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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第三章 最初の罪

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17 ねぇ、⑤

「リリス、2人で、マリアを助けに行こう!」

 メイリアがリリスに手を差し伸べる。


「私たちは『聖杯』に選ばれた。きっと、今の状況も変えられる!」

「・・・うん」


「勝手に話を進めるな」


「げ、ヘカテー。待ってって。結界が」

「それくらい何とかしろ」

 ヘカテーが杖に結界を張らせたまま、メイリアとリリスのほうへ歩いていった。

 カマエルが慌てて結界を強化した。


 魔法少女アンドロイドはカマエルが突き刺した剣をするりと抜けていた。


「お前らには今すぐ神との契約が必要だ」

「契約?」

「そう、私たち契約しなきゃ。力を制御できないと危険な存在になっちゃう」

 リリスがメイリアの前に立つ。


「お姉ちゃん・・・」

「そんなの後でいいよ。今はこの魔法少女を殲滅させなきゃ」


 メイリアが杖を大砲のようなものに変えた。


「ちょっと失礼」

 肩に担いで、照準を合わせる。

 

 ドドドッドドドッドドドドッドッドドドド


『!!!!』

『緊急事態、緊急・・・』


 魔法少女アンドロイドに向かって大砲を放っていく。

 ヘカテーの張った結界は破れて、次から次へと消滅していく。

 抵抗する間も無く、悲鳴すら上がらなかった。


『こちら"402"、メイリア、リリスが動き出した』

『修復・・・不可・・・』

「次はあんたたちだから」

 

 ドンッ ドンッ


「え・・・・・・」

 カマエルの剣が効かなかった魔法少女アンドロイドが瞬時に消えていった。

 遺体は残らない。

 光の粒がちらちら舞っているだけだ。


「お姉ちゃん・・・?」

 ユウミが震えながら、メイリアに近づく。


「ユウミ、もう心配いらないからね。貴方たちは神だけど、魔法少女アンドロイドには私たちしか敵わないようになってるのかもしれないよ」


「んなこと、ありかよ」

 カマエルが気が抜けたように剣を降ろした。


「忠告だ」

 ヘカテーが低い声を出して、メイリアを見下ろす。


「早く契約しなければ、代償を払わなきゃいけなくなる」

「契約したら、今ほどの力は出せないんでしょ?」

「そうだな。お前らは無限の力を与えられているようだ」

 顔をしかめた。


「ヘカテーのいう通りだ。契約しろ。『聖杯』の力は人間の体に留めていられない」

 リリスの目を見る。


「メイリア」

「それじゃ、守れない! マリアだって失いたくないし、リシテア王国も・・・私の街も・・・この大陸だって救いたい! この力があれば、全てが可能なの!」

 メイリアは明らかにテンションがおかしくなっていた。


「ね、リリス。空飛んでいく暇ないから、転移するよ」

「ま、待っ・・・」


「リリス!」


 シュンッ


 メイリアが一瞬で、転移魔方陣を展開して、リリスとメイリアが消えていった。


「魔法を手に入れると、人間ってあんなふうになるんだ」


「お姉ちゃん・・・・」

 ユウミが服をつまんできた。


「かなりまずいことになったね」

「2人が向かったのは、リシテア王国だ。リシテアの様子も気になる」

 カマエルが9つの剣を1つにした。


「魔法少女アンドロイドとやらを一掃したのに、空に展開された魔法陣は弱まっていない。私も『聖杯』に関する情報収集を急ぐが、あのまま2人が魔法を使えば、間違いなく代償を受ける」

「わかってるよ」

「そうか・・・」

 手を握り締める。


 もう、止められないところまで来ている。



「『聖杯』もどこに消えたか不明だ。今は何の力も感じないよ。地面はただの砂だ」

 カマエルがしゃがんで、『聖杯』のあった場所を触っていた。


「あの・・・お姉ちゃんは・・・大丈夫だよね?」

 ユウミが顔を真っ赤にしてこちらを見上げる。


「生きられるよね?」


「・・・全力を尽くす。黒猫、カラス、ユウミを守れ」

『かしこまりました』

「ユウミはいつもの家で待っててくれ。外には出るな」

 黒猫とカラスがどこからともなく飛んできて、ユウミに寄り添った。


 ユウミが小さく頷く。


「カマエル、行くぞ」

「了解。サマエル、その翼の怪我大丈夫なの?」

 翼に血が滲んでいた。


「問題ない。ただの兄妹喧嘩だ」

「えっ、兄弟ってミハイルだよね?」

「まぁな」

「やっぱりセフィロトの神も来てるのか。なんか面倒なことになって来たな。って、サマエル、待ってよ」

 リシテア王国のほうへ向かっていく。

 カマエルが慌ててついてきた。

 



「!?」

「この短時間で・・・」


 悪夢ようだ。

 リシテア王国に妖精はいなくなり、花は戦闘で血にまみれていた。

 戦士らしき者たちは、ほとんど立てる者はいなくなり、地面に寝そべって救護を待っていた。


 ― 斬炎剣 ―


 マリアが舞うように剣から炎を放った。

 魔法少女アンドロイドたちが光の粒になってきていく。


 ザッ


「姫様・・・・」

 倒れている騎士が、血を流しながらマリアに声をかける。


「声を出さないで。傷口が開いちゃう」


「君は・・・」

「私はルーリア家のメイリア。貴方の怪我を治せるから」


 ― 生命の雫 ―


 ポタン・・・


 メイリアが唱えると、水が傷口にしみ込み、騎士の傷が癒えていった。


「こっちも頼む!」

「今行くね。このまま安静にしててね。少し貧血になるかもしれないけど、ちゃんと治るから」

「こんな・・・奇跡だ。俺は骨も折れてたし」


「奇跡ってあるんですよ」

 メイリアがほほ笑む。

「あ・・・ありがとうございます」

 怪我人の傍にいたおばあさんが泣きながら礼を言っていた。


「負けるかよ。俺たちの国を好き勝手にしやがって!」

「そうだ。俺はまだ戦える! 姫様の手を汚さなくても」

 

 魔法少女アンドロイドが瞬時に移動する。


『敵、とみなします』

『では、プログラムの通りに』

 魔法少女アンドロイドたちが杖を回して、3つの魔法陣を展開していた。

 ぐるぐる回りながら、戦士たちを囲む。 


「クソッ・・・・」

「これでは民間人も巻き込んでしまう」


 ― 極大魔法、テンペスト ―


 リリスが両手を上げた。


 ザアアァァアアァァァ


 嵐が巻き起こった。

 3つの魔法陣は弾けるように消えていく。


 魔法少女アンドロイドたちが人形のように吹っ飛ばされた。


「だ・・・大丈夫・・・?」

「あぁ・・・うん」

 人間たちが呆気に取られている。


 城下町を見渡す限り、魔法少女アンドロイドは見えなくなった。


「すごいね、リリス。サマエルと同じような力だ」

 カマエルが剣を降ろした。


「俺の力は魔法少女アンドロイドに効かないって」

「神々全員無理じゃない? まさか、『聖杯』の水を飲んだ3人しか止められないとは」

 マギアシステムから魔法少女アンドロイドたちは降りてこなくなった。


 でも、魔法陣は少しも崩れていない。

 コアとなる部分・・・。


 中央に、魔法少女リリスがいるのか?

 


「マリア! 大丈夫?」

 リリスがマリアのほうへ飛んでいく。


「ありがとう。来てくれたのね。何とか魔法少女の猛攻は止められた。でも、負傷者が・・・あ・・・」

「いきなり力を使い過ぎだ」


「・・・サマエル・・・」

 よろけるマリアを支えた。

 息切れしていて、魔法を使える体力は残っていない。


「でも、行かなきゃ・・・私の国のみんなが・・・」


「マリア、負傷者は私たちが治療していくから大丈夫。安心して」

「私も手伝うよ。マリアは休息をとって」


「みんな・・・ありがとう」

 マリアが目を擦った。


 カマエルがじっと遠くを見つめている。


 ― 生命の雫 ―


 メイリアが血だらけの戦士に手を当てて、治癒魔法を唱えていた。

 リリスもすぐに崩れた家を飛んで、負傷者の手当てにあたっていた。

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