42 裏切り者は?
「わぁ、綺麗なお城」
レベッカがセレーヌ城に着くと、はしゃいでいた。
「ラナ王国の城にも負けない美しさ。あ、ここが指令室なのね」
「危ない場所とかあるから、あまりウロウロするなよ」
「危ない場所!?」
「シロナ、城を案内してやってくれ」
『かしこまりました』
「よろしくね」
レベッカがシロナに笑いかける。
『・・・はい。では、失礼します』
「いこいこ!」
レベッカがシロナの手を引っ張って、部屋を出ていく。
シロナとレベッカは元が人工知能だからか、話が合うようだった。
「レベッカとカイト様を2人きりにさせないようにしなきゃ」
「はは、なんか、魔法少女が増えたみたいだね」
「レベッカは魔法少女サイトってところの魔法少女で・・・・」
フィオーレがラインハルトに経緯を説明していた。
「なんか、疲れちゃった」
「僕もフィオーレのお菓子が食べたいなー」
アクアがあくびをしていた。
空軍第4部隊は引き続き、魔力の回復を待っていた。
陸軍の魔法少女と賢者が補佐する考えもあったが、空軍機を動かす力を習得するのに時間がかかりそうだった。
あの領域はヌナの領域だ。
あいつさえ力を失えば、時間は十分に稼げるだろう。
「ラインハルト、長い時間ありがとな」
「王の命令なんだから、当然だよ」
ラインハルトがティナの補佐をして、陸軍と空軍に指示を出していた。
陸軍第2部隊のほうで、魔法少女たちと遭遇したが、力の差を目の当たりにして向こうが逃げていったらしい。
他には目立った戦闘は発生していなかった。
「それよりも若い血が欲しいな。血が無いとやる気も出ない」
「だから私の血を吸ってもいいよって言ってるのに」
フィオーレが腕を出す。
「逃げ惑う魔法少女の血を吸いたいんだって。君らの血には興味がない」
「贅沢ね」
「血の好みにはうるさいものでね」
ラインハルトが手をひらひらさせた。
「ラインハルト」
「!?」
リルムがラインハルトに駆け寄っていく。
「リルム・・・?」
「今まで心配かけてごめんなさい。主として、見捨てないでくれてありがとう。あたし・・・ミルムのことは悲しかったけど・・・みんながいるから大丈夫。もう一度頑張ってみるから、これからもよろしくね」
少し緊張しながら話していた。
「はは・・・リルムが明るくなってよかった。これでも君の主だ。できる限りサポートさせてもらうよ」
「うん!」
リルムが大きく頷く。
ラインハルトがほっとしたような表情を浮かべて、背もたれに寄りかかっていた。
ティナがちらっと二人と見て、ほほ笑む。
「俺は研究室に行ってる。ティナ、ラインハルト、少し休んでいてくれ。賢者たちへの連絡は俺がやっておくから」
「はーい。ふぅ・・・ちょっと寝ようかな? 疲れちゃった」
ティナが伸びをしていた。
「カイト様、私とお風呂に入ってゆっくりしませんか? セレーヌ城のお風呂は広くて、とっても綺麗なのです」
「いや、俺は・・・・・」
「ダメダメ駄目!」
「駄目!」
ノアとアクアが同時にルナリアーナの前に立ちふさがった。
リルムがくすくす笑っている。
「カイトは私の婚約者なんだからね。浮気は絶対に許さない」
『・・・・・・』
突然、レベッカが廊下から顔を出す。シロナが困惑していた。
「い、いたの?」
『レベッカが急に走り出しまして・・・』
「なーんか、女の勘が働いたの」
「婚約者といっても、ゲームの中でしょ? カイト様は婚約してないって言ってた」
「んー、じゃあ! これから婚約者として認めさせる。もう一度プロポーズさせてみせるんだから」
レベッカが混ざって、さらに煩くなった気がする。
「モテモテでいいねー」
「本気でいいと思ってるのか?」
「いいじゃないか。ここに居る魔法少女はみんな美少女なんだから」
ラインハルトが茶化してきた。
魔法少女サイトの魔法少女のことを話したにも関わらず、いつもの光景だな。
仲間がいれば怖くない・・・か。
モニターを出す。
騒ぐ魔法少女たちを背に、部屋から出ていった。
「僕なら別に疲れていないよ」
ラインハルトが後ろからついてきていた。
「ん?」
「任せてもらっても構わないのに。カイト、忙しそうだし」
「ヴァンパイアって寝なくても大丈夫なのか?」
「そうだなぁ、2日に1回くらい睡眠が取れれば平気だよ。まぁ、魔法少女の血があればもっといいんだけどね」
「あぁ、次の戦闘には行ってもらうよ」
「ありがとう。楽しみだなぁ」
モニターで空軍機3軍の映し出すエリアマップを眺めながら歩く。
窓には雲一つない青空が広がっていた。
「君の妹は優秀だね。セレーヌ城に魔法少女が向かってきて、ティナが混乱して、僕も手いっぱいになったとき、君の妹が軍に的確な指示を出してたんだ。精鋭部隊をセレーヌ城に転移させて、ね。おかげで魔法少女も戦士たちも傷ひとつ負わなかった」
「美憂は小さい頃から俺がゲームやる様子を見てきたから、戦略は得意なんだよ」
「なるほど」
「あいつはあいつなりに、魔法少女を守りたいんだ」
階段を降りる。
「何か用事か?」
「・・・・さっき言い忘れてたんだ。リルムのこと、礼を言わないとね。何があったのかわからないけど、またリルムの笑う顔が見えて嬉しいよ」
「変わろうとしたのはリルムだ。俺は何もしていない」
「いや・・・君が王だから、この七陣魔導団ゲヘナが変わったんだ」
ラインハルトがマントを後ろにやって、強い口調で言う。
「なぁ・・・・七陣魔導団ゲヘナの者たちはどうやって集められたんだ?」
空軍の3隊に休息を取るよう、メッセージを書きながら言う。
「魔法少女はともかく、魔法使い、賢者、剣士などの戦士たちは、どこから搔き集められた?」
「あぁ・・・僕がここに来た時には集まってたからね」
ラインハルトが手を口に当てる。
「そういや、考えたことなかったな。魔法少女戦争が始まるって聞いて、七陣魔導団ゲヘナの存在を思い出したんだ。魔法少女を探していたら、魔神を名乗る少年に会って・・・」
「魔神を名乗る少年はどこにいる?」
「ん・・・?」
「みんな、同じように答えるんだよ」
「・・・・・・・・・」
「でも、魔神を名乗る少年は、七陣魔導団ゲヘナに入ってから見ていない」
「言われてみれば、そうですね・・・気にしたこともありませんでした」
魔法少女は七陣魔導団ゲヘナの魔神と契約し、ここに留まっている。
でも、戦士たちは魔神を名乗る少年に連れてこられたという。
魔法少女を守るための力も、魔神を名乗る少年から得られた、と。
「あれ? 研究室に行くって・・・・」
「俺が用があるのは聖堂だ」
「?」
モニターを消して、聖堂の扉を開ける。
バタン
「おぉ、お戻りになられていたのですね」
「伺いました。魔法少女を一気に殲滅するとは・・・さすがカイト様です」
魔法陣の傍にいた、ベルナスとラミュートがこちらを振り向く。
「魔神に何かお話でしょうか?」
両手を広げた。
― 安寧の手―
「なっ!?」
ベルナスとアモデウスとラミュートを、漆黒の手で縛り上げる。
魔法陣からは何本もうごめくように、手が波打っていた。
「これはどうゆうことでしょうううう!?」
アモデウスがおかっぱ頭を振りながら、仰け反る。
「俺の質問に嘘つくことなく答えろ。嘘をつけば、どうなるかわかってるな?」
バタン
「おにい!」
「美憂、こっちに来るな!」
「でも・・・」
「止まって。危険だ」
ラインハルトが扉から入って来た美憂を止めていた。
「ど・・・どうしたの? おにい・・・・?」
美憂の不安そうな声が響く。
「急にどうされたのでしょう? 我々に何か不足なことでも?」
「魔神カマエルはどこにいった?」
「カマエル・・・・?」
ラインハルトが小さく呟いた。
「ま・・・魔神・・・は、その魔法陣を通して・・・・」
ベルナスが地上を見つめる。
七芒星が描かれた魔法陣が光っていた。
全体的に青く・・・一画だけが白く光っている。




