第15話 ありのままで
学校で色々あった事を踏まえ、僕は冬柳さんとの関係をもう一度続けようと思った。
とは言っても一方的に関係を壊したのは僕の方だ。
彼女が僕に失望して、僕から興味を失い、付き合う気なんて無くなったというならそれはそれで仕方の無い事だと割り切れる。
僕の自業自得なんだから。
昨日から冬柳さんからのライン、電車は全てブロックしていたから連絡が来ていたかはわからない。
彼女の性格を考えれば鬼の様に来てそうではあるが…。
僕はラインのブロックを解除し、彼女に電話をする事にした。
しかし…。
〜〜♪
スマホから音声とバイブレーションが同時にかかる。
画面には冬柳と記されている。
「まじかよ…」
正直ちょっと怖い…でも逃げては駄目だ。
僕はスマホの着信ボタンをタップした。
「も……もしもし…」
「っ………」
「冬柳さん……?……そのごめん……怒ってるよね…とても勝手な事を言ってるのは分かってるんだ…でも…僕…もう一度君と話がしたくて……」
「……。」
「冬柳さん…?」
「私とやり直したいなら今から私の家に来て。」
「え?でもまだ学校が…」
「何?私とやり直してくれるんじゃないの?」
「わ……分かったよ…今から行けば良いんだね…」
「うん。待ってる」
通話が切れる。
正直もっと詰められると思っていた。
なんなら泣き喚いて話なんて出来ないくらいに取り乱して来る可能性も考慮にいれていた。
だからより不気味に思う。
僕はもしかしたら間違えたかも知れない。
選んではいけない選択を選んでしまった…そんな不安が胸の中をしめる。
「駄目だ駄目だ!決めただろ…ちゃんと話し合うんだ…」
自分に言い聞かせる様に僕は彼女の家に向かう。
冬柳さんは一人暮らしをしている。
何故一人暮らしをしているのか?
親は何の仕事をしていてどんな理由で娘を一人暮らしさせているのか?
本人に聞いてもその理由を話してはくれなかった。
当然だろう。
いくら恋人だからって他人の心の中に土足で入って言い訳が無い。
彼女が教えたくないと言うならそれに従う以外に無いのだ。
その決断を寂しいとか信頼されて無いとか思うのはそれこそエゴだろう。
ただその辺りの事情を多少なりとも知っていたなら僕は彼女の危うさにもう少し向き合えたかも知れない。
学校を早退する事を友人の加藤に伝え、僕は冬柳さんの家に向かう。
電車を二駅程乗り継ぎ、しばらく歩いた距離に彼女が一人暮らしする家はあった。
小さな賃貸の家で特段変わった事もない家。
こんな所にあれ程の美少女が一人で住んでいるのだから驚きだ。
ここには何度も来てるけど今日は緊張感が凄い。
僕はインターホンを押して中の住人の反応を待つ。
すると暫くして「はい…」と言う声が聞こえた。
「僕だよ…真島拓真…」
すると鍵がカチンと開く音がした。
ドアの向こうから現れたのは彼女…冬柳雫だ。
彼女の家だから本人が出て来るのは当たり前な事だけど見知らぬ誰かが家にいて彼女の代わりに出て来るなんて妄想が一瞬頭の中に過って不安になってしまった。
「どうぞ」
「あ…うん。」
「おかしなタクちゃん…もう何度もここに来てるのにどうして緊張してるのかな?」
「え……?そ…それは…」
「ごめんね…少しイジワルしたくなっちゃったの…だって昨日からずっとラインとか電話してるのにずっとブロック解除してくれないんだもん」
「それは悪かったとおもってるよ…僕も頭に血が登ってたと思う…ごめん」
「いいよ…許してあげる…それで何しにきたの?」
「話をしにきた」
「お話…?そんなの必要無くないかな?私は昨日のタクちゃんの失礼な態度や別れるなんて酷い発言を許してあげたし、タクちゃんの浮気も許した…これ以上何をお話するのかな?」
「それは、僕達の今後に付いて…」
「今後?何それ?抽象的だし意味が伝わらないよ?」
「ぼ……僕は…」
「それにタクちゃん黙ってる事…私に隠してる事があるよね?」
「…え……?」
「もう…え?じゃないでしょ?今日学校でタクちゃん、クラスメイト全員の前で私と付き合ってる事を皆にバラしたらしいよね?」
「えっ!?」
何故バレて……いや…そりゃそうか…。
冬柳さんはクラスの…いや、学校全体で見ても人気者だ。
彼女の事を中心にSNSが飛び回っていても何もおかしくは無い。
彼女が知らないって方が逆におかしいだろうな。
「私ビックリしちゃったよぉ!タクちゃん…私を他の男の子に取られるのが心配でクラスメイト全員の前で自分が冬柳さんの彼氏だーー!ってバラしちゃったんだよね…?うふふ…約束違反だけど先に約束破っちゃったのは私だしいいよ…、これも許してあげる」
「冬柳さん…」
「うん?とうしたのかな?」
「冬柳さんは本当に僕の事が好きなの?」
「何言ってるの?好きに決まってるでしょ?」
「そっか…なら…これからは僕ももう自分を演じるのは辞めるよ…」
「………え…?」
「僕は僕のやりたい様にする。君に好かれようとキャラを作るのはやめるよ」
これまで僕は彼女の前で猫を被り続けてきた。
振られたくないと…捨てられたくないと…自分を偽って彼女に好かれそうなキャラを演じて来た。
でもそれも終わりにしたい。
ありのままの僕を受け入れてくれるなら僕は彼女の気持ちに誠心誠意向かい合いたい。
それが許されないなら今度こそお別れだ。
冬柳さん。




