第13話 白状
次の日、学校は大盛り上がりだった。
厳密には学校というより僕が所属するクラスが、ではあるが。
陽キャグループのトップである冬柳さんと佐渡が別れ、新たに佐渡と桜田さんがカップルとなった事が改めて周知された。
桜田さん狙いだった一部の男子生徒はがっくりと項垂れ、同時にベストカップルだと思われていた冬柳さんと佐渡が別れた事実に衝撃を受けている女子も少なく無いみたいだ。
しかし彼等の最も強い興味、関心は別の所に向かっていた。
今日…冬柳さんは学校に来ていない。
彼女は学校を休んでいるのだ。
周囲の人達はその詳しい事情を知らない。
中には佐渡が彼女をふって桜田さんに乗り換えたなんて言い出す奴もいれば桜田さんが冬柳さんを脅して自分が佐渡の彼女の座を手に入れたとまで言っている奴等まで出て来る始末だった。
しかし佐渡も桜田さんもどうやら詳しい事は周りには何も言って無いみたいだ。
本当に良く出来た人達だ、自分達が汚名を被る事になっても他人の悪印象を広める様な事は言わないでいるのだから…。
桜田さんも佐渡も良い奴等だ、そんな奴等が好き勝手に言われて言いワケがない、このままじゃ駄目な事くらい僕にだってわかっている。
「よ、真島、なんかスゲー事になってんな」
「あぁ、加藤か」
数少ない友人の加藤が気さくに話しかけて来た。
「たくっ最低だよなアイツ等、きっと冬柳さん、アイツ等にされた事がショックで学校休んでんだよな。」
「された事ってなんだよ?」
「だから噂のとおりだよ、佐渡の野郎、冬柳さんと桜田の両方に手を出していいとこ取りしようとしてやがったんだよ!たく、男の敵だよな、信じらんねーぜ」
「成る程…男子の間じゃそんな風に広がってるのか…」
「それに桜田さんもヤバイぜ、あの子、前から佐渡狙いだって女子の間じゃ有名らしいし、ずっと前から佐渡の事を狙ってたんだろうな、くそ!冬柳さんが浮かばれないぜ」
「加藤…」
「あん?なんだよ?」
「本当は違うんだよ…そうじゃないんだ」
「は?」
加藤は意味がわからないと言った表情をしている。
僕はそんな加藤を置いて自分の席から立ち上がり教卓の前まで歩いて行く。
教卓の前に立った僕をクラスメイトの皆が何だ何だと見てくる。
僕は教室全体を見渡した後、口を開いた。
「冬柳さんの本当の彼氏は佐渡じゃ無い……、僕だ。」
一瞬静まり返るクラスメイト達。
しかし次の瞬間には教室の中が大笑いによる喧騒で満ち溢れる。
陽キャグループも陰キャグループも例外なく大笑いだ。
何言ってるんだと言わんばかりの意思が蔓延する。
まぁ無理もない、いきなりしゃしゃり出て来たモブ男子がクラスのマドンナ的存在である冬柳雫の彼氏…恋人だとか抜かしているのだ。
友人の加藤すら何いってんだお前?って顔をしているのだから他の連中からすれば痛々しい妄想癖のある勘違い野郎としか思わないだろう。
頭のおかしい妄想変態男とみなされていてもおかしくはない事を今、僕はしている。
まぁ無理もない、こんな事を言い出して、証拠も無いのに誰が信じるのか?
証拠が無いから信じない。
なら証拠を見せれば良い…それだけの事だ。
「証拠なら沢山あるよ?」
「はぁ?お前見たいなパッとしない奴が冬柳さんと付き合えるワケないだろ!」
「そーだ!すっこんでろよ!」
「まぁそう言わず話を聞いてよ…これ、僕と冬柳さんのラインのやりとり」
「はぁ?」
「ちょっ…みせろよ!」
クラスメイトほぼ全員が教卓に集まって来る。
代表として1番態度と声のデカい奴にそれを見せる。
ラインのやりとりとしては僕と冬柳さんが一目で交友関係があると分かる物を選抜しておく必要がある。
それは僕が冬柳さんの家に行く際にお土産としてケーキを買ったよという内容の文面だ。
それに対して冬柳さんはありがと~と写真付きで返している。
別にいかがわしい写真ではない。
その写真に映っているのは普段着のラフな、もっとアレな言い方をするならややだらしない雰囲気の冬柳さんが映っていた。
これでは恋人関係の証明にはやや弱いかも知れないが僕はこれで十分だと思っている。
何故ならコイツ等の言う様に僕は見た目がパッとしない地味な奴だからだ。
そんな奴がクラスのマドンナ、高嶺の花、皆大好き冬柳雫さんとラインのやり取りを写真付きでやってる事、それ事態があり得ないからだ。
もう、その事実だけで彼等の頭は理解のキャパシティを軽く越えて混乱一直線と言う訳だ。
「はあ…?こんなのありえねぇ…」
「ちょっと、本当に本人なんか?」
「いや、どう見ても本人だろこれ?」
「てか、こんなラフな冬柳さん見た事ねーぞ?」
ざわざわとしだすクラスメイト達。
僕はこの場の勢いでまくし立てた。
「僕は冬柳さんと裏で付き合ってたんだ…佐渡や皆を騙してたのは悪いと思う…済まなかった…でも冬柳さんは悪くないんだ…彼女は僕を守ろうと思って嘘をついてくれたんだ」
「嘘?」
「てめ…どういう事だよ?」
「だってそうだろ?僕なんかがあの冬柳さんと付き合ったら反感をかうのは目に見えてるし、それが原因で陰湿なイジメに発展するかも知れない…だから付き合ってる事は秘密にしようって彼女は言ってくれたんだよ…。」
「ありえねぇ!なんでこんな奴が!」
「てかそれって冬柳さんは佐渡君の事ずっと騙してたって事だよね…酷くない!」
「そうだ!酷いよ!佐渡君みたいにいい人騙すなんて!」
「……。」
こうなるのは分かっていた。
と言うより当然だ。
嘘をついて、人を騙していればこの結果は当たり前…言い訳なんて出来る訳もない。
これが俺と冬柳さんがしていた事の代償だ。
「てかさぁ!お前の彼氏気取りな態度がマジムカつくんだよ!!」
「どうやって冬柳さんの気を引いたか知らねーけどちょーしにのんなよ?お前みたいのがマジに冬柳さんに好かれてる訳ないだろ!!!」
「………。」
そんな事はわかっている。
彼女が欲しいのは恋人ではない。
依存出来る他人だ。
それを恋人なんて耳心地の良い言葉に直してるに他ならない。
「……もういい加減にしろ!!」
そんな時に大声を出して場の空気を一旦リセットしたのは佐渡だった。
佐渡は一旦深呼吸を挟み、自身を落ち着かせてから口を開いた。




