第18話 冬柳さんと登校
「そんな隅っこじゃなくてももっとこっちに来たら良いんだよぉ〜?」
「いやいや…そんな訳には…」
夜、就寝時…当たり前の話だが人間には睡眠欲求と言う物がある。
人間は食べる、寝る、繁殖すると言う原初から続く三大欲求があり、此等なくして生物としての本懐を全うする事は出来ない様に出来ている。
つまり何が言いたいかと言えば寝たい訳だ。
しかし寝るにも問題は山積みだ。
普段、自分の家ならばあたりまえの事もこと他人様の部屋…しかもとびっきりの美少女の部屋ともなると寝るだけで大問題だ!
まず初歩的な問題として何処に寝れば言いと言う問題がぶち上がる。
床に雑魚寝がベターと思いそれを実行しようとすれば彼女は
「何してるのかしら?貴方は私のベッドて一緒に寝るのよ?客人をそんな所に寝かせるなんて出来る訳無いでしょ?」
と当たり前の様に言われ意見する様な空気をこれまた当たり前にぶっ壊されてしまう。
結局僕は彼女と一緒のベッドで寝る事になった。
背後から抱きつかれ所謂抱き枕の様な形で羽交い締めにされている。
女の子の温かさ、ぬくもり、柔らかさを感じ、こんなん寝れる訳無いじゃんかっ!!
と内心切れ散らかしてたのに人間とは不思議な物で、気付いたら朝になっていた。
冬柳さんが作ってくれた朝食を食べて2人で学校へ。
正直学校には行きたくない。
どんな噂が立ち込めているかわからないし、それが怖い。
しかしその原因を作ったのは僕自身で理由はどうあれそれに彼女を巻き込んだ。
なら彼女だけ一人で学校に行かせる訳にはいかない。
僕と冬柳さん、2人して通学路を歩く。
まばらに増えて来た生徒達がこちらを盗み見てくる。
何かしらコソコソと話し合っているが直接僕達に話しかけて来る事は無さそうだ。
「ふふふ、これは快適ね」
「快適…?」
「これまでは貴方と一緒に学校に行くなんて夢物語だったし、一人で登校してようものなら誰かしらがワラワラ殺到して来たわ…それが今は誰も来ない…これを快適と言わないでなんて言うの?」
「あ……あぁ…成程ね……あはは…」
僕にとっては当たり前の事過ぎて発想にすら無かったけど彼女は常に取り巻きの中にいた。
それを思うとたしかに今の現状は彼女にとっては快適なのかも知れない。
リア充にはリア充なりの葛藤があったのかもしれないな。
「よ、ご両人、おはようさん、」
「あっ、おはよう、加藤君」
「何かしら貴方?私とタクちゃんの邪魔しないでくれるかしら?」
「うわぁお!辛辣ー!つか、これが冬柳さんの素なの?」
「素だね。」
「まじかよ…清楚カムバック…」
「何?貴方…タクちゃんと無駄に仲いいわね?前から言おうと思ってたのだけど気安いわよ?」
「お前めちゃくちゃ愛されてるな?想像を軽く飛び越えて来たんだが?」
「こうなるのが分かってたら馬鹿正直にカミングアウトなんて出来ないって分かるでしょ?」
「納得!」
「タクちゃん…?私を置いてお友達と仲良くだなんて……放置プレイをお望みなのかしら?良いわよ?この私を放置だなんて……やっぱり貴方は私の期待を裏切らない男だわ……うふふ……うふふふ……」
「冬柳さんが悦に浸ってるぞ?凄いな…こんな冬柳さんは中々見れないぞ…」
「あはは…」
どうなる事かと思っていたけど彼女にとっては生徒達の陰口なんてのは些事に等しいみたいだ。
これなら学校でもなんとかなりそうだと一先ずの安堵をそっと打つのだった。




