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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第二章 電子世界

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43 善と悪と魔神

「その魔法陣を通して? なんだ?」

「・・・・・・・・」

 ベルナスがラミュートのほうを見る。


「ベルナス、落ち着くんだ。素晴らしいじゃないか。如月カイト様は、ここに来たときはそんな魔法使えなかった。さすが、七陣魔導団ゲヘナの王・・・」



「黙れ」


「うぐっ」

「俺はいつでもお前らを殺せる。質問以外の回答はいらない」

 ラミュートの口を塞ぐ。


「『黄金の薔薇団』にリリスの情報を流した奴は誰だ!?」


「なっ・・・・」

「我々を疑うのですか?」

 全員の顔色に動揺が見られる。


「お前らの中にいることはわかってる。情報を全て吐け」

 安寧のハンズの魔力を強める。


「っ・・・・魔神よ、我らを助けてください!」

 ラミュートが慌てて、祭壇にある魔法陣のほうへ視線を向ける。


「如月カイト様は、先ほどの戦闘で、何者かに操られ、七陣魔導団ゲヘナを壊滅させるつもり・・・・」


 シュンッ


「うわっ・・・」

 矢が飛んできて、ラミュートの口の前を通り過ぎる。

 ファナが2階から弓を構えていた。


「七陣魔導団ゲヘナの魔神が・・・こんなゴミ司祭を信じてカイトに逆らう気?」

 冷たい視線を司祭に向ける。


 ― ファナ、前回魔法少女戦争の勝者か ―


「魔神たるものも、堕ちたものね。カイトを疑ってるの?」


 ― ・・・・・・ ―


「魔神サマエルを疑ってるの?」


 ― そんなわけは・・・―



「煮え切らないわね」

 ファナがイライラしながら、魔法陣に向かって話していた。

 


「生意気な小娘が! 七陣魔導団ゲヘナの魔神を侮辱する気か!?」

 ベルナスが汗を滲ませながら、ファナを罵倒した。

 ファナがため息をつく。

 


 ― 王よ ―


 ― どうされたのですか? ―


 心の中に、声が響いてくる。


「俺に逆らうな、いいな」

 低い声で言うと、沈黙していた。


 魔神たちさえ、騙されているようだ。

 セレーヌ城を覆う奇妙な魔力が、記憶を改ざんしていた。


 如月タツキが出現させたアンドロイドの魔法少女を調べると、なぜか司祭たちの魔力に行き着いた。

 結界を解き、奴らを侵入させたのはこいつらの誰かで間違いない。


 3人の司祭の誰かが、七芒星の魔法陣にいる1柱、魔神カマエルを封じている。

 魔法陣が放つ魔力を、意図的に弱めて隙を作っていた。



「もう一度聞く、『黄金の薔薇団』と繋がっている者は誰だ?」


「・・・・・・・」

 互いに目を合わせながら、口を閉ざしていた。


 ロストグリモワールには、カマエルは戦の魔神であり、罪を犯した者は容赦なく殺すと書かれていた。

 魔法少女戦争に必ず関わる魔神であり、七陣魔導団ゲヘナの核となる魔神であることも・・・。


「話さないなら、強引に話させる」


「なんとぉおおおお」

「ぐっ・・・話すものか・・・」

 指を動かすと、床から伸びてきた安寧のハンズが司祭たちに二重に巻き付いた。


「命令だ。如月タツキがお前らに言ったことを、話せ」

 

『リリスは魔法少女戦争における中心人物。現れれば『黄金の薔薇団』に引き渡せ。魔神カマエルは封じなければいけない。奴は『黄金の薔薇団』の場所を知っているだろう』


「く・・・口が勝手に・・・・」

「なんだ? これは・・・」


『『黄金の薔薇団』の通り道を作れ』


『贄を捧げ、光の柱を作れ。魔神も含め、七陣魔導団ゲヘナにいるすべての者たちの判断力を鈍らせろ。魔術には魔法少女が流す血を使え。魔神カマエルの記憶を奪い、如月カイトには情報を渡すな』


 3人が同時に同じ言葉を話し出していた。


 クズが。

 3人とも黒だったか。


「や・・・止めてくれ。これ以上は・・・駄目なんだ・・・」

 ラミュートが冷や汗を滲ませて、こちらを見下ろしていた。


「何でもする。これだけは・・・」

「全部話せば我々は・・・」


「続きを話せ」

 深く息を吐く。


『『黄金の薔薇団』の拠点は『RAID5』には無い。コードNO100100101101110・・・・が繋ぐ、電子世界・・・』


「うわぁぁあああああああ」

 ベルナスがうめき声を上げる。


 ボウッ


「!?」

 司祭3人が一斉に燃えた。

 一瞬で灰になって消えていく。


 肉の焼ける匂いが漂った。



「あぁぁ・・・そんな、司祭が、司祭様が・・・・・・」

「・・・・・・・」

 ラインハルトがマントで美憂の視界を塞いだ。


「クソが・・・最初からはめられていたとはな。やっぱり、情報を話せば、殺されるような契約になっていたか」

 こぶしを握り締める。


 安寧のハンズを解いて、祭壇の魔法陣に近づいた。



 ― 強制解除アンロック


 シュンッ


「うわー、独白禁止の契約か。人間も悪魔みたいなことするね」

 

 突然、祭壇の裏に十字架が現れた。

 黒い翼をもつ少年が縛り付けられている。


 天使と見間違えるような美しい顔立ちで、12歳くらいの容姿をしていた。


「魔神カマエルか?」


「そうだよ、久しぶりだね。って、さすがにこの体勢じゃ話しにくいな。あ、そこの君」

 カマエルが美憂のほうを見る。


「え・・・・? 私?」

 美憂が目を擦って唇を噛む。

 ラインハルトが肩を叩いて、「大丈夫だ」とささやいていた。


「この縄は純潔の乙女じゃなきゃ切れないんだ。切ってもらえる?」

「お・・・おにい・・・」

「何もないって。ただ外してほしいだけだから」


「問題ない。美憂、頼む」

「うん・・・・」

 美憂が戸惑いながら駆け寄ってきた。


「ごめんなさい・・・私、魔法少女じゃないの」

 縄を掴んで顔を上げた。

 まつげが涙で濡れている。


「この縄、魔力が流れてるのがわかる。どうやって切ればいいのか・・・」

「切れろって思って、引っ張ってくれればいいんだ」


「・・・切れろって?」

「そう、純潔な乙女の願いじゃなきゃ解除できなくて。魔法少女になって契約していないのは、君しかいないみたいだから」


「うん」

 美憂が目を閉じて一呼吸おいてから、ぐっと縄を引っ張った。


 パリンッ


「!」

 縄が弾けて、ガラスのように散らばって消えていく。

 カマエルがふわっと飛んで降りてきた。


「ありがとう。助かったよ」


「・・・え・・は、はい・・・・」

 美憂がすぐに俺の後ろに隠れた。

 ファナが2階から飛び降りてきて、すぐに美憂を支える。


 司祭が目の前で黒焦げになったからな。

 まだ、美憂の手が震えていた。


「おにい・・・・」

「大丈夫。カイトは・・・色々話さなきゃいけないことがあるんだよ。怖いことは、もう起こらないから大丈夫・・・司祭のことはゆっくりと受け止めればいいから」

「・・・・うん」

 ファナが美憂を抱きしめる。

 美憂もファナには心を許しているようだった。


 ファナとラインハルトは、美憂が俺とカマエルに近づかないようにしているのが分かった。

 純潔の乙女なんて、俺らの魔力とは真逆だしな。



「XXXX、じゃなくて・・・サマエルだよね。久しぶりだな」


「カイトだよ。俺は昔の記憶なんてない」

「そっか、しばらく人間やってるんだもんな。はぁ・・・あの司祭に魔神たちは騙されてるし、ったく・・・・」

 カマエルが魔法陣を睨みつけると、魔神が委縮しているのがわかった。


「電子世界に移って混乱してるのはわかるけど、上手く付け込まれる魔神も魔神だ。人間に利用されたら終わりだからな。ちゃんと、反省しろよ」

 七芒星の描かれた魔法陣に向かって怒っていた。


 ゆっくりと歩いて魔法陣に近づく。


「そうまで言うなら、なんで捕まってたんだよ。好きにやらせておいたくせに」

「・・・・・・・」

「正直、七陣魔導団ゲヘナの核となる魔神があっさりと捕まるとは思えない」

 カマエルが口をつぐんでいた。


「『黄金の薔薇団』がリリスを捕まえるよう加担してたわけじゃないだろうな?」


「・・・・サマエル・・・じゃなくて、カイト」

 エメラルドのような瞳をこちらに向ける。


「君はリリスに呪われてるんだよ」

「・・・・?」


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


「呪われてるんだ・・・」

 カマエルが縄の解けた十字架を見つめる。


 沈黙が降り落ちた。

 聖堂にステンドグラスの青と赤い光が差し込み、祭壇を照らす。

 七芒星の魔法陣が蒼く輝いていた。

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