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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第三章 最初の罪

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13 ねぇ、①

『じゃあ、後はよろしく。私はコアに戻るから』

『承知しました』


「は? ちょっ・・・・」

 魔法少女のリリスが一瞬で消えていった。


『魔法少女リリスは、あのマギアシステムのコアに戻ったのです』

『魔法少女アンドロイドへ的確な指示を出すために』


 "102"が空に広がる巨大な魔法陣の中央を見つめながら言う。


「何を企んでいる!?」

 カマエルが"102"に剣を向ける。


『今からこの大陸は魔法少女が支配します。逆らう者は殺します。未来の魔法少女のために』


「支配って・・・」


「この大陸の・・・みんなをどうするつもり!?」

 マリアが震える手を握り締めていた。


『聖杯、ロンギヌスの槍に関わる者たち・・・リリス、マリア、メイリアの周囲の人間を全て殺します』


「そんな・・・・」


「お姉ちゃん」

「身体が・・・動かない。私のせい・・・なのかな。私が『聖杯』なんて言葉を出さなければ、『聖杯』なんかに興味を持たなければ・・・あのリリスがいう未来にならなかったのかもしれないのに」

 メイリアがその場に膝をつく。 

 顔は青ざめて、うっすら笑みを浮かべていた。


「永久の石化? なって当然よ! 私のせいなんだから」

「お姉ちゃん!」

「あはは、私、怖いのに・・・怖いのに、怖いのに・・・私のせいじゃん」

 涙を流しながら髪を掻きむしっていた。


「そんなこと言わないで・・・お姉ちゃん」

 ユウミがメイリアの服をつまむ。


「メイリア・・・」

 



 ジジッ


『"002"加勢します』

『"112"加勢します』

 "002"と"112"を名乗る魔法少女が剣と長い槍を持って現れた。


「なっ・・・・」

「マリア、下がってろ」

 使い魔の猫がマリアを引っ張った。


 ― 悪魔の業火デーモンズ・ファイアー


 剣を地面に突き刺して、魔法陣を展開した。

 燃え盛る炎が"002"と"112"を取り囲む。


 バサッ ザザザザザ


 木々が折れて倒れていた。


「は・・・?」


 "002"も"112"も冷気のシールドのようなものをまとって、何のダメージも負っていなかった。


『炎には冷気。問題ありません』

『マギアシステムから来る魔法少女にはリリスと同様の力が備わっています。リリスがコアにいる限り、我々は最強の魔法少女です』

 

 しゅうぅううう


 "112"が槍を振り回すと、炎が鎮火していった。

 短い髪がふぁさっと揺れる。


 ― 雷龍ドラグーン ―


 カマエルが剣を青く光らせて、飛び上がった。

 剣がドラゴンのようになって、魔法少女に襲い掛かる。


 ジジッ


 "102"が素早く杖を剣に変えて、カマエルの攻撃を吸収していた。


「なっ!?」

『古い魔法は大体リリスが全て習得しています。神の力であっても』


「クソが」

 カマエルが大きく剣を振り上げた。

 

 ズズズズズズズ


「っ!?」

 地面が黒くなった。

 漆黒の手がカマエルに巻き付く。


「嘘だろ・・・これって・・・サマエルの・・・・」

 カマエルが足首を掴む、黒い手を見ながら呟く。

 剣をかざした。


 ― 無帰リファース ―

 

「っと・・・・」

 光が走り、カマエルを捉えていた黒い手が消えていった。


「サマエル・・・今の・・・」

「・・・・」

 俺の力に酷似していた。


 魔神である俺の力を使いこなせるというのか・・・・?


「私の・・・私の大切なリシテア王国に何する気!?」

 マリアが叫んだ。


「マリア」

「私が死んですむ話なら、早く殺しなさいよ! 国が滅んで私だけ生き残ったって意味ないわ!」


『そうですね』 

 短い髪の"112"が槍を緑に変えた。


『では、遠慮なく削除を・・・』

「止めて!!!」

 リリスがマリアの前で両手を広げた。

 "112"の動きがぴたりと止まる。


「・・・・未来の私がアレなんでしょ?」

『そうですね。彼女が過去の貴女、未来のリリス、ということになります』

 "102"が淡々と話していた。


「じゃあ、私が死んだら、彼女はいなくなる。あの大きな魔法陣も無くなって、魔法少女がこの大陸を乗っ取ることも無くなる!」

「リリス」


『・・・・・・・・・』

 "102"、"112"、"002"が口を閉ざした。


「サマエル、私を殺して」


「・・・できない」

「お願い」

「・・・・・」 

 視線を逸らす。 


「リリス、駄目だよ。そんなの嫌」

 メイリアが泣きながら頭を振った。


「私、死ななきゃ。だって、こうしてる間にも魔法少女たちが魔法陣から降りてきてる。私のせいでこんなふうになっちゃうんでしょ?」

『そうですね』


「殺して」

「できないよ」

 カマエルが砂埃を払って言う。


「君が死んで解決するなら、そうしたいけど、未来はそう単純じゃない」

「ここまで大きな出来事は、タイムリープができたとしても変わらない。あのリリスは何回タイムリープしてるんだ?」

 巨大な魔法陣を見つめながら言う。


『タイムリープの成功は3回です』

「2回、失敗してるんだろ?」 


『それは・・・・』

 魔法少女アンドロイドたちの会話のテンポが遅くなった。


『そうですね・・・・。なので、魔法少女リリスは人数が必要だと考え、魔法少女モデル、アンドロイドを複数用意しました』

 "102"が魔法陣から降りてくる、魔法少女たちを見つめながら言う。


『今度こそ成功させます』

『そして、マギアシステムのコアにある、リリスと共に私たちも消滅するのです』

 声高らかに言う。


「お前らの言う、魔法少女戦争が行われる未来はどうやったって変わらない。状況はますます悪化してるんじゃないのか?」

『・・・・・・』


「戻せないんだよ。もう、君らが避けたい未来は避けられない」


 会話が途切れた。

 大きく未来を変えようとする力が加われば、未来は変えようとした者の望まない方向に傾いていく。


 永久にな。


「この一連の流れは全て無駄だ。わかったら手を引け」

 カマエルが呆れながら剣を降ろした。


『できません』

「強情だな。2回やっても駄目で、全員殺そうとしてるんだろ? この地が更地になったって、魔法少女戦争はやってる」


『プログラムを組み直します』

『マギアシステムにより、魔法少女がこの大陸を支配します。不可能を可能にするのが、私たちアンドロイドですから』

 "002"が語気を強めた。


『私たちは確実に成功させます』


「お願い・・・止めて、みんなを殺さないで・・・」

「リリスお姉ちゃん!」

 ユウミがリリスの手を取る。


「え?」

「一緒行こう。『聖杯』の場所、私、わかるから・・・。彼女たちと対抗するには、魔法と同じ力が必要なんでしょ?」


『『聖杯』のことを知る者は殺すよう、プログラムされています。彼女を対象とします』

「っ・・・・・」

「ユウミちゃん!!」

 リリスがユウミに覆いかぶさる。

 

 キィンッ


『!?』

 "102"の剣を止めた。


「物理攻撃は弱いみたいだな」

『いえ、私たちはマギアシステムがある限り、不死ですから』

 "112"が飛び上がり、槍に電流のようなものを流して、突いてきた。


「わっ」

 剣を消した。

 リリスとユウミを抱えて避ける。


『遠隔攻撃に切り替えます。弓矢を装備』

 魔法少女アンドロイド"002"も"112"も"102"も本気で殺そうとしているわけではない。


 迷いがあるのか?


 魔法少女リリスは何を壊そうとしている?

 何を変えたいんだ?





 サアアァァア 


「魔法を使う少女か。地上がえらいことになってると聞いて、来てみたら・・・確かにな。肉体を持たぬ、魔法少女か・・・」

「ヘカテー」

 ヘカテーが蒼い光を放ちながら降りてくる。


「げ・・・・」

「チビもいたか」

「・・・最悪だ。ババァが来た」

 カマエルがぼそぼそ言う。

 なぜか、ヘカテーのことがが苦手だった。


「混沌が始まった。クリフォトの樹の啓示を伝える。サマエル、『聖杯』を探して手に入れ、『聖杯』の意志通りにしろ」

「『聖杯』に意志なんかあるのか?」

「にわかに信じがたいがな。宿っているのだろう。クリフォトの樹の啓示は絶対だ。タウミエルたちは、あの魔法少女の降りた地に向かっている」

「・・・・・・」

「メイリアとマリアは私とカマエルが守ろう」

 メイリアとマリアが寄り添って、震えていた。


「俺、ヘカテーと共闘するつもりないんだけど・・・」


「何か言ったか? さっき、ババァとか聞こえたが?」

「気のせいだって」

 ヘカテーがにやりと笑って杖を出していた。

 魔法少女アンドロイドたちが何かを唱えて、武器を強化していた。


「早く行け!」

「・・・・わかったよ」

 2人を抱えて、翼を広げて飛んでいく。


「サマエル、私・・・・」

「リリス、きっと、あの魔法少女リリスを止められるのは、お前自身だ」

「・・・・・」


「一刻も早く、『聖杯』を探すしかない。ユウミ、頼むな」


「任せて・・・」

 ユウミが目を擦って、小さく頷いた。

 魔法少女アンドロイドが降りていった街では、悲鳴が聞こえてきていた。 

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