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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第三章 最初の罪

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12 マギアシステム起動

「『聖杯』? 初耳だけど」

「ほら、そんなの聞いたことないって」

 カマエルがりんごを齧りながら、ソファーに寝転がっている。


「何もないものにルーリア家は懸賞金を出さないわ」

 メイリアが自信満々に言う。


「私もあると思うな。『聖杯』」

「でしょ? でしょ?」

「根拠は?」

 リリスの作ったお菓子を食べながら聞いてみる。


「・・・・ある気がする」

「リリス・・・・」


「ねぇ、もし、特別な力が与えられたら、この大陸を沈ませないことだって可能かもしれない」

 マリアが前のめりになった。


「大陸が沈んで死んじゃうなんて、やっぱり嫌。最期まで抵抗したい」

「うん、私たちでこの大陸を救おうよ」

 自分を奮い立たせているように見える。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

 カマエルと目が合った。


 大地の神カプリニクスに寿命を与えられた時点で、誰にも覆せない。

 何度言っても、奇跡が起こると信じているんだよな。


 まだ14才だから、夢見がちなのも無理ないか。


「・・・特別な力を与えるとか、本当だったらもっと広まってるし、俺の仕事も忙しくなってるって」

 カマエルが体を起こして、リンゴの芯を燃やした。


「絶対に『聖杯』はある! 人間に魔法を与える『聖杯』・・・お父様が話してたもの」

「お姉ちゃんの言う通り・・・だと思う」

 メイリアの妹のユウミがメイリアに隠れながら話す。


 まだ、5歳くらいの少女だ。


「ユウミちゃんもそう思うよね」

「うん! 誇り高いルーリア家だもん」

 リリスが屈んで、ユウミの頭を撫でる。


「ユウミは口ばっかり」

「そんなことないもん」

「添い寝しなきゃ、寝れないくせに」

「うぅっ・・・それは・・・」

 メイリアが瞼を重くした。


 ユウミの傍に、使い魔の黒猫とカラスが寄り添っていた。


「なんかサマエルのところ、随分にぎやかになったね」

「まぁなー」


 最近本が全く進まない。

 同じページを何度も繰り返して読んでいた。


「ごめんね。ユウミがどうしてもついてくるって」

「だって、お姉ちゃんいつも楽しそうにしてるから、私も行きたくなった」

 ユウミがメイリアの手を握っていた。


「2人とも出て、家の人は心配しない?」

「お父様もお母様も出かけてるの。執事とメイドは上手く誤魔化したから大丈夫」

「うんうん」

 メイリアはリリスとマリアと話すようになってから、強くなった気がした。

 素がコレなのかもな。


「まさか、ユウミまでサマエルたちが見えるとはね」

「うん。ちゃんと見える」


「子供のほうが見やすいっていうしな。ルーリア家は聖職者もいるし、元々感覚が鋭いんだろう」

「はっ・・・・」

 覗き込もうとすると、ユウミが隠れた。


「・・・・・・・」


「サマエル、嫌われてるんじゃない?」

 マリアが的確に指摘してきた。

 どうして黒猫とカラスが好かれて、俺が嫌われるのか・・・。


「あ、ごめん」

『ぐぅううう』

 カマエルの足がペムペムにあたったが、腹を出して眠り続けていた。


「よく寝るね。ペムペムってやっぱり、転移魔方陣使うと疲れるのかな?」

「疲れてるのかは知らんが、ペムペムは元々こうゆう奴だ」

 ふごっといびきをかいて、寝返りを打った。





 ジジジジジ ジジジジジ


「!!」

 花の女神リシテアに案内された、電子世界と似たような空気が流れる。


「動くな!」

「ど、どうゆうこと?」


「できるだけ固まって」

 空中に線を引いて、剣を出す。

 カマエルがメイリアとマリアの前に立った。


 ジジッ



『目的地、確認』

 ふんわりした服を着た少女が現れる。

 金色の髪を2つに結んでいた。

 "101"と同じような格好で、手には杖を握り締めている。


『魔法少女モデル、アンドロイド"102"到着しました。メイリア、マリア、リリスと同一人物を発見』

 分厚い眼鏡のようなものをかけて、一人で話していた。


『はい。お伝えした通り、メイリア、マリア、リリスになります。マリアは生きています』


「っ・・・・」

 マリアがびくっとして固まっていた。


『かしこまりました。お待ちしております』

 誰かと会話しているのか?


「お姉ちゃん」

「大丈夫。ユウミは私が守るから」

 メイリアがユウミの手を握る。


「ペムペム、メイリアとユウミを家に戻せ」

『わかっ・・・』


『それはできません』

 "102"が瞬時に移動して、ペムペムをリボンのようなもので縛り上げた。


『うぐっ』

「ペムペム!」


『魔法少女戦争を終わらせるには、根源から絶たなければいけない。私たちはそのために作られた』


 ザッ


『!?』


「なんだよ、魔法少女戦争って」

 ペムペムを縛っていたリボンのようなものを斬って、ペムペムを抱える。

 "102"が軽やかに飛んで、攻撃を避けていた。


「魔法少女戦争は・・・」

「とにかく、未来から来た奴がこの大陸に来られると迷惑なんだよ!」

 カマエルが剣を振り下ろす。

 

「!!」

 詠唱無しにシールドを出現させていた。

 "102"が杖を回す。


『ここで歴史を変えなければ、少女たちは苦しみ続けます。模索し続け、タイムリープの穴を見つけた。私たちは絶対に逃げない』


「ど・・・どうゆう意味・・・?」

『貴女が三賢になる前の・・・リリス・・・・』


「・・・・私・・・・?」

 "102"がリリスを睨みつける。



 サアァッ


『"102"、起動する。ありがとう』

『いえ』

 リリスに似た少女が、窓からふわりと部屋に入って来た。

 

「リリス!?」


『そう。私は、マギアシステムのコアとなる魔法少女、リリス』

 茶色の髪を後ろにやった。


「魔法少女?」

『そうよ』

「魔法少女って・・・?」


 魔法少女リリスが、真っすぐにリリスを見つめる。


 キィンッ


「リリスに近づくな!」


 リリスの前に剣を突き立てた。


『サマエル・・・・』

 ふっと笑いながら後ろに下がった。


『何もしない場合、起こる未来を説明するね。魔神の花嫁となったリリスは、ルーリア家の令嬢メイリアとリシテア王国の姫マリアと親友になり、冒険の末、『聖杯』を手に入れる』


 ジジ ジジジ


 "102"が魔法少女リリスの隣に並んだ。

 テーブルに載っている皿がカタカタ揺れる。


『『聖杯』の水を飲み、3人は三賢と呼ばれる、世界で初めての魔法使いになる。でも、魔法を手に入れた代償として、マリアには生まれ変わるたびに魔法少女戦争に関わり死ぬ運命を』


「!?」

 マリアが両手を握り締めていた。


『メイリアは石化し、未来永劫戻ることはない。妹のユウミは名を変えて生まれ変わり、魔法少女になる。でも、強大な魔力を持ったとしても、一度も勝ったことはない。死ぬの』


「そんな・・・ありえない。信じないから・・・」

「お姉ちゃん」

 メイリアが強い口調で言いながら、ユウミを後ろにやっていた。


『最後に、リリス・・・』

 魔法少女リリスがゆっくりとリリスのほうを見た。


『リリスは魔法少女になったまま不老不死になる運命を与えられる』

「貴女は・・・・」


『三賢から始まった魔法は、神との契約、主となる人間たちによって広まり、『ロンギヌスの槍』を巡る魔法少女戦争に繋がっていく。魔法少女になった者は人間でも神でもない、ただの魔法少女になるの』

 魔法少女リリスの杖は、時折透けていた。


『全ては、私・・・のせい。私がやるしかない。準備はできた。ここで『聖杯』も『ロンギヌスの槍』も・・・何もかも終わらせる。三賢が生まれる前に、全てを壊す』


「この世界には神がいるんだ。魔神と呼ばれる俺らのことだよ」

 カマエルが剣を回しながら言う。


『知ってる・・・』


「未来から来た奴と人間が接触しただけでも、こっちは大問題だ。俺らが封じてやる。人間が魔法を使えるようになったからって、神がお前ら2人に負けるかよ」


「お前が本当にリリスなのか、まだわからない」


「・・・・・」

「でも、全力でいかせてもらう」


『私たち魔法少女は人間じゃない・・・神でもない。ただの、魔法少女だよ』


 魔法少女のリリスが呟いた。

 使い魔の黒猫にリリスたちをどこかに逃がすよう、カラスに他の神に知らせるように指示する。


『ここで、終わりにしよ。サマエル、ずっと・・・ごめんね。貴方にかかった呪いも解けるから』

「?」

 魔法少女のリリスが悲しげにほほ笑んだ。


 両手を上げる。



 ― マギアシステム オン ―


 カッ


 外が眩いほど光った。

 嫌な予感が走る。


 バタンッ


『サマエル様! 大変です!』

 カラスが勢いよく家に戻って来る。


『空に・・・空に、巨大な魔法陣が・・・』

「!?」

 魔法少女のリリスと"102"が先に外に出ていった。

 神の力を以てしてもあり得ないような、光景が広がっていた。


 窓を開けて、外に飛び出る。


「・・・サマエル、大変なことになったぞ・・・」

「なんだ・・・? あれは・・・」


 天を仰ぐ。

 魔法陣から"101"や"102"のような魔法少女たちが何人も降りてきているのが見えた。 

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