表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第四章 『RAID5』から

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/87

59 花音との再会

「カイト様! 『RAID6』になると、バスタブが広くなってて、泳げるくらい広いんです! えっと・・・それから・・・明かりがなんだかえちえちな雰囲気なんです!」

「・・・は・・・・・?」


「一緒に入ったらいい雰囲気になると・・・きゃっ・・・・」

 ルナリアーナがバスタオル1枚で談話室に入って来た。

 周囲の魔法少女たちが一斉に俺のほうを見る。


 視線の圧で、椅子から転げ落ちそうになった。


「ルナリアーナ! そんな格好で出ちゃ駄目だってば」

「ノア様・・・・あの・・・服が・・・」

 近くにいた魔法少女が呟く。


「あ・・・・・」

「人のこと言えるのかよ」

「私もバスタオル1枚だった。危ない危ない」

 ノアがへらっと笑う。


「2人もアウトよ。もうっ・・・私が監視するから」

「えー、監視されるならカイト様がいい!」

「ルナリアーナってばカイトのことばっかり」

 ノアが頬を膨らませる。


「だって、カイト様ともっと関わりたいんだもん」

「べ、別に、いいけど・・・カイトと話したいのはルナリアーナだけじゃないもん・・・」


「ハイハイ、とりあえず服を着てからね」

 ティナがルナリアーナとノアを押して、部屋を出ていった。


 魔法少女たちと主たちのざわめきが聞こえる。

 何かを誤解された気がした・・・。




「カイトって本当、モテるよね」

『昔からそうなんだよ。まぁ、俺にはエリンちゃんがいるしいいんだけど』


「・・・・・・」

『ん?』

「いえ、別に・・・」

 ファナがカマエルを見て真顔になっていた。


 息をつく。


「2人は『RAID6』への影響は何もないか?」


『俺は全然。何も変わらないよ』

「私も。『RAID6』に移行して、数日経って、今のところ大きな混乱はないものね。セイレーン城の内装は変わって、広々とした雰囲気だし」

 周囲を見渡しながら言う。


 地図は軽く周りを飛んだ限り、ほとんど変わっていないように思えるが、セレーヌ城は少し違った。

 全体的にも広くなった印象だ。

 談話室が設けられ、軍の魔法少女たちや戦士たちがゆったりできるほどのスペースが確保されていた。


 七陣魔導団ゲヘナに合わせて生成されたようにも思える。


「私、『星空の魔女ウィッカ』との戦闘、ずっと見てたの」

「どうだった?」

 ファナが長い瞬きをした。


「ここにいるみんなは、私が思っている以上に強かった。ちゃんと見ていなかったのは私のほうだった。みんな頼もしかった・・・」

「そうか」


「でも、カイトが無茶して死んだら絶対に許さないからね」

「わかってるよ」


「じゃあいいけど。そういえば、『星空の魔女ウィッカ』の姫はどこに行ったの?」

 ハーブティーに口をつけながら言う。


「あれから一度も見かけないんだけど。ティナたちも知らないみたいだし」

「ステラのことか。俺も聞いていないよ。美憂がここに誘ったみたいだけど、頷いてどこかに行ったきり、戻ってこないらしい」

「へぇ、意外・・・絶対に仲間になると思ったのに」


『カイト・・・さっきの話だけどさ』

 カマエルが体を起こして視線を合わせてくる。


「朝の話なら、終わりだ。このままでいく」

『命取りになるって、もう一回考え直してよ。カイトは昔からそうなんだ。過剰な情は魔神に必要ない。忘れたのか? 俺たちは魔神だ』


「俺は、今、人間だけどな」


「えっ、急にどうしたの?」


『・・・・・・・・』

「・・・・・・・」

 周りの視線がこちらに集まってるのに気づいて口をつぐむ。

 

「外で話そう」

『了解』

 ハーブティーを飲み切って、談話室を出ていく。

 カマエルが移動すると、ファナも慌ててついてきた。




「え!? ノアが・・・?」

 ファナがベンチに座ったまま、目を丸くする。

 セレーヌ城の城下町にある噴水の前でノアのことを話していた。


「信じられない・・・そんな兆候一切無いのに」

「カマエル、勝手に人の会話を盗み聞きするなよ」


『ノアは外すべきだ』

「外さないって何度も言っただろ?」


『俺は七陣魔導団ゲヘナの魔神でもある。情報を、得体のしれない組織に流し続けることになるんだぞ』

 カマエルが語気を強める。


『相手は魔神を創り出して、魔法少女と契約させた。神を創り出すなんて、ありえない。魔法少女戦争にエントリーできているだけでも狂ってるのに、このまま七陣魔導団ゲヘナに置いておくなんて、危険すぎる』


「神は人間の信仰から生まれる。全くない話じゃないだろうが」


『サマエルはわかってない。ノアの話していた研究機関は、神と同等の力を人間が得ようとしているんだ。魔法少女戦争のはじまりを覚えているだろ?』


「そのサマエルで呼ぶなと言ったはずだ」

『っ・・・・』

 睨みつけると、カマエルが少し引いた。


「カイト、カマエル、少し落ち着いてよ。魔法少女の研究機関っていうのが、どんな組織なのかもわからないんでしょ?」

「あぁ・・・ノアも記憶が曖昧だ」


「それなら、今はノアを抱えておいたほうがいいんじゃない? 魔法少女の研究機関が魔法少女戦争にどうかかわってくるのかもわからないけど、ロンの槍を巡る戦いでぶつかることは確かでしょ」


『・・・・・・』

「何も手掛かりのない敵を倒すのは難しい。ここは電子世界、純粋な魔力だけの勝負だけじゃないんだから」

 ファナが自分に言い聞かせるように話していた。


 ノアのいた研究機関が如月タツキと関わっている可能性も考えていた。

 話を聞く限り可能性は薄いが、ゼロではない。


『はぁ・・・カイトには逆らえないよ。もしノアの契約した魔神が何の信仰も受けて無い奴で、研究所の奴らが強引に神の力を手にすることを目的としているなら・・・容赦なく潰しにいくからな。魔神としての役割だ』

「あぁ」

 カマエルが不満な表情を残しつつ、腕を組んだ。



 タンッ


 噴水の反対側に、魔法少女の気配がした。

 はっとして振り返る。


「カイト・・・?」

「花音? どうしてここに・・・」

 噴水の水が収まっていくと、魔法少女の姿をした花音が立っていた。

 ふわっと飛んでこちらに来る。


「あ・・・会えると思わなかった・・・」

「我が連れてきた」

 ステラが花音の背中から、ひょこっと顔を出す。

 白いモフモフの尻尾で花音の顔を覆っていた。


「ふわあぁ、前が・・・」

「すまぬ」


「ふぅ、ステラくすぐったいってば」

「ふむ」

 花音がステラの尻尾を避けながら言う。


「ステラ?」


「どうしてステラと花音が一緒にいるんだ?」

「えーっと・・・『RAID6』に移って、散策してたらこの子と会って・・・」

 ステラが花音の腕の中からこちらを見る。


「我がここに転移させてきた」

「なんでだよ」


「花音は我の母と似てる」

「・・・・・・・」


 なるほどな・・・。


「え!? 母親?」

 花音だけが驚いていた。


「ふむ・・・母だ」

「うーん、ステラのお母さんってどんな人?」


「おいおい話す」

 甘えるようなしぐさをしながら耳を掻いていた。


「・・・・・・・」

 Vtuberとして人気になったイルアーニャと花音を重ねたか。

 ファナが遠くからこちらを見つめている。


「カイトはリリスと一緒じゃないの?」

「まぁ・・・話せば長くなる。今の仲間を紹介しないとな。セレーヌ城に行くぞ」


「セレーヌ城・・・? そこのお城ね。見た瞬間、とっても素敵だと思ったの。あ、私もカイトに話したいことたくさんあるんだよ!」

 嬉しそうに言う。


 少し離れたところで、ナナキとカマエルが軽く会話しているのが見えた。

 ファナが何も言わずに、後をついてくる。

 

「ねぇ、カイト、聞いてる?」

「聞いてるって。配信ランキングに載ったんだろ?」


「そう! Vtuberのアバターと上手く使い分けて配信してるの。でも、この魔法少女の姿のほうが好評みたいで・・・」

 花音は魔法少女になる前と、全く変わらず、明るかった。

 一方的にいろんなことを話しながら、城のほうへ歩いていった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ