方を伺う。
「でっ…出鱈目をいうな!教師をおとしめようなんて、お前!自分が何をしているかわかってるのか!!」
「信じないなら別に良いっすよ?この後校長室に行くだけだから」
「おっおまえぇ!!」
激昂し加藤に怒鳴り散らす教師。
これには流石の柏木達3人組も怯みおののく。
そのスマホを渡せ!と教師は加藤に詰め寄る。
アレを取られたら駄目だ…!
僕は加藤を守る様に前に出る。
他の男子生徒も前に出て助けてくれる。
加藤は佐渡に目配せし、佐渡は加藤が何を言いたいのか即座に理解し、教室を出て行った。
それからは怒涛だった。
暴走する担任を男子数人で何とか抑え込み時間を稼ぐ。
そうこうしている内に佐渡が男教師を連れてきて暴走する担任教師を抑えつけ取り押さえた。
間もなく彼は職員室に連行された。
事の中心にあった加藤、佐渡、夏芽、柏木等3人計6人も一緒に連行され、その場は解散となった。
この後どうなるのかは明日にならなければ誰にもわからない。
わいわいと今起こった出来事を話しながら他の生徒達も帰り支度を始める。
僕も冬柳さんと一緒に帰る事となった。
僕は彼女に聞いておきたい事がどうしてもあったから。
「ねえ…冬柳さん…」
「何かしら?」
「……もしかしたらなんだけど…僕に隠してる事とかない?」
「隠しているかどうかは解らないけどまだ話して無い事ならあるわよ?」
「それって…?」
「当ててみなよ?」
この女は……はぁ…。
「………加藤に入れ知恵したのってもしかして冬柳さんなんじゃないの?」
「ふふ、どうしてそう思うの?」
「加藤にしては用意周到過ぎるしなんかアイツらしくなかったから…裏で誰か手を引いてるんじゃないかってね…」
「ふふ、流石たくちゃん!良くわかってるね」
「やっぱり…」
「美代が凪沙をイジメてる犯人だってのは最初から分かってたの…佐渡君の彼女が私から凪沙に変わってあの美代達の標的も私から凪沙に変わるのは分かりきってたからね」
「…俺が知らないだけで冬柳さんも柏木さん達からイジメの被害にあってたの?」
「私はあんな奴等に隙なんて見せないよぉ〜?その為の清楚キャラだったし私にイジメなんてやろう物なら再起不能になるまで徹底的に追い込んで叩き潰してたと思うよ?」
「…そりゃまた、たくましい事だね」
「でも私はもう女子の僻みとか嫉妬に振り回されたく無かったしなるべく穏便に済ませたかった…でも誰かさんのお陰で今はそんな物も無くなって清々しい気分だし今の自由も悪くないって思ってるわ」
「………。」
冬柳さんと恋人である事をバラしたせいで彼女の清楚キャラのメッキは完全に剥がれた。
人気者である佐渡を裏切ってた事が周りに周知され冬柳さんの評価は彼女自身の人気の高さも相まって怒涛の勢いで下がった。
佐渡本人の思いがけない援護がなければ今度こそイジメの標的が彼女になってたとしても何もおかしくは無いだろう。
「私はね…美代達から恨みをかってる事は自覚してたの…だからいざと言う時の為にあの子達の弱みを握っておく必要があったの、あの子達は馬鹿で警戒心もないから弱味は簡単に集められたのよね〜。
表向きには私の事をズッ友とか言いながら裏で私の事をコケにしてるんだもん、ゆるせないよね?」
「…まぁ…気持ちはわかるよ」
「そんなわけで私も裏であの子達の弱みを集めてたのよ…美代達が凪沙の悪口を言ってたのも簡単に録音出来たわ、女って同類だと思った相手にはビックリする程ペラペラと口を開くから面白いわよ?」
「何も面白くないよ…」
「そしたらね…最高のネタを見つけたの!」
「最高のネタ?」
「そ!最高のネタ…これ以上ない弱味!」
「それって…」
「そっ!美代達はね、私達の担任と肉体関係を持ってたの!」
「……やっぱり…」
担任教師のあの慌てふためき様…なにより明らかに担任教師は柏木美代達3人を擁護する様に動いていた。
夏芽華乃の発言を頭から抑えつけ柏木達3人を贔屓する様な立ち回りは公平性に欠ける。
一教師としては明らかにおかしな言動だった。
つまるところ、柏木は自分達の関係をバラされたくないならちゃんと私達を守れと、そう言っていたワケだ。
「証拠になる画像、動画もしっかり撮ってるんだけどね?これがまたとってもキモくて見るに耐えないのよねぇ…まるで豚同士の交尾を見てるみたいで笑える〜」
「しかし凄いな…どうやったらそんな決定的瞬間をポイポイ撮れるんだよ…」
「別に簡単だよぉ〜タクちゃんも機種変とかで使わなくなったスマホくらい持ってるでしょ?私良く機種変するからさァ〜部屋に沢山スマホがあるんだ!」
「うん…」
「それを放課後の教室の色んな場所に隠して録音モードにして放置してればあら不自然!次の日にはいろんなのが録れてるのぉ〜」
「………それ、僕以外に絶対に言ったら駄目だよ!!」
「え?言うワケないじゃん!」
プライバシーもへったくれも無いな…。
やる事が素直にクズ過ぎる。
「それでどうして加藤を巻き込んだのさ」
「タクちゃんが今回の件を解決させたいって息巻いてたじゃん?私としては面倒事に顔を突っ込みたく無かったし、関わりたくなかったの。かと言ってタクちゃんにもあまり動いて欲しくなかったんだよね、だから代わりに動いてくれる人を探してたのよ」
「それが加藤って事?」
「そっ!タクちゃんの友達で私より仲良くしてたからムカついてもうコイツでいぃやって思ってなすり付けてやったの!」
「……マジかよ…」
加藤…すまぬ…
こんど何か奢るから許してくれ…。
「それにタクちゃんの友達なら私やタクちゃんの代わりにこのくらい出来て当然でしょ?」
「加藤としてはいきなりこんな無茶振りされてたまったもんじゃ無いだろうし、今後はアイツを変な事に巻き込まないでやって欲しい。」
「うん、安心して、今回はタクちゃんの友達に彼が相応しいかテストする意味もあったんだけど〜ふふ、彼も中々面白い男の子だね。」
「?冬柳さん?」
「安心してよ、私の心はタクちゃん一筋だからね」
そう怪しく微笑む冬柳さん。
彼女の笑顔は可憐で愛らしくそしてどこか不気味で背筋の凍る様な…そんな笑顔だった。




