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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり

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7 七陣魔導団ゲヘナ

「いい加減泣き止んだら?」

「だって・・・・」


「泣かれると神としても困るんだよな。如月カイト、どうにかしてくれ」

「俺に丸投げするなよ」

 バトルフィールドから元の世界に戻っても、花音はしばらく泣いていた。

 リリスが首から下げていた鍵を服の中に入れる。


「そうだ、本借りに行かなくちゃ」

「あの本なら、たぶん美憂が持ってるよ。表紙にケーキが載っていたやつだろ?」


「え!? そうなの? 早く帰らなきゃ。もしかして、他の本もたくさんある?」

「美憂は読書家だからな。いろんなジャンルの本があるよ」


「えー、えー! 早く帰らなきゃ!!」

 リリスが興奮気味に言う。


「はぁ・・・・つか、学校行って戦闘ってマジで息つく暇も無いな」

 肩を落とす。

 今日授業で何やったか、さっぱり覚えていない。

 別にいいけどな。


「早く、この世界の本読みたい!」

 リリスが手をぐいぐい引っ張ってきた。



「私、カイトについていく」


「えっ!?」

 ナナキと俺が同時に顔を合わせた。


「カイトとリリスを見て、それでも魔法少女になりたいと思ったら、魔法少女になってもいいんでしょ?」

「・・・それは・・・」

 ナナキが困惑したような表情を浮かべていた。


「それもダメなら、お供えにクッキーあげないから。一生」

「げっ・・・・一生!? それはキツい・・・」

「決まりね」

 花音が目を擦って、ほほ笑んだ。


「クッキーが好きってことは西洋の神。ねぇ、ナナキの真名ってなんだったっけ?」

 リリスが首を傾げた。


「詮索禁止だ」

「はーい。お互いにね」

「・・・・・」


「まぁまぁ」

 花音がナナキとリリスの間に割って入る。


「友達になろうよ。リリス」

「と・・・友達? どうしていきなり?」

 花音が泣きはらした顔でほほ笑んで、リリスの両手を掴んだ。

 リリスがびくっとする。


「・・・怖くないの? 私のこと・・・・」


「戦ってるリリスは怖かった。でも、リリスは悪い魔法少女に見えない。自分が知らないからって、勝手に怖くなってただけだから」


「・・・・・?」

 リリスが目を丸くして、硬直していた。


「じゃ、俺は帰るぞ」

「あ、カイト待って」

「私も行く。ナナキも、ほら・・・」

 リリスと花音が走ってついてきた。


「花音が行くってことは、俺も行くのか。面倒くさいな」

 ナナキがぶつぶつ言いながら飛んでくる。




 ズズズズ・・・・

 

「!?」

「ん? どうしたの?」


「嫌な予感がする。リリス、スマホに入っててもらえるか?」

「魔法少女? 私強いから大丈夫だよ」

「命令だ!」

 強い口調で言う。


「う・・・主の言うことは絶対・・・わかった。すぐに呼んでね」

 リリスがぱっと光を散らして、スマホの中に入っていった。

 ナナキが隣に並ぶ。


「君の勘、当たってそうだよ。よく気づいたね。まるで・・・・」

「説明してる時間は無い」

「あ、待ってってば」

 走って校門を出ていった。

 花音が慌ててついてくる。


 中学のときの奴らが花音といることをなんか言ってきたが、何も聞こえなかった。


 一刻も早く家に・・・。





 ガチャッ



「美憂!!!」

 部屋は暗く赤い光が走り、美憂が壁に磔にされていた。

 蔦のようなもので縛られている。


 地面にはドロドロした黒い魔力が水のように流れていた。


「お・・・おにい・・・」

 美憂の前にはおかっぱ頭の白い服を着た男と、黒いシスターのような服を着た魔法少女が立っていた。

 魔法陣の中からは何かが出てこようとして、頭が出てきている。


「っ・・・・七陣魔導団ゲヘナか」

 ナナキがぼそっと呟く。


「カイト!!」

 ポケットに入れたスマホから、リリスの声が聞こえる。

 今、リリスを出すのはまずい。


「ヒーヒヒヒヒ、貴方が如月カイトですか」

 おかっぱ頭の男が目を見開いて高笑いをする。


「妹に何をしている!?」

 金の指輪に触れながら、詠唱をする。


 ― 斬炎剣 ―


「カイト?」

「今すぐ妹から離れろ!」


 ザッ


「かっこいい・・・カイト様」


 キィンッ


 魔法少女が剣を出して、俺の剣を止める。


 短いくるんとした髪が揺れていた。

 西洋の人形と見間違えるくらい、美しい顔をしている少女だ。


「如月美憂には魔神と契約して、魔法少女となってもらいますからぁぁぁ」

「駄目だ。美憂に関わるな!!」


「妹想いのお兄ちゃん。ますますかっこいいです。惚れてしまいます」

 言いながら剣をまとっていた、炎の魔力が塞がれていく。


 こいつ、戦闘慣れしているな?


「そこのぉ、ぼうっとしてる奴らも魔法少女ですか? 邪魔ですねぇ」

 

 ドドドドッドドッドドドド


 おかっぱ頭の男が両手を広げて、弾丸のようなものを撃った。

 ナナキが緑の髪を揺らして、巨大なシールドを張る。


 しゅうぅうううう


「馬鹿が。俺は神だ」

 腕を組んで花音の前に出た。


「こいつは魔法少女じゃない。見学者だ」

「・・・・・」

 花音が硬直して動けないでいた。


「なるほどなるほどぉ・・・じゃ、仕方ないか。契約ですからね。その魔力、魔法少女になれば解放されるものを」

「アモデウス様、どうしますか? 魔神が出れないようです」

 魔法陣からは何者かの赤い手だけが出ていた。


「ふむ・・・魔神が出てこないのですか。この家には固有の結界が張られている気がしますねぇ? もう少し待ってみましょうか」

「はーい」

 魔法少女がこちらを見て笑いかけてきた。


「美憂を離せ!」

 蔦を切ろうとした。 


 キィン キィン キィン・・・


 美憂を縛った草が鉄のように襲い掛かってくる。

 剣で弾くので精いっぱいだ。

 まだ、魔力を上手く練られない。こいつらが来る時期が早すぎる。


「クソッ・・・・」

 美憂に近づけなかった。


「美憂! 聞こえるか!? 美憂!!」

 美憂は気を失っていた。

 あの蔦に力を奪われているのか。

 

 この魔法少女を殺せば・・・。


 ガッ

 

「!!」

「カイト様! 私と契約して・・・」

 急に体が引き寄せられて、魔法少女の前に行く。


「あ・・・・彼、もう魔法少女と契約しているようです」

「離せ・・・・」


「残念です。私だけ、私だけが彼と契約したかったのに。あの、私と契約しませんか? 私は契約者を探してる魔法少女、七陣魔導団ゲヘナの一人、ルナリアーナです。次の満月までに主を探さなければいけません。貴方の魔力なら二重契約も許されるでしょう?」

 体が動かない。

 ひんやりとした手で頬を撫でられる。


「冗談じゃない!」

 吐き捨てるように言う。


「ナナキ! 私を魔法少女にして! カイトを助けたいの!」

「駄目だ。それに、カイトは元々助けなんかいらない」


「どうして? このままじゃカイト殺されちゃうよ!」

「・・・・・・」

 後ろのほうで花音とナナキの声が聞こえた。


「やっぱり魔神が現れませんねぇ。魔力の問題だけなのか、ふむふむ」

「あ! アモデウス様。彼と少しエッチなことしてもいいですか? 欲望が高まれば、魔神も姿を現すかもしれませんよ」

 ルナリアーナが興奮しながら言う。


「ね、ね、カイト様」

「駄目!!!!」

 花音が叫ぶ。


「や、や、やめて!」

「へぇ・・・あの子、君の恋人ですか? カイト様のことがずっと好きだったのですね。愛と欲望の鼓動が聞こえます」


「へっ・・・・?」

 花音の頬がピンク色になっていった。


「でも、私がカイト様に相応しい魔法少女になりますから。共に戦いましょうね、カイト様」

「・・・やめろ。お前に興味はない」


「私、清純に見えて、結構大胆なんですよ。カイト様にだけですけどね。こうやって」

「ルナリアーナ」

「!!」

 唇を重ねようとした瞬間、ぴたっと止まる。


「そうゆうのは後でやってください。仕方ありません。彼女も弱りましたし、いったん、降りるとしましょう。おっと、そのガキも、連れて行きますか、普通の人間とは違う何かを感じますねぇぇぇぇ」

 ぎょろっとした目でこちらを覗き込んだ。


「承知しました。じゃ、行きましょう、カイト様」


 魔法陣を展開した。


「カイト、今すぐリ・・・」

「これを・・・頼む」

 ナナキに指で言うなと合図をする。


 力を振り絞って、ポケットからスマホを出して廊下を滑らせた。

 ナナキが受け取る。


 シュンッ

 

「カイト!!!!!」

 花音の叫ぶ声が聞こえる。

 身体が浮くようにして、真っ暗などこかへ落ちていった。

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