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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第四章 『RAID5』から

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51 魔法少女の戦い方

『こちら空軍第4部隊、賢者グリフトです。ただいま到着しました』

「お疲れ様。みんなにゆっくり休むよう伝えて」

『かしこまりました』


 プツン


「・・・・ふぅ」

 モニターが切れると、ティナがほっと息をついて、伸びをした。


「これで空軍全部隊、到着したわ」

「あぁ、ありがとな」

「安心したらなんだか一気に疲れちゃった」


「お疲れ、ティナ。向こうでババ抜きやってるの。私ばっかり負けるから、ティナも入って」

 ノアがティナに抱きついていた。 


「疲れたって言ってるのに。仕方ないわね」

「やったぁ」

 ノアが嬉しそうにティナの手を引っ張っていった。

 

「ノアは顔に出やすいんだよ。ティナを連れてきたって変わらないと思うけど」

 アクアがトランプをシャッフルしながら言う。


「や、やってみなきゃわからないじゃない。次はポーカーフェイスでやるから」

「無理だと思う」

「ねぇ、リルム、私の心読んでない?」

「読んでない。フィオーレはジョーカーを引いたとき目が泳ぐからわかりやすい」

「うぅっ・・・私にそんな弱点が」

 フィオーレが顔を真っ赤にする。


「リルム言っちゃ駄目だってばー」

 ルナリアーナ、アクア、ノア、フィオーレ、リルムがトランプで遊んでいた。

 

「なーんか緊張感ないねぇ」

「お前が言うなよ」

「俺は研究してるんだよ。現代社会を、あ、ファナ。この動画リストに入れておいて。エリンちゃんのバラード歌ってみたが入ってたから」

「はいはい・・・」

 カマエルがモニターでVtuberえりえりの配信を映しながら言った。

 隣でモニターを操作しているファナが呆れた顔をしている。


「美憂は?」

「ラインハルトと空軍機のみんなを迎えに行ったよ」

「そう。珍しいね。ラインハルトまで行くなんて」

「魔法少女の捕虜がいるかもしれないって、ついていったんだ。いないって言ったんだけどな」


「散々血を吸ったのに」

「久々の血だったから興奮してるのよ」

 フィオーレがため息交じりに、ハーブティーに口をつけた。


「少数制部隊も含め、全員セレーヌ城に戻ったみたいだな」

 ティナがいた椅子を回して、腰を下ろす。


 ルピスの話していた『RAID6』への移行に向けて、セレーヌ城に軍を集結させていた。


 正直、移行がどのように行われるのか見当もつかない。

 『RAID6』への移行が無事終わる保証も無かった。

 一つの場所に固まっていたほうが、移行後に指示しやすい。


 AIのポロは今のところ出てきてないしな。



『カイト様・・・セレーヌ城の北西に魔法少女3人を見つけました。3人だけなのか、こちらを攻撃しようとしているのかは、まだ断定できません』

 シロナがモニターを拡大しながら話す。


『動きは・・・ありませんね』

「なるほど。まぁ、迷い込んだわけじゃなさそうだな」

 3人の姿は、モニターでは小さく見にくかった。


『どうしましょうか?』

「位置情報を記録してくれ。あとは、周辺に何か仕掛けてないか確認を頼む」


『かしこまりました』

「手伝うよ。私も元AIだし、システムのことはインプットされてるから」

『はい。お願いします』

 レベッカがシロナの隣に座って、キーボードを叩いた。



「ルナリアーナ、フィオーレ、探索に行けるか?」

「はーい」

「カイト様のご命令嬉しいです!」

 2人が立ち上がって、カードを重ねていた。


「手は出すなよ。あくまで、見るだけだ」

「倒さなくていいの?」


「敵が3人とは限らないからな。こっちで何かわかったら連絡する。モニターはすぐに表示できるようにしておいてくれ」

「了解」


「カイト様、私の活躍見ててくださいね!」

 ルナリアーナが嬉しそうに手を振った。

 フィオーレが鍵を出して、転移魔方陣を展開する。


「行くよ」


 シュンッ


 魔法陣が輝く。

 2人がすぐに、セレーヌ城の外に転移した。



「陸軍第一部隊がいる方角だけど、大丈夫かな? 私も行ったほうがいい?」

 ノアが心配そうに言う。


「第一部隊は全員セレーヌ城に戻ってることを確認した。問題ない」

「よかったー」



「ねぇ、カイト。どうして軍を解散させないの?」


 ファナがモニターを操作して、えりえりの動画をスローにしながら言う。

 カマエルがじっと、えりえりが踊る様子を眺めていた。


「どうしてそんなことを・・・・」

「今ここに居る魔法少女がいれば無双できるんだから、他の魔法少女と戦士はいらないんじゃない?」

「い、いらなくないよ! 必要だもん」

 ノアが奥歯を噛む。


「あの子たち・・・・七陣魔導団ゲヘナの魔法少女一人一人のステータスは強くない。解散すれば、すぐに他の魔法少女にやられて死んじゃうわ」

 ティナが強い口調で言いながら、ファナを睨む。


「魔神と契約した子たちよ。私たちが守らなきゃ」


「へぇ、そんな甘い考えで魔法少女戦争に挑んでるんだ」

「甘い考え? 軍にいる魔法少女はお荷物って言いたいの?」


「そうよ」

 ファナが髪を耳にかける。


「人数が多くなるほど、誰かが死ぬ確率が上がるでしょ?」


「わかったようなことを・・・・・」

「私は前回魔法少女戦争の勝者よ。七陣魔導団ゲヘナみたいに、軍を形成したり、仲間を増やしたりして戦闘してる子たちもたくさん見てきた」


 長い瞬きをする。


「でも、仲間が増えたからといって、強かったわけじゃない。仲間意識に捕らわれると、かえって自滅していく子たちも多いの。実際、56人の魔法少女と彼女たちを護衛していた戦士たちが亡くなって、ショックを受けてるでしょ?」


「それは・・・・・」


「自分も楽になれたらよかったのに・・・なんて思ってない?」

 冗談交じりに話していたが、目は真剣だった。


「・・・・・」

 確かに、ティナ含め6人の魔法少女は最初の頃と違い、恐れを紛らわせているように見えた。

 アクアがちらっとこちらを見て、視線を逸らす。


 無理に明るく振舞っていたが、仲間の死が与えた衝撃は大きかった。


「私たちは・・・・」

「例外なんて無い。魔法少女戦争のルールはシンプル。生き残って、自分の主を『ロンの槍』に導くことだから」


「喧嘩するなって。ファナ、ティナたちはお前ほど経験値が無いんだから」

「警告してあげただけ。仲間としてね」

 皮肉っぽく言う。


「ったく・・・」


「・・・・・・・」

 ティナが何か言おうとして、こぶしを握り締めていた。


「・・・まぁ、ファナの言うことはもっともだ」


「カイト!」


「魔法少女戦争は遊びじゃない。命の取り合いだ。人数が増えるほどリスクもある」

 指を動かして、画面を切り替えていく。


「でも、ファナ、電子世界は今までと戦い方が違うんだよ。魔法だけの勝負じゃない」


「?」

 ファナが首を傾げる。


「今にわかる」


 肘をついて、他のモニターに各場所に設置したカメラを眺めていた。

 魔法少女がいるのは北西だけのようだな。



「カイト、あの魔法少女の周辺から、電子フィールドの展開も検知されたよ」

「だろうな。敵も電子世界での戦闘を掴んできてるよな」

「うん。結界の張り方が慣れてる気がする」

 レベッカがモニターを見たまま頷く。


『魔力の出力量は意図的に抑えられているように見えます。肉眼じゃなきゃ、魔力の質はわかりませんね。レベッカ、ウイルスが無いか調べましょう』

「了解!」

 レベッカとシロナがそれぞれコードを読み込んでいる。



 ジジジジジ ジジジジ


 バチンッ


『あ、接続できた』


「何かわかったか?」

 モニターにフィオーレとルナリアーナが映った。


『カイト、大変なの! いくつものステルス魔法を使って見えなくなっているみたいだけど、3人の魔法少女の他に、何人もの魔法少女と主らしき者たちがいる。ざっと見て、300人以上・・・もっとかも』

 フィオーレがセレーヌ城から少し離れた位置にある塔に隠れながら、小声で話す。


『ステルス魔法がかなり広範囲にかけられていますよ』

「こっちからの映像だと3人の魔法少女がはっきり見えない。そっちで拡大できるか?」


『わかりました。私の魔法を通して拡大します』

 ルナリアーナが自分のモニターを外側に向けた。    


 ステルス魔法のかかっていない3人は、姿を見せることで俺たちを呼び寄せようとしているのか?

 闇でも聖でもない魔力を感じる。



「うわ! ちょっと待って」

 カマエルが急にモニターに張り付く。


「なんだよ、急に。言っておくけど、どう見てもエリンの魔力じゃないぞ」


「俺がエリンちゃんを間違えるわけないだろ? 見て。この真ん中の子、配信ランキングでエリンちゃんを抜いて1位になってた子だ」

 拡大したモニターに映る魔法少女を見ながら言う。


「え・・・・?」

「配信者ランキング1位の魔法少女・・・?」


 3人の魔法少女の真ん中にいる子は、ゲーム配信者ランキング1位の、イルアーニャという少女だった。

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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 魔法の演出はまさにRPGのゲームをプレイしてるような感覚で、 会話による構成は想像力を掻き立てました。
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