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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第四章 『RAID5』から

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54 星空のバトルフィールド

 指を動かして、イルアーニャに気づかれないように、通信機器をオンにする。


 ジジジジ ジジジジ


 耳に当てた小さな魔法石を通して、ティナの声が聞こえた。


『カイト、聞こえる? 今見てたんだけど、どうなったの?』

「今から、イルアーニャが極大魔法を展開する」

『え!?』

「焦るな。これくらい想定内だ」

 小声で今から起こりうることを端的に説明する。


 空軍陸軍精鋭部隊には、予想よりも早く戦闘になると伝えるように言った。


「・・・・・」

 美憂がちらちらこちらを見ながら、イルアーニャ、アイカ、フウカの様子を伺っていた。

 フウカの傷を、アイカが持っていた治癒薬で手当てしている。


「じゃあ、頼む」

『わかった』

 

 プツン


 音声が途切れた。


 ゴォオオオオオオオ


「終わった・・・」

 イルアーニャが小さく呟いていた。

 イルアーニャの体を中心として、辺り一面が暗闇に呑まれていく。


「宇宙空間?」

 美憂が周りを見ながら言う。


「イルアーニャのバトルフィールドだ」

「極大魔法って・・・」

「自分の空間に取り込むことだろうな。向こうの戦闘員全員にバフがかかり、俺たちはデバフのかかった状態だ。普通に考えれば俺たちが不利な状況になる」


「・・・そっか。でも、私たちにはみんながいる」

「あぁ」

 美憂は思っていた以上に肝が据わっていた。


 命を投げ出す覚悟ではなく、俺を信じているのが伝わってくる。


「ここは夜空の星々を指す」

 イルアーニャがゆっくりと目を開けて、杖を握り締めながら言った。

 体が闇に光る星のように煌々と輝いている。


「セレーヌ城は全て、私のバトルフィールドに飲み込んだ。星空のフィールド、綺麗でしょ?」

 イルアーニャがうっすら笑みを浮かべる。


「イル、体力も魔力も戻ったよ」

「私たちにも戦わせて。ね、みんな」

 アイカが振り返ると200人程度の魔法少女と、300人程度の戦士たちが俺たちを囲むようにして、戦闘態勢に入っていた。


 オォオオオオオオオオ


 武器を掲げて、声を上げている。

 イルアーニャの指示を待っているのがわかった。


「いい? 如月カイトは殺さないでね」

 イルアーニャが杖を俺のほうに向けながら言う。


「『星空の魔女ウィッカ』のみんな。これから、七陣魔導団ゲヘナを殲滅する。力を貸して」


 オオオォオオオオ


「させない!」

 ティナが言いながら剣を回して、全員にバフを付与する。

 フィオーレ、ルナリアーナ、ノア、リルム、アクアが同時に転移してきて、俺たちを囲んだ。

 

 空軍第1部隊の魔法少女が『星空の魔女ウィッカ』の魔法少女たちに襲い掛かる。


 バチバチバチバチ・・・


 暗闇に火花が散っていた。

 空軍第2部隊の魔法少女たちが闇を上手く使って、第1部隊の魔法少女たちを援護していた。


「そっちも用意してたんだ」

「当然だろ? 言っておくけど、魔神の力は闇にいて発揮するからな」

「ふふ、そうじゃなくちゃ。6人の魔法少女も会えて嬉しいな」


「・・・・・・・・」

 イルアーニャが嬉しそうな表情で視線を合わせる。


 どこで情報が漏れたのか知らないが、七陣魔導団ゲヘナについても、かなり調べてあるようだ。


「イル様!」

「アイカ様、フウカ様!」

 アイカとフウカの横に3人の魔法少女が降りてきた。


「私はなんともないよ」

「よかった」

 イルアーニャよりも年上の大人びた少女だった。


「アイカ様、フウカ様、身体のほうは大丈夫でしょうか?」

「うん、イルのフィールド展開で回復したから」


「この子たちが、七陣魔導団ゲヘナ、7人の魔法少女・・・・」

 3人がティナたちを見ながら言う。

 武器は大剣、杖、拳銃を持っていた。


「あれ? イル様、如月カイトといるのは、如月美憂、妹ですよね?」

「妹は・・・7人の魔法少女に含まれていなかった気がするのですが」

 大剣を持った魔法少女が、イルアーニャのほうを見る。


「そう、確か、三賢のリリスに代わって、前回魔法少女戦争の勝者がいるはずですが・・・・」


「あー、一人は今、休憩中なの」

 フィオーレが軽い口調で言いながら、髪を後ろにやった。


「ね」

「ファナは切り札だもん。ぶっちゃけ僕らの中で一番強いし」

「強さは認めなきゃね。精神的にも魔力も強い。ここまで差をつけられちゃうと、悔しいけどね」

「ティナが誰か褒めるの珍しいね」

 ノアがいたずらっぽく笑う。


「そんなことないわ。ファナだけじゃなく、みんなの強さも認めてるんだから」

「ほらほら、緊張感ないと、カイトに怒られちゃうよ」

 アクアが杖を回した。


「カイト様のために、全力を出しますね。是非見ててください!」

 ルナリアーナが俺のほうを見ながら笑顔を振りまいていた。

 リルムがため息をついて、弓に魔法石を埋め込む。


「ったく・・・」

 頭を搔いていると、美憂がくすくす笑った。


 こいつら・・・。

 イルアーニャのバトルフィールドに呑まれてるのに、焦りもしないのかよ。


「馬鹿・・・なの?」

 イルアーニャが呟く。

 こちら側の予想外の反応に驚いているようだ。

 

「失礼な。私は学校でも頭良かったんだからね!」

 ノアが頬を膨らませて大剣を持った。


「じゃあ、カイトと美憂にイルアーニャを任せていいんでしょ?」

「あぁ、ティナたちは軍の補佐とこいつらを倒してくれ」


「了解」

 

 ― 水龍寄無効化アクア・クリアランス ―


 アクアが魔法陣をいくつか展開して、水龍を出現させる。

 清らかな水が跳ねるように、水龍が通過していき、周囲からバトルフィールドのデバフが消えていった。


「僕が援護する。ノア、フィオーレ」

 アクアは軽く飛んで、次々に魔法陣を張り巡らせていった。


「よろしくね、アクア」

「フィオーレ、行くよ」

 

 ドドドド・・・


 ノアが大剣を伸ばして、アイカとフウカに向かっていく。

 フウカが瞬時に移動して、ノアの後ろに回った。


「あ、ティナ」

「ノアはそっちをお願い。この子は私が相手するから」


「うん!」


 カンッ


 ノアがアイカの攻撃を見ずに止めていた。


「このちびっこいガキが・・・」

「そっちだってガキじゃん」


 ― 豪炎フィグア ―

 

 ノアが大剣を振って、炎を巻き起こす。


「・・・くっ、面倒ね」 

 ティナが剣をフウカの魔法陣に突き刺して止めていた。


「七陣魔導団ゲヘナに剣を向けた貴女たちがいけないのよ」

 フウカが離れると同時に、ティナも距離を置いていた。


「逃がさないから!」

 『星空の魔女ウィッカ』の3人の魔法少女が、フィオーレの攻撃を避けながら、上昇していった。

 フィオーレが真っすぐ飛んで、追いかけていく。


 リルムが矢を放つと、矢が炎のドラゴンに変形した。


「今回もよろしくね」

 炎のドラゴンに乗って、フィオーレたちを追いかけていく。 


 キィン バチン バン バン


 宇宙の中にいるような、星空の空間で敵同士が互いにぶつかる音が響いていた。

 賢者がステータス異常を無効化しているからか、イルアーニャのフィールド内にもかかわらず、大きな影響を受けているようには見えなかった。



「配信のときは、いつも上手く編集するの。このバトルフィールド内なんか見せたら、閲覧者が減っちゃうから。みんなが求めるアイドル像を演出しなきゃ、トップにはなれないのよ」

 イルアーニャが杖を剣に変える。


 一人だけ、スローで動いているように見えた。


「でも、七陣魔導団ゲヘナが、空軍機なくても強いのは、意外だったかな」


「7人の魔法少女に及ばないとはいえ、こっちは魔神と契約した魔法少女だ。甘く見るなよ」

「ふふ、そっか」


「・・・・・」

 天を仰ぐ。

 魔法少女、戦士たちが、激しく衝突していた。


「全員、空中戦は得意ってことね。さすが空軍機の魔法少女。ただの機体好きの集まりだと思ってたけど、違って安心した。一方的な虐殺になったらどうしようって思ってたの」

 イルアーニャが大きな瞳で、羨ましそうに戦闘の様子を眺めていた。 



「ここでボケッとしてるつもりは無いんだろ?」

 ルピスの刃のコードを刻み直す。


「そうね。私たちも戦わなきゃ。もっと近くで、七陣魔導団ゲヘナの魔法少女と主たちが死んでいく様子を眺めていたいけど、聞いてくれないよね」


「私たちは負けない!」

 美憂が声を荒げる。

 俺と自分にバフを付与して、攻撃力を上げた。


「おにい」

「あぁ」

 美憂と同時に加速して、イルアーニャに突っ込んでいく。

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