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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第二章 電子世界

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46 約束したじゃないか

 ― 合技・神風炎氷 ―


 フィオーレとノアとアクアが極大魔法を展開し、魔法少女と主に向かって放つ。


「シールドを、早く!」


 ― レヴェル・ウォール ―


 ドンッ


 しゅううううぅうううう


 魔法少女が張ったシールドと、3人の極大魔法が相殺された。

 すぐにファナが飛び込んでいき、息切れしている魔法少女と主を斬る。


「きゃあああぁあああああ」

「マイヤ!!!」


「俺が時間を稼ぐから早く逃げろ。誰かが犠牲にならなきゃ、こいつらに全員殺される!」

 男が前に出て、鉄球を振り回していた。


「はははは、かっこいいね。今流行りのセリフかな?」

 ラインハルトが裏側に回り、魔法少女をもう一人捕まえていた。


「い、いや・・・」

「あぁ、美味しいな。今日は上等なご馳走ばかりだ。やっぱり逃げ惑う魔法少女の血は美味しいね」

「きゃあああああ」

 魔法少女の首にかぶりつく。


「そんなに怯えなくていいよ。一滴残らず吸い尽くすから」


 他の魔法少女はこちらを気にしている余裕はないようだ。

 銀の『魔女』が奇声を発していても見向きもしなかった。


「・・・・・・」

 地面のあちらこちらに、戦士たちの亡骸があった。

 損傷が少ないのが幸いだな。


 応急処置を受けた魔導士が、自分を気にしないでくれとハンドサインを送ってきていた。




 息を吐いて飛び上がる。

 鎖を持っていた魔法少女の頭上に回った。


 素早くルピスのコードを切り替えて、勢いよく剣を振り下ろした。


 キィンッ


「・・・・・・・・・・」

 フードを深々と被った魔法少女が、こちらを見ずに杖で弾いた。


「よくも得体のしれない魔法を使ってくれたな」

「・・・・・・」

 水属性、風属性、火属性、地属性・・・。

 属性を切り替えながら、剣をぶつけていた。


 キィン キィン キィン キィン


 魔法少女は顔を隠したまま、杖から出す魔法弾で攻撃を弾いてく。

 心の中を読まれているように、反応が素早かった。


 強い。あの魔法少女だけ別格だ。

 少し距離を取る。

 

 剣のコードに、別のコードを埋め込んでいった。

 アンドロイドなら電磁波に弱いはず。


 あの魔法少女がアンドロイドか確認させてもらうか。


 キィアアアアアアァァァ


「!!」

 銀の『魔女』が背後から襲い掛かってきた。

 魔法少女が持っている鎖を一本ずつ解き放っている。


「っと・・・面倒だな」

 体勢を低くして避けた。

 こいつらだけでも黙らせなければ、あの魔法少女に近づけない。


 剣を地面に突き立てる。


 ― 伯爵のグレンスター

 

 魔法陣から黒い槍を出して、銀化した魔女たちを串刺しにしようとした。

 フードを被っていた魔法少女が杖を前に出す。


 ― 無効化タスク・キル


「!?」


 サアアァァァァアア 


 伯爵のグレンスターが封じられた。

 魔法少女が唱えた魔法は・・・。


 キィンッ


 魔法少女が杖を剣に変えて、斬りかかって来る。

 素早く受け止めたが次から次へと・・・。


「待て・・・・」

「・・・・・・」

「とりあえず、顔を見せろよ!」


 シュンッ


 ルピスを避けると、フードが切れて、顔が露になった。

 茶色のふんわりとした髪と、ガラスのような瞳、雪のような肌を持つ・・・。


「リリス!」


「!!」

 リリスが剣を杖に変えて、少し下がった。


「どうゆうことだ!? リリスが魔法少女を銀化して魔女に変えたのか!?」

「誰?」


「は?」

「私は貴方を知らない。なんで私の名前を知ってるの?」

 リリスがこちらを睨みつけてきた。


 俺がリリスを間違えるはずがない。

 魔力、戦闘、顔、表情、何を見てもリリスだった。


「『黄金の薔薇団』に連れて行かれたって覚えていないのか? 永遠の眠りにつかされて・・・・『黄金の薔薇団』に何かされたのか?」


「私はずっと『黄金の薔薇団』で戦ってきた。どうして貴方が私と同じ魔法を使えるのかわからないけど、貴方には関係ない」

 リリスが杖を回して地上に魔法陣を展開する。


 ― 悪魔のデーモンズ・ファイア ―


 ゴオオォォォオオオ


「・・・・・・・・」

 この魔法はロストグリモワールに載っていた、俺が創った魔法だ。


 罪人に苦痛をもたらす炎だ。

 闇の炎を感じながら、リリスのほうへ歩いていく。


「っ・・・・・この炎が効かないとは・・・・ありえない。どんなシールドを張ってるの?」

 リリスが警戒しながら、次の魔法陣をいくつも展開していた。


「でも、私のほうが魔法の数は上よ」

 魔法陣が全て、俺のほうを向き、取り囲んでいた。


「リリスの主は俺だろ?」

「私の主は・・・違う・・・」

 リリスが首を振った。


「私の主は、人間じゃないもの!」


「主の命令は絶対だ。すべての魔法を解除しろ」


「え・・・・?」

 リリスが自分でも驚きながらすべての魔法を解いていた。

 銀化の『魔女』の鎖も全て外れる。


 行き場を失った『魔女』がその場に突っ立っていた。


「私に何をしたの?」

「電子世界特有の魔法の使い方を完全にマスターするとはな。さすが、三賢のリリスだよ」


「三賢のリリスって・・・どこまで情報を持っていて、どんな魔法を使ってるのか知らないけど、勝つのは私だから・・・・」

 リリスの言葉とは裏腹に、どこか攻撃に躊躇がある気がした。

 指輪はリリスの魔力と共鳴している。


「使ってないって。どうして俺のこと忘れてるんだ?」 

「わ・・・私にそれ以上近づかないで!」

「?」

 リリスが叫ぶように言う。


「近づくなって、なんで・・・・」

「いいから離れて!!!」


 リリスの魔法少女の鍵が勝手に浮き上がった。


「!!」

 巨大な蒼い剣になり、俺の頭上を周りだす。


「そんな・・・・」

 なぜか、絶望的な表情をしていた。


「なんだ? これは・・・」

「ねぇ、この魔法はルール違反じゃない?」

 カマエルが飛びながら、剣に触れる。


「魔法少女の魔法じゃないでしょ。神殺しの魔法だ。どうして君が使える?」

「・・・・・・」

「三賢の罪をさらに重ねる気か? どこまでも黒い女だな」

 軽蔑するような視線を向けていた。


 剣は真っすぐ俺のほうを向き、周囲には幾重にも魔法陣が描かれていた。

 柄の部分には時計の針のようなものが見える。


「・・・・・・・」

「それとも、長い時間生き過ぎたから、自分が神だと勘違いしたか?」

「違う!」

 カマエルが睨みつけると、リリスが声を荒げた。


「リリス」

「私はこの魔法少女戦争に勝利しなきゃいけないの! 今度こそロンの槍を手に入れて、魔法少女戦争を終わらせる」

 ガラス玉のような瞳が潤んでいた。


「そうだよ。終わらせるんだ。俺たちの力で・・・」

「お願い、近づかないで」

 リリスに手を伸ばしたときだった。


 ガッ


「カイト!!!!」

 頭上にあった剣がカマエルの手をすり抜けて背中を貫いた。


「っ・・・・」

 なぜか痛みはなかった。

 柔らかな雨のような魔力が全身を包む感覚だった。


 頭がかすんでいく。


「か・・・・カイト・・・・?」

「リリスが・・・・如月タツキに何をされたのかはわからない。どうしてこんな・・・空軍機をぶち壊して・・・魔法少女を銀化の『魔女』にする能力を使っているのかも」

 声が掠れる。


「でも、俺は覚えてるよ。リリスのこと・・・」

「・・・・・?」


「ずっと自分を好きでいてほしいって願ったのはそっちだろ?」


 バタン


 視界がかすんで、力が入らなくなり、その場に倒れた。


「どうして・・・・涙が出るの・・・・・? 知らない人なのに・・・どうして・・・・?」

 リリスの頬に涙が伝う。


 体が動かなくなった。

 静かに目を閉じる。


 ファナが大声で何か叫んでいるのが聞こえた。

 カマエルが何か話しかけてきた。


 薄れゆく意識の中で、思い出していた。

 リリスと初めて出会ったときのこと、

 リリスが三賢と呼ばれたときのこと、

 リリスが初めて魔法を使ったときのこと・・・。


 最初の魔法少女から、魔法少女戦争が始まってしまったときのことを。

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